講演情報

[T10-P-9]福島県南東部,湯ノ岳断層に伴われる断層岩のX線CT画像解析

*酒井 亨1,2、岩森 暁如3、上田 圭一4、高木 秀雄1 (1. 早稲田大学、2. 電源開発株式会社、3. 関西電力株式会社、4. 電力中央研究所)
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キーワード:

湯ノ岳断層、福島県浜通りの地震、活断層、断層破砕帯、X線CT

【はじめに】
 福島県南東部に発達する湯ノ岳断層は,北西−南東走向で高角南西傾斜の正断層である.2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震の際に,当該断層に沿って南落ち正断層センスの地表変状が生じた.湯ノ岳断層の北西部では,地震の際に地表変状が生じた活動部である中野北露頭及び官沢露頭,地表変状が生じていない非活動部である入遠野ダム北露頭が露出し,断層破砕帯の性状には活動部と非活動部で違いが見られる(酒井・高木, 2023).露頭・研磨片・薄片の観察により,上載地層への変位,剪断面の形状と破砕の程度に基づき,最新活動面を認定した.各露頭における最新活動面を含む断層岩試料を医療用X線CTで撮影し,得られたCT画像を解析した.CT画像と露頭・研磨片・薄片で見られた性状を比較した上で,Iwamori et al.(2021)の手法を用いてNCTMode(CT値の最頻値)を算出し,各露頭における最新活動領域の抽出を試みた.また,活動部と非活動部を比較し,相違の有無を確認した.3地点における解析結果は下記のとおりである.なお,断層岩類の原岩は御斎所変成岩であり,入遠野川流域の新鮮な緑色片岩のNCTModeは2200程度を示す.
【中野北露頭】
 最新活動面に沿って幅2 cm以下で断層ガウジが認められ,その周囲は断層角礫で構成される.断層角礫のNCTModeは1100~1800程度,断層ガウジは600~900程度を示す.また,最新活動面に沿った幅数mm程度の断層ガウジは600~700程度であり,最も低いNCTModeを示す.研磨片・薄片の観察結果と比較すると,最新活動領域とNCTModeの最低値を示す領域は一致するとみられる.
【官沢露頭】
 最新活動面に沿って幅2 cm以下で断層ガウジが認められ,その周囲はウルトラカタクレーサイトと断層角礫で構成される.ウルトラカタクレーサイトのNCTModeは1600~1900程度,断層角礫は1300~1400程度,断層ガウジは700~1300程度である.また,最新活動面に沿った幅数mm程度の断層ガウジは700~800程度であり,最も低いNCTModeを示す.研磨片・薄片の観察結果と比較すると,最新活動領域とNCTModeの最低値を示す領域は一致するとみられる.
【入遠野ダム北露頭】
 最新活動面に沿って幅5 cm以下で断層ガウジが認められ,その周囲は断層角礫で構成される.断層角礫のNCTModeは1300~1500程度,断層ガウジは800~1200程度を示す.また,最新活動面に沿った幅数mm程度の断層ガウジは800~900程度であり,最も低いNCTModeを示す.研磨片・薄片の観察結果と比較すると,最新活動領域とNCTModeの最低値を示す領域は一致するとみられる.
【まとめ】
 地震の際の活動部の最新活動領域は600~800程度,非活動部の最新活動領域は800~900程度のNCTModeを示し,活動部は非活動部に比べて低い値を示す.これらの違いは両者の運動履歴の違い(酒井・高木,2023)によるものと考えられる.また,Iwamori et al. (2021)では断層岩類の原岩は1600~2200程度,最新活動領域の断層ガウジは,活断層において1000~1200程度,非活断層において1250~1650程度とされる.本解析結果と比較すると,原岩の値は大差ないのに対し,最新活動領域の断層ガウジは活動部と非活動部の両者とも低い値を示す.これらの違いは最新活動からの経過時間が反映されている可能性がある.
【引用文献】
Iwamori, A., Takagi, H., Asahi, N., Sugimori, T., Nakata, E., Nohara, S. and Ueta, K., 2021, Prog. Earth Planet. Sci., 8, no.54.
酒井 亨・高木秀雄,2023,日本地質学会第130年学術大会講演要旨,T5-P-9.

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