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[S-O-3][招待講演]2024年能登半島地震のオフフォルト余震活動と周辺活断層への影響

*遠田 晋次1 (1. 東北大学)
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キーワード:

能登半島地震、余震、クーロン応力変化、活断層

令和6年(2024年)1月1日に発生した能登半島地震(M7.6)では,井上・岡村(2010)による能登半島北岸沖の断層群と佐渡西沖へ延びる海底活断層の約150km区間が連動した.国土交通省(2014)のF-43, F-42断層に相当する部分に加え,輪島市門前町〜志賀町北部の沖合の活断層も活動したと推定される.今回の震源域の南西端付近では,2007年3月25日に平成19年能登半島地震(M6.9)が発生し,井上・岡村(2010)の門前沖セグメントの東半分が活動したとされるが,余震分布をみると,令和6年能登半島地震の余震域の南西側はこの2007年震源域をはるかに超えて海士岬南端にまで延びている.この地域では震源断層として北北東走向で東南東傾斜の逆断層が推定される.このことから,今回の震源断層は全体として珠洲から輪島西沖までは東北東走向で,それより西側では海岸線に沿って「く」の字状に曲がり海士岬付近まで連続するとみられる.防災科学技術研究所(2024)F-netの余震メカニズム解もこの推定構造に整合する.
 能登半島地震の余震総数は1994年北海道南西沖地震(M7.8)に匹敵する.しかし減衰は顕著で,余震の時間減衰を示す大森―宇津式のp値は1.2程度と高く,破壊域での今後の余震ハザードは急速に減少している.その一方で,震源域外での広義の余震(オフフォルト地震)を無視することはできない.Fig. 1aには,気象庁一元化暫定震源について,本震前2年間と本震後の地震発生率変化を示した.また,図の右には各地域での6月18日までの時系列を示す.震源断層から約100km以内の地域では,本震時の反応と顕著な地震発生率の増加が認められる.本震前の平均発生率と比較すると,志賀沖(A)では約100倍,陸域の富山市〜金沢市周辺にかけて(B)では約4倍,佐渡周辺(C)では約2倍,富山湾(D)で約8倍の活発化がみられる(Fig. 1).
 これらの地震活動が本震による応力伝播に起因するかどうかを確かめるため,事前の活断層分布・地質構造・余震分布・地殻変動を考慮した震源断層のフォワードモデルを作成し,静的クーロン応力変化(ΔCFF)を計算した(Fig. 1b).その結果,震源断層の南東に位置する富山湾を除き周辺域でΔCFFが正となることから,多くのオフフォルト余震は応力伝播に反応したものとみられる.一方で,富山湾の活動について両者は矛盾し,地震動による動的応力変化,もしくは中小規模の横ずれ断層系の活動が励起された可能性(Fig. 1b)が考えられる.国土交通省(2014)・佐藤ほか(2021)の海域活断層も含めた周辺活断層へのΔCFFを計算すると,上記と同じ傾向がみられ,主要活断層の1つである邑知潟断層帯には0.1MPa程度の応力増加が見込まれる.眉丈山断層に関しては,ΔCFFは断層傾斜や摩擦係数に大きく依存する.実際に,邑知潟断層帯直下では,能登半島地震以降にそれ以前に比較して地震活動が活発化しており,断層を横切る北西―南東の震源断面をみると,南東に45°程度で傾斜する断層面を示唆するような震源クラスターが認められる.

文献
1) 防災科学技術研究所(2024)F-net 地震のメカニズム解情報,https://www.fnet.bosai.go.jp/event/joho.php?LANG=ja
2) 井上卓彦・岡村行信(2010)能登半島北部周辺20万分の1海域地質図及び説明書,陸海シームレス地質情報集「能登半島北部沿岸域」.数値地質図S-1,地質調査総合センター
3) 国土交通省(2014)日本海における大規模地震に関する調査検討会報告書,43p,https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/daikibojishinchousa/houkoku/Report.pdf
4) 佐藤比呂志ほか(2021)断層モデルの構築,令和2年「日本海地震・津波調査プロジェクト」成果報告書,275-303.

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