講演情報

[G3-O-2]朝日山地中心部における花崗岩類のジルコンU-Pb年代と火成作用の時空間分布

*小笠原 正継1、福山 繭子2、堀江 憲路3、竹原 真美3、根岸 義光4、大坪 友英5、藤本 幸雄、大平 芳久、庄司 勝信、水落 幸広、田阪 登史 (1. ジパング ジオサイエンス ラボ、2. 秋田大学、3. 国立極地研究所、4. 三菱マテリアルテクノ、5. 東京シビルコンサルタント)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

朝日山地、花崗岩類、ジルコンU-Pb年代、白亜紀

はじめに:山形―新潟県境の朝日山地には後期白亜紀に形成された多様な花崗岩類が広く分布する.朝日団体研究グループ(以下,朝日団研)は1972年から山地中心部の地質調査を行い,山地の中央部~西部の花崗岩類の岩相,構造,貫入関係および分布を詳細に観察・考察したうえで13岩体に区分し,花崗岩類の活動が古期(5岩体)と新期(8岩体)に分かれるとした(朝日団研,1987).さらに朝日団研(1995)では花崗岩類中に発達するマイロナイト化に着目し,最大剪断変形域が山地西部の山腹を南北~北北西-南南東に連続することを見出した.その後も朝日団研の調査は継続し,大平ほか(2016)では,岩体の再編と再区分の可能性が示された.小笠原ほか(2015,2018)では国立極地研究所との共同研究により,主たる岩体から14試料のSHRIMP U-Pb年代を得て,山地中心部の花崗岩類の活動が時間的に古期(99~87 Ma)と新期(69~64 Ma)に分かれること,そして古期花崗岩類が山地の主要部に,また新期花崗岩類が山地西側に分布することを明らかにした.今回の発表では,追加の地質調査結果を示し,また既報告の14試料のSHRIMP U-Pb年代に加えて,新たに5試料のSHRIMP U-Pb年代値,さらに秋田大学との共同研究で得られたLA-ICPMSによるジルコンU-Pb年代値,およびマイクロXRFによる岩石スラブの元素マップにより,朝日山地の花崗岩類の岩石学的特徴を報告する.これらの結果から,朝日山地の花崗岩類の岩体の再区分を行い,各花崗岩体の形成時期と分布から,朝日山地における後期白亜紀の火成活動の時間・空間的な変遷とその意義について議論する.
U-Pb年代:新たに得られた5試料のSHRIMPジルコンU-Pb年代は,朝日川上流域の花崗閃緑岩からの1試料が99.01±0.48 Ma,野川流域の花崗閃緑岩からの1試料が98.71±0.44 Ma,荒川上流域の花崗閃緑岩からの1試料が86.51±0.46 Ma,岩井又沢上流域の花崗岩からの1試料が92.98±0.45 Ma,出谷川上流域の花崗閃緑岩からの1試料が92.91±0.45 Maであった.得られたいずれの値も小笠原ほか(2018)で報告した岩体と形成期の区分結果に整合している.またLA-ICPMSで求めた西朝日岳周辺の閃緑岩からの試料のジルコンU-Pb年代は85.60±0.43 Maで,朝日山地主要部において,日暮沢小屋南方―西朝日岳―荒川を通る北東―南西方向に分布する斑レイ岩―花崗閃緑岩については85.6 Maから87.3 Maを示すゾーンとして区分されることが明らかになった.このゾーンの北側には93 Maから90 Maの花崗岩類が,また南側には99 Maから93 Maの花崗岩類が分布する.
まとめ:朝日山地中心部の花崗岩類の岩体や活動について,SHRIMPとLA-ICPMS によるジルコンU-Pb年代測定結果により,新たな花崗岩体区分を行った.現在も追加でU-Pb年代測定を準備中で,合計40試料のジルコンU-Pb年代と地質的および岩石学的特徴の検討結果をもとに,朝日山地の花崗岩類を形成した火成作用の時空間分布の変遷を明らかにする.
文献:朝日団体研究グループ(1987)地球科学, 41, 253-280. 朝日団体研究グループ(1995)地球科学, 49, 227-247. 小笠原ほか(2015)日本地質学会第122年学術大会講演要旨, 46. 大平ほか(2016)日本地質学会第123年学術大会講演要旨, 196. 小笠原ほか(2018)日本地質学会第125年学術大会講演要旨, 50.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン