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[T15-P-2]岡山県中央部 福渡塩基性岩体の地質構成

*前 圭一郎1、能美 洋介2、土屋 裕太2 (1. 岡山理科大学大学院 理工学研究科、2. 岡山理科大学)
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キーワード:

地質図、舞鶴帯、夜久野オフィオライト、塩基性岩、トーナル岩

岡山県とその周辺地域には、西南日本内帯を構成する長門―蓮華帯、秋吉帯、舞鶴帯、超丹波帯および領家変成帯などの基盤岩類が分布する(磯崎ほか,2010)。これら地質帯には、いくつかの塩基性岩体が知られており、舞鶴帯や超丹波帯に属する他に、夜久野オフィオライトの一部とされる岩体が岡山県中央部の北東から南西にかけて帯状に分断されて露出している(e.g., 大原・福渡・井原岩体)。北東部に分布する大原岩体については石渡・斎藤(1997)、また南西部の井原岩体についてはKoide (1986) などの報告がある。中央部の福渡岩体は石渡(2017)において名称を示すにとどまっており、一部の鉱山関係の報告(光野ほか,1975など)を除いて、岩石学的な記載はなく、周辺岩体との関係もよくわかっていない。
本研究では、夜久野オフィオライトの大原岩体と井原岩体の間にある福渡岩体を対象とし、前ほか(2024)の内容を一部修正・データの追加を行い、福渡岩体の岩石記載および地質図を作成した。また本発表では周辺の大原岩体・井原岩体との関係を考察し、夜久野オフィオライトの形成について議論する。
福渡岩体は、変斑レイ岩を主体とし、トーナル岩、ドレライト、玄武岩、泥岩および礫岩によって構成されている。これら岩体周辺部では中生代白亜紀後期のデイサイト質火山岩類に覆われ、岩体の南側では山陽帯花崗岩の貫入を受けている。また、岩体内においても中生代白亜紀の安山岩脈やデイサイト岩脈に頻繁に貫かれている。塩基性岩類とトーナル岩の境界は一般に明瞭で、一部の露頭では互いを取り込むようなの岩相を示す。以下に福渡塩基性岩体を構成する岩石の特徴を示す。
変斑レイ岩 岩体の大部分を占め、野外では暗緑色を示し、等粒状組織を呈する。構成鉱物は角閃石+斜長石±単斜輝石であり、一部に定向配列の組織が認められる。
トーナル岩 岩体内にてほぼ東西方向に帯状分布し、変斑レイ岩に付随して露出する。淡緑色―灰色を呈し多くの露頭で圧砕組織が確認できる。構成鉱物は斜長石+石英±角閃石±黒雲母である。
ドレライト・玄武岩 岩体内に少量産し、暗色かつ顕著な板状節理をもつ。斑晶鉱物は単斜輝石+斜長石±かんらん石が確認でき、顕著な斑状組織を示す。完晶質な石基をドレライトとし、隠微小質なものを玄武岩とした。
泥岩 岩体内でまとまった分布を示す。黒色かつ緻密で弱いスレート劈開を有し、部分的に粒度の違いによる層状構造が確認でき、それらの多くはN70E20Nの走行を有する。
礫岩 泥岩と玄武岩に伴って産する。基質部は泥岩と酷似しており、層状構造が認められる。礫は約7mm、亜円礫であり礫種は少ない。斑晶鉱物として単斜輝石(仮象)+斜長石±かんらん石(仮象)を有する玄武岩がほとんどであった。
隅田・早坂(2009)では,夜久野オフィオライトは超塩基性―変斑レイ岩を主体に,圧砕花崗岩類や玄武岩などを伴うことを特徴としている。本研究による記載結果は、Koide (1986)が報告した井原岩体と類似した岩相分布を示すため、その東方延長と考えられる。また,井原岩体の成因を背弧型玄武岩としており、福渡岩体も同様の成因が示唆される。今後、全岩化学分析および鉱物化学組成等を行いこれらの成因等について研究をすすめる予定である。

引用文献
光野ほか (1975) 鉱山地質, vol.25. pp331-345.
石渡 (1978) 地球科学, Vol.32. pp301-310.
石渡・斎藤 (1997) 基盤研究 (A) 付加体形成における緑色岩の意義,研究報告, no.2. pp.73-81.
石渡明 (2017) 地質技術, vol.7. pp.11-16.
磯崎ほか (2010) 地学雑誌,vol.119.pp.999-1053.
KOIDE, Y. (1986) JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN, vol.92. no.5, pp.329-348.
隅田・早坂 (2009) 地質学雑誌, vol.115. pp.266-267.
前ほか (2024) 日本地質学会 西日本支部総会要旨. pp25.

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