講演情報
[T10-P-11]石英多結晶体剪断実験の回収試料を用いた塑性変形割合の定量化★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*宮副 真夢1、野田 博之2、岡崎 啓史3 (1. 京都大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻、2. 京都大学防災研究所、3. 広島大学)
キーワード:
脆性-塑性遷移領域、剪断実験、断層レオロジー
地殻浅部では脆性破壊が、地殻深部では結晶塑性変形が卓越する。これらの変形機構の遷移は脆性-塑性遷移と呼ばれ、しばしば大地震の震源となる(e.g., Sibson 1982, Scholz 1988).そのため、脆性-塑性遷移領域における岩石の変形について様々な研究が行われている。Kawamoto and Shimamoto (1997) はハライトの剪断実験により脆性-塑性遷移の再現に成功し、脆性-塑性遷移領域の剪断帯にはS-C’構造が発達することを明らかにした。また、Noda (2021) は、S-C’構造から考えられる運動学的拘束からR1面におけるすべりと塑性変形が共存する変形モデルを提案した。しかし、変形に占める塑性変形の寄与の定量化や、Noda(2021)モデルの実験的検証は為されてない。そこで本研究では脆性-塑性遷移領域の条件下で石英の剪断実験を行い、回収試料の微細構造から塑性変形の寄与の定量化と Noda (2021) の実験的検証を試みた。剪断実験は Griggs 型固体圧式高温高圧三軸変形試験機(Griggs 型試験機)を用いて行った。実験条件は封圧 1000 MPa、剪断歪速度 2.5×10-4 /s の一定条件で、温度条件を石英の脆性-塑性遷移領域を含むとされる 400-900 ℃の範囲とした。回収した試料は薄片にし、断層帯の剪断歪、R1面方位、断層帯内の粒子の長軸方位を測定する。これらの測定パラメータから Noda (2021) の運動学的モデルを用いた最尤推定により、塑性変形の寄与を計算した。なお、この計算には変形前の粒子の初期条件と、変形の不均質性を考慮する工夫を加えている。実験の結果、剪断強度は400-700℃でByerlee則に従う剪断強度を示し、それ以上の温度では剪断強度の低化が確認された。また、R1面方位からR1面で滑っている際のY面における剪断応力を計算し、力学データと比較することでR1面すべりかY面すべりかを判断することができた。Noda (2021) のモデルを用い微細構造から塑性変形の寄与を計算した結果、温度上昇による塑性変形の寄与の増加を定量化することに成功し、塑性変形の不均質性についても温度上昇に伴い、より均質になることが確認された。しかし、既往の研究とは食い違う結果も得られている。Noda (2021) は、塑性変形の寄与の増加に伴いR1面は高角になっていくことが示唆しているが、本研究のR1の測定からはこのような結果は得られず温度によらずほぼ一定であることが確認された。この原因として、断層平行方向への試料の絞り出しが原因であると考えられる。これらのことから、今後さらに Noda (2021) とモデルの仮定ひとつひとつに着目した検証が必要である。
引用
Scholz, C. H. (1988). The brittle-plastic transition and the depth of seismic faulting. Geologische Rundschau, 77, 319-328.
Sibson, R. H. (1982). Fault zone models, heat flow, and the depth distribution of earthquakes in the continental crust of the United States. Bulletin of the Seismological Society of America, 72(1), 151-163.
KAWAMOTO, E., & SHIMAMOTO, T. (1997). Proc. 30th Int'l. Geol. Congr., Vol. 14, pp. 89-105 89 Zheng et al.(Eds) VSP 1997. In Proceedings of the 30th International Geological Congress: Beijing, China, 4-14 August 1996 (Vol. 14, pp. 89-105). VSP.
Noda, H. (2021). Shear strength of a shear zone in the brittle-plastic transition based on tensorial strain partitioning. Journal of Structural Geology, 146, 104313.
引用
Scholz, C. H. (1988). The brittle-plastic transition and the depth of seismic faulting. Geologische Rundschau, 77, 319-328.
Sibson, R. H. (1982). Fault zone models, heat flow, and the depth distribution of earthquakes in the continental crust of the United States. Bulletin of the Seismological Society of America, 72(1), 151-163.
KAWAMOTO, E., & SHIMAMOTO, T. (1997). Proc. 30th Int'l. Geol. Congr., Vol. 14, pp. 89-105 89 Zheng et al.(Eds) VSP 1997. In Proceedings of the 30th International Geological Congress: Beijing, China, 4-14 August 1996 (Vol. 14, pp. 89-105). VSP.
Noda, H. (2021). Shear strength of a shear zone in the brittle-plastic transition based on tensorial strain partitioning. Journal of Structural Geology, 146, 104313.
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