講演情報
[T13-P-2]駿河湾湾奥部における表層堆積物の特徴
*柴尾 創士1、川鍋 健、藤森 大輝、中村 希、曽原 隼斗、林 優斗、坂本 泉2、横山 由香2 (1. 東海大学大学院海洋学研究科、2. 東海大学海洋学部)
キーワード:
駿河湾、安倍川、富士川
駿河湾周辺の地質は多様であり,湾西岸には後期白亜紀から第四紀の付加体が,湾東部の伊豆半島には第三紀から第四紀の火山岩が,湾北部には富士川谷に分布する富士川層群や富士火山岩・甲府花崗岩などの火成岩体がそれぞれ分布している.これらの後背地の違いは,各地域から湾内に供給される砕屑物にも影響し,駿河湾に流入する各一級河川の礫種組成みると,湾西部に流入する大井川・安倍川では堆積岩が9割以上,湾北部に流入する富士川では堆積岩が約7割,湾東部に流入する狩野川では火成岩が約7割となっている.本報告では,表層堆積物中に含まれる礫や粘土鉱物の特徴を明らかにし,その起源を明らかにすることを目的とした. 試料は2022年~2024年の調査で,スミスマッキンタイヤ式グラブ型採泥器を用いて採取した.試料の採取地点は,後方散乱強度マップを基に,富士川前面に南北方向,三保半島沖で東西方向に沿ってそれぞれ設定した(水深100~1500 m).また採取地点周辺の環境を把握するため,カメラ,方位傾斜計,水深水温計を採泥器に設置した.堆積物試料は,角柱状のアクリルケース(5×6×20 cm)を用いて柱状試料を採取した.持ち帰った試料のうち,表層試料はレーザー回折散乱法による粒度分析を行い,試料の粒度を測定した.柱状試料では半割したのち,肉眼観察,ソフトX線写真を用いた岩相記載とレーザー回析散乱法による粒度分析を行った.礫試料は礫種同定を行った.
分析によって得られた各海域の表層堆積物の特徴を以下に示す.
三保半島沖海域:表層には,主に7Φから5Φ最頻値を持つ泥質堆積物が分布し,沖合から沿岸に向かって細粒化する傾向が見られた.また,採取時期によっては,表層試料の粒度分布において,水深450 m以浅の地点では粒径2~3Φのピークが,水深1200 mの地点では5Φピークが観察された.柱状試料の岩相は,多くの試料で,下位に礫を含む粗粒堆積物と,その上位の生物擾乱を受ける泥質堆積物からなった.また,水深1200 mの地点では,最頻値が5Φの砂層と最頻値が6Φの泥層からなる砂泥互層試料が得られた. 礫種組成では堆積岩が9割以上を占め,泥岩,砂岩,安山岩などが同定された.
富士川沖海域:表層には,水深100 m-900 mには3Φに最頻値を持つ泥質堆積物まじりの砂質堆積物が,水深900-1400 mには3Φに最頻値をもつ砂質堆積物(泥質堆積物を含む場合もある)が,1400 m以深では5Φに最頻値を持つ泥質堆積物(砂質堆積物を含む場合もある)がそれぞれ分布する.柱状試料の岩相は,水深100~600 mの試料では上方細粒化を示す砂質堆積物,水深800 mの地点では塊状の泥質堆積物,水深900~1000 mでは砂層を含む泥質堆積物,水深1000~1200 mでは下位の上方細粒化を示す砂層と上位の塊状泥質堆積物,水深1200~1500 mでは砂泥互層であった.ただし,水深1420 mの地点では下位のラミナの発達する砂層部と上位の泥質堆積物(砂層を含む)試料も得られた.礫種組成は堆積岩が70%,火成岩が30%であり,砂岩,泥岩,安山岩,玄武岩,花崗岩,デイサイトなどが同定された.ただし,沖合の1420 m地点のみ堆積岩85%,火成岩15%となった. 粘土鉱物は,すべての地点で石英,Mg緑泥石,イライト,曹長石が同定された.また,X線回折分析によって得られた回析図は,分析を行ったすべての地点でほぼ同じ角度にピークが確認された.
考察 二つの海域を比較すると,三保半島沖海域の試料のほうが細粒な堆積物で構成されており,水深による堆積構造の違いが出にくいといった特徴がみられた.これは富士川沖海域のほうが河川からの距離が近く,堆積物の移動が活発であるためと推測された.両海域で粘土鉱物種の違いが見られない原因としては,海流や底層流などによる混合,もしくは河川起源の微細粒子の長距離運搬が考えられる.もし後者が原因だった場合,河川からの距離によって粘土鉱物組成に違いが出ると考えられるため,今後は定量分析も行い,粘土鉱物組成についても検討していく予定である.礫種組成の結果は,水深1420 mの地点を除いて,柴(2017)で示された安倍川・富士川河床での礫種組成の結果と調和的である.富士川沖の水深1420 mの地点で堆積岩の割合が増えたのは,三保半島沖海域から駿河トラフに流入した堆積物の影響の可能性があるため,今後地点を増やして検討する予定である.
【参考文献】柴正博(2017):駿河湾の形成 島弧の大規模隆起と海水準上昇. 東海大学出版,神奈川,35-36
分析によって得られた各海域の表層堆積物の特徴を以下に示す.
三保半島沖海域:表層には,主に7Φから5Φ最頻値を持つ泥質堆積物が分布し,沖合から沿岸に向かって細粒化する傾向が見られた.また,採取時期によっては,表層試料の粒度分布において,水深450 m以浅の地点では粒径2~3Φのピークが,水深1200 mの地点では5Φピークが観察された.柱状試料の岩相は,多くの試料で,下位に礫を含む粗粒堆積物と,その上位の生物擾乱を受ける泥質堆積物からなった.また,水深1200 mの地点では,最頻値が5Φの砂層と最頻値が6Φの泥層からなる砂泥互層試料が得られた. 礫種組成では堆積岩が9割以上を占め,泥岩,砂岩,安山岩などが同定された.
富士川沖海域:表層には,水深100 m-900 mには3Φに最頻値を持つ泥質堆積物まじりの砂質堆積物が,水深900-1400 mには3Φに最頻値をもつ砂質堆積物(泥質堆積物を含む場合もある)が,1400 m以深では5Φに最頻値を持つ泥質堆積物(砂質堆積物を含む場合もある)がそれぞれ分布する.柱状試料の岩相は,水深100~600 mの試料では上方細粒化を示す砂質堆積物,水深800 mの地点では塊状の泥質堆積物,水深900~1000 mでは砂層を含む泥質堆積物,水深1000~1200 mでは下位の上方細粒化を示す砂層と上位の塊状泥質堆積物,水深1200~1500 mでは砂泥互層であった.ただし,水深1420 mの地点では下位のラミナの発達する砂層部と上位の泥質堆積物(砂層を含む)試料も得られた.礫種組成は堆積岩が70%,火成岩が30%であり,砂岩,泥岩,安山岩,玄武岩,花崗岩,デイサイトなどが同定された.ただし,沖合の1420 m地点のみ堆積岩85%,火成岩15%となった. 粘土鉱物は,すべての地点で石英,Mg緑泥石,イライト,曹長石が同定された.また,X線回折分析によって得られた回析図は,分析を行ったすべての地点でほぼ同じ角度にピークが確認された.
考察 二つの海域を比較すると,三保半島沖海域の試料のほうが細粒な堆積物で構成されており,水深による堆積構造の違いが出にくいといった特徴がみられた.これは富士川沖海域のほうが河川からの距離が近く,堆積物の移動が活発であるためと推測された.両海域で粘土鉱物種の違いが見られない原因としては,海流や底層流などによる混合,もしくは河川起源の微細粒子の長距離運搬が考えられる.もし後者が原因だった場合,河川からの距離によって粘土鉱物組成に違いが出ると考えられるため,今後は定量分析も行い,粘土鉱物組成についても検討していく予定である.礫種組成の結果は,水深1420 mの地点を除いて,柴(2017)で示された安倍川・富士川河床での礫種組成の結果と調和的である.富士川沖の水深1420 mの地点で堆積岩の割合が増えたのは,三保半島沖海域から駿河トラフに流入した堆積物の影響の可能性があるため,今後地点を増やして検討する予定である.
【参考文献】柴正博(2017):駿河湾の形成 島弧の大規模隆起と海水準上昇. 東海大学出版,神奈川,35-36
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