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[T15-P-8]南部北上帯におけるOlenekian/Anisian境界-アンモノイドによる検討-

*永広 昌之1 (1. 東北大学総合学術博物館)
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キーワード:

OAB、南部北上帯、アンモノイド、三畳紀

Grădinaru et. al. (2007)はルーマニアのDeşli Caira SectionのアンモノイドParacrochordicerasJaponites bed の基底をOlenekian/Anisian境界(OAB:下部三畳系/中部三畳系境界)のGSSP候補として提案した.このとき,この層準はコノドントChiosella timorensis の FAD とも一致すると考えられたが,後にこの種のFADは下位の,Olenekianと考えられる,Deslicairites bed 中にあることがわかった.このようなこともあり,OABのGSSPは未だ決められていない.わが国の南部北上帯では,下部-中部三畳系稲井層群の大沢層の下部-上部(の下部)は豊富な後期Olenekianのアンモノイドを産する.一方,伊里前層の最下部からは前期Anisianの群集がしられており,南部北上帯におけるOABは両者の間にあると考えられる.両者にはさまれる風越層は,砂岩が卓越することもあり,ほとんどアンモノイドを産出していなかった.
最近,大沢層の最上部(風越層との境界の20数m下位)からいくつかのアンモノイドが採集された(Ehiro, 2022b).この群集は, Pseudosageceras multilobatum, Ceccaisculitoides sp., Procarnites kokeni, 属種未定のKeyserlingitidae, Japonites cf. meridianus, Eodanubites aff. xinyuanensis, Procladiscites towaensis, Leiophyllites sp.などからなる.Eodanubitesが卓越するが,この属やPseudosageceras, Ceccaisculitoides, Procarnitesは典型的なOlenekianの属である.JaponitesProcladiscitesは下部Anisianから多産する属であるが,ごく少数がOlenekianからも知られているので,この層準はOlenekian最上部と判断される.
一方,貧アンモノイドと考えられていた風越層の中部-上部,とくに中部から,21属におよぶ豊富なアンモノイド群集が見いだされた(Ehiro, 2022a).この群集で卓越するのは生存期間がOABをまたぐLeiophyllitesであるが,新属を除く残りの属の大部分,Parasageceras, Parapopanoceras, Megaphyllites, Paracrochordiceras, Aegeiceras?, Japonites, Buddhaites?, Danubites, Paradanubites, Groenlandites, Lenotropites, Grambergia, Arctohungarites, Procladiscites, Ussuriphyllitesは,下部Anisian (多くはAegean)を指示するものである.一方,Hemilecanites, Pseudosageceras, Metadagnoceras, Eogymnitesは基本的にはOlenekianの属であるが,Anisian下部からのごく希な報告もある.したがって,風越層中部は下部Anisian (Aegean)に対比される.
従来のAnisian型アンモノイドの産出に重きをおくか,コノドントC. timorensis の FADを基準とするかでOABの層準はかなり異なるが,アンモノイドにもとづけば,南部北上帯におけるOABは,大沢層最上部から風越層中部までのどこかにあることになる.風越層の下部の砂岩泥岩互層中からは,レンジの長いLeiophyllites? sp.1個体が採集されているにすぎず,いまのところOABの層準をこれ以上絞り込むことはできない.
文献:Grădinaru, E. et al., 2007, Albertiana, 36, 54–71; Ehiro, M., 2022a, Bull. Tohoku Univ. Mus, 21, 39–84; Ehiro, M., 2022b, Paleont. Res., 26, 137– 157.

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