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[T13-P-5]石垣島に遡上した古津波を引き起こした地震断層パラメータ:洞窟堆積物の分布に基づく推定

*Liu bofu1、石原 与四郎2、中西 諒1、成瀬 元1 (1. 京都大学、2. 福岡大学)
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津波堆積物、石垣島

石垣島は有史以前・以降に複数回の巨大津波に襲われたことが明らかになっている.本研究は,津波に由来すると考えられる洞窟堆積物の分布に基づき,数値実験によって過去に石垣島を襲った古津波の震源断層の特性を推定することを目的としている. 石垣島を襲った津波のうち,文字記録により知られているのは,1771年4月24日に琉球海溝で発生した明和津波である.この津波は,八重山諸島近くで起きた地震によって引き起こされたとされており,石垣島を含む多くの島々に甚大な被害をもたらした.明和津波の断層パラメータについてはいくつかの数値実験による研究(e.g., Nakata et al., 2024)があり,主として津波石の分布に基づき,極めて大規模な滑り量(30 m以上)を持つ海溝型地震が発生源として推定されている.一方,先史時代の津波として,約2000年前に発生した沖縄先島津波(以下先島津波)の存在も推定されているが,この津波の発生源についてはあまりよくわかっていない. 近年になり,石桓島の洞窟で複数の津波堆積物が発見された(石原・山崎,2024).発見された津波堆積物の年代は約200年前と2000年前,すなわち明和津波と先島津波が発生した時期に対応する.特筆すべきは,一部の洞窟の開口部の標高が海抜40メートルに達していることである.これは,津波石の標高(約30メートル)から推定されてきた津波遡上高よりも大幅に上回る標高であり,明和・先島津波が従来の想定よりもさらに大規模なイベントであったことを意味する. そこで,本研究では,津波シミュレーションモデルJAGURS(Baba et al., 2015)を使用して,1771年明和津波と先史時代の先島津波の規模を推定し,両者の特徴の違いを検討した.津波を発生させた断層は海溝沿いに分布していたことを想定し,断層の長さ,幅,すべり量をさまざまに変更して数値計算を繰り返し行った.得られた浸水範囲を津波堆積物がみられた洞窟の分布と比較し,明和および先島津波を引き起こした断層パラメータを推定した. 結果として,明和津波を起こした断層は,幅が40km,すべり量が30m以上であったことが推定された.この結果は,Nakata et al. (2024)とおおむね整合的である.一方,約2000年前の先島津波を引き起こした津波は更に大規模な震源域をもっていたことが推定された.検討の結果,現実的な断層滑り量(< 40 m)で先島津波を引き起こすためには,震源断層に複数のセグメントを設定し,それぞれのセグメントに異なる滑り量を設定する必要があることが示唆された.今後は津波モデルに土砂輸送モデルを組み込み,洞窟で観察された津波堆積物を再現することで,震源断層の規模に関するさらなる制約を得ることを目指す.

引用文献
1.Baba et al. (2015), Parallel Implementation of Dispersive Tsunami Wave Modeling with a Nesting Algorithm for the 2011 Tohoku Tsunami Pure Appl. Geophys. 172 (2015), 3455–3472.
2.Ishihara and Yamazaki (2024),陸域アーカイブとしての石灰岩洞窟とそこにみられる第四紀研究(The Quaternary Research)63(2)p. 00─00
3.Koki Nakata et al.(2024),New source model for the 1771 Meiwa tsunami along the southern Ryukyu Trench inferred from high-resolution tsunami calculation, Progress in Earth and Planetary Science (2024) 11:28

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