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[G3-O-1]流紋岩溶岩の断続的な内部流動に伴う外皮の変形:古地磁気学的証拠

*宇野 康司1、古川 邦之2、金丸 龍夫3、中井 耕太郎4、神尾 匠真4 (1. 兵庫県立大学、2. 愛知大学、3. 日本大学、4. 岡山大学)
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キーワード:

流紋岩溶岩、神津島、古地磁気学

高い粘性をもつ流紋岩溶岩は、100メートル以上の厚さの大部分がガラス質であることも多い。厚いガラス質部分が発達するのは結晶化の進行が遅いことが原因と考えられており、ガラス転移状態で長期間に渡る溶岩の流動が観測される。そのため、溶岩中心部の流動の継続により、先に固化した溶岩上部の変形が予想される。本研究では、伊豆諸島神津島に分布する5-7万年前のESR年代値(横山ほか 2004)をもつ砂糠山流紋岩溶岩を対象として、冷却過程における溶岩上部のガラス質部の変形を古地磁気学的手法により推定した。これは、科学的観測例の多くない流紋岩溶岩流動中における挙動を理解する上で重要となる。砂糠山流紋岩溶岩は海面上に約130mが露出しており、上位から軽石質部、黒曜石質部、結晶質部に分けられる。本研究では、厚さ約80mの溶岩上部ガラス質部(軽石質、黒曜石質)、および結晶質部から古地磁気測定用の試料を採取した。段階熱消磁実験の結果、軽石質試料と黒曜石試料からは現在の地球磁場方向に近い3つの残留磁化成分が検出されたが、結晶質試料からは1つの磁化成分のみが検出された。段階交流消磁では軽石質試料や黒曜石試料の複数の磁化成分を分離できなかった。これらの観察結果より、複数の残留磁化成分は熱残留磁化として冷却中に獲得されたと解釈される。流紋岩溶岩流動の主要な様式である溶岩内部の間欠的な流出が、溶岩外皮の軽石部や黒曜石部に複数回の変形を与えたと考えられ、それが複数の熱残留磁化成分として記録されたとみられる。この推察は、ガラス質部において標高が高いほど熱残留磁化成分が区分される温度が高いことからも支持される。我々の研究結果は、発生頻度の低い流紋岩溶岩の流動様式について重要な示唆を与える。
[文献] 横山ほか (2004) 火山 49:23-32

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