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[T15-P-10]近畿地方北部の超丹波帯付加複合体における層序型の層厚変化

*中江 訓1 (1. 産業技術総合研究所 地質情報研究部門)
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キーワード:

層厚変化、基礎層序、付加複合体、超丹波帯

はじめに
 近畿地方北部の超丹波帯付加複合体は標準層序単元として,上滝C,氷上C,大飯C,上月Cに区分され,付加時期はそれぞれAnisian期中頃(上滝C),Changhsingian期末–Olenekian期(氷上C),Wuchiapingian期(大飯C),Capitanian期末–Wuchiapingian期前半(上月C)に限定される(中江, 2023).ところで,単元区分の根拠となる岩相的・層序的差異がどの様な造構過程に支配されるのかは,未解決の課題である.そこで解決の初段階として,標準層序単元ごとの岩相的・層序的な共通点・相違点を比較する.
基礎層序と層序型
 標準層序単元はその内部で,特定の累重関係を保持して岩相変化する層序が構造的に重複する集積体であることから,この層序一単元を基礎層序(foundational stratigraphy)と呼ぶことにする.基礎層序は次の層序型に類別でき,砂岩優勢型(上滝C)=チャートとスレート質泥岩を僅かに挟む厚層砂岩,泥岩砂岩型(氷上C)=珪質泥岩を伴うスレート質泥岩と厚層砂岩,チャート砕屑岩型(大飯C)=チャート・スレート質泥岩・砂岩,混在岩型(上月C)=玄武岩・チャート・珪質泥岩・スレート質泥岩・砂岩,から構成される(中江, 2023).これらの層序型の基礎層序は,下部(玄武岩・チャート・珪質泥岩・スレート質泥岩)と上部(砂岩スレート質泥岩互層・砂岩)から構成されるいわゆる「チャート砕屑岩シークェンス(海洋底層序の一部または全体)」が保存される点で共通するが,基礎層序全体の層厚(全厚)や各岩相の構成比(層厚差)は異なる.
基礎層序の層厚変化
1)層厚差:各層序型の基礎層序には,下部と上部で顕著な層厚差が存在する.砂岩優勢型と泥岩砂岩型では,下部(それぞれ40 mと0〜400 m)に対して上部(それぞれ200 mと0〜600 m)が非常に厚い.対照的にチャート砕屑岩型と混在型では,下部(それぞれ50〜400 m, 50〜180 m)に比べ上部(それぞれ0〜200 m, 0〜150 m)は薄い.ここで特筆すべきは,基礎層序全厚の増減分は下部・上部で均等に賄われていないことである.
2)層厚の相関関係:泥岩砂岩型では,下部に系統的な増減は無く,全厚の増加に関係無く下部の層厚は変動しない(相関係数は小).この様な関係はチャート砕屑岩型の上部と混在岩型の下部にも見られ,これらの層厚に大きな変動は無い(相関係数は小).これに対し,泥岩砂岩型の上部,チャート砕屑岩型の下部及び混在岩型の上部では,全厚との間に強い正の相関が存在する(相関係数は大).特に,泥岩砂岩型の上部とチャート砕屑岩型の下部では近似直線の傾きが大きく,約70 %の全厚はその増加分を上部あるいは下部の層厚増加で賄われている.また,混在岩型の上部でも近似直線の傾きは比較的大きい.つまり,泥岩砂岩型と混在岩型では上部が,チャート砕屑岩型では下部が,それぞれの基礎層序の層厚増加に寄与することを意味している.
引用文献:中江(2023)地質学会第130年学術大会講演要旨,T15–P-11.

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