講演情報
[T15-P-11]中生代白亜紀南半球高緯度帯の放散虫群集組成と殻形態の検討
*河野 駿輝1、堀 利栄1、Christopher J. Hollis2 (1. 愛媛大学、2. Victoria University of Wellington)
キーワード:
放散虫、白亜紀、高緯度帯、Thanarla brouweri、Diacanthocapsa
【はじめに】
中生代白亜紀北半球では緯度帯ごとに放散虫群集組成が異なっていた事が報告されているが(Empson-Morin, 1984), 南半球に於いて同様の研究は行われていない. また, 現生, 三畳紀における両極性分布を示す放散虫種の存在(相田ほか, 2009)や, 一般的に高緯度帯ほど放散虫は大きく厚い殻を持つ傾向にある(例えば, 相田ほか, 2009; Empson-Morin, 1984)という殻形態的特徴が中生代白亜紀南半球高緯度帯放散虫にも認められるかどうか十分には検証されていない. 本研究では, Geroge (1993)によって報告されたニュージーランド北島最南部パリサー岬のチャート層より産出する放散虫化石を, 現在の放散虫層序学の知見を元に再検討を行い, 中生代白亜紀南半球高緯度帯放散虫群集組成を明らかにすると共に, その放散虫化石殻の特徴を同年代の低緯度帯試料と比較・検討した.
【検討試料・手法】
本研究で使用した試料は, 1)ニュージーランド北島最南部パリサー岬に分布するジュラ紀-白亜紀とされたチャート層, 2)白亜紀前期(アプチアン前期)の北半球低緯度帯に堆積した高知県五色ノ浜のチャート層(ここでは, 庵谷ほか, 2009 の残り残渣を使用), 3)白亜紀前期(アプチアン前期)の南半球中低緯度帯で堆積したDSDP Leg27 site259の珪質軟泥(Veevers et al., 1972 参照)である.
パリサー岬のチャート層をHF法で処理し, 得られた残渣を, 二分法を用いて(1/2)³まで分割し, 群集組成を検討した.
緯度帯間での殻形態比較に関しては,Thanarla brouweri とDiacanthocapsa aff. D. fossilis の2種に着目し, 殻の大きさ及び厚さの比較を行った.
【結果】
パリサー岬の放散虫群集組成比:パリサー岬のチャート層の試料では, 合計30647個の残渣粒子中に, 2/3以上全体殻が保存されている放散虫化石が646個(全体の約2.1%)含まれていた. この646個体を殻形態別に区分したところ15グループに分けることができた. 最も多産したのはThanarla属(全体の約20.9%)であり, Stichomitra属(約13.2%)や, Argofusus属(約8.4%), Dictyomitra属(約4.2%), Diacanthocapsa属(約1.4%)に加え, 9つに区分される未記載属は合計で約51.9%含まれていた.
放散虫化石を用いた地層年代の推定:また, O’Dogherty (1994)やBaumgartner et al. (2023)で示された白亜紀放散虫化石レンジに基づき, T. brouweri, Diacanthocapsa spp., Stichomitra cf. S. communis, Argofusus cf. A. primitivus が共産する事を考慮すると, ニュージーランド北島最南部パリサー岬のチャート層の地層年代は中生代白亜紀前期アプチアン前期である可能性が高いと判断された.
殻形態比較:パリサー岬と四万十帯北帯五色ノ浜のチャートより産出したT. brouweri の殻の大きさの比較を行った. また, パリサー岬とDSDP Leg27 site259の白亜紀前期試料より多産したD. aff. D. fossilis 標本を元に, 殻の大きさと厚さの比較を行った.その結果, 1)高緯度帯の個体は低緯度帯の個体より大きい傾向にある, 2)高緯度帯の個体の中には低緯度帯の個体に近い大きさの個体が存在する, 3)高緯度帯の個体は殻の大きさの個体差が低緯度のものより顕著である, という特徴が明らかとなった. また, D. aff. D. fossilis の殻の厚さを比較した結果, 高緯度帯の放散虫の殻は低緯度帯の個体よりも明らかに厚いということを確認できた. これらの特徴は, 白亜紀前期の高緯度帯の放散虫種と, 低緯度帯の放散虫種の間に生じる一般的な特徴である可能性が高い. 今後は, 比較検討する放散虫種数と地点を増やし, 更に検証を重ねる予定である.
【謝辞】
本研究で使用した試料はIODPのleg27 site259の学術試料から得られたものである. 高知コアセンターのスタッフの協力とIODPの支援に感謝申し上げる.
引用文献 相田ほか, 2009, 化石, 85, 25-42. 庵谷ほか, 2009, 大阪微化石研究会誌, 特別号, 14, 297-315. Empson-Morin, 1984, micropaleontology, 30, 87-115. O’Dogherty, 1994, Memoires de Geologie (Lausanne), 21, 83-96, 138-150, 216-218. Geroge, 1993, N Z J Geol Geophys, 36, 185-199. Baumgartner et al., 2023, Micropaleontology, 69, 6, 555–633. Veevers et al., 2009, dsdp 27, 49, 1049-1054.
中生代白亜紀北半球では緯度帯ごとに放散虫群集組成が異なっていた事が報告されているが(Empson-Morin, 1984), 南半球に於いて同様の研究は行われていない. また, 現生, 三畳紀における両極性分布を示す放散虫種の存在(相田ほか, 2009)や, 一般的に高緯度帯ほど放散虫は大きく厚い殻を持つ傾向にある(例えば, 相田ほか, 2009; Empson-Morin, 1984)という殻形態的特徴が中生代白亜紀南半球高緯度帯放散虫にも認められるかどうか十分には検証されていない. 本研究では, Geroge (1993)によって報告されたニュージーランド北島最南部パリサー岬のチャート層より産出する放散虫化石を, 現在の放散虫層序学の知見を元に再検討を行い, 中生代白亜紀南半球高緯度帯放散虫群集組成を明らかにすると共に, その放散虫化石殻の特徴を同年代の低緯度帯試料と比較・検討した.
【検討試料・手法】
本研究で使用した試料は, 1)ニュージーランド北島最南部パリサー岬に分布するジュラ紀-白亜紀とされたチャート層, 2)白亜紀前期(アプチアン前期)の北半球低緯度帯に堆積した高知県五色ノ浜のチャート層(ここでは, 庵谷ほか, 2009 の残り残渣を使用), 3)白亜紀前期(アプチアン前期)の南半球中低緯度帯で堆積したDSDP Leg27 site259の珪質軟泥(Veevers et al., 1972 参照)である.
パリサー岬のチャート層をHF法で処理し, 得られた残渣を, 二分法を用いて(1/2)³まで分割し, 群集組成を検討した.
緯度帯間での殻形態比較に関しては,Thanarla brouweri とDiacanthocapsa aff. D. fossilis の2種に着目し, 殻の大きさ及び厚さの比較を行った.
【結果】
パリサー岬の放散虫群集組成比:パリサー岬のチャート層の試料では, 合計30647個の残渣粒子中に, 2/3以上全体殻が保存されている放散虫化石が646個(全体の約2.1%)含まれていた. この646個体を殻形態別に区分したところ15グループに分けることができた. 最も多産したのはThanarla属(全体の約20.9%)であり, Stichomitra属(約13.2%)や, Argofusus属(約8.4%), Dictyomitra属(約4.2%), Diacanthocapsa属(約1.4%)に加え, 9つに区分される未記載属は合計で約51.9%含まれていた.
放散虫化石を用いた地層年代の推定:また, O’Dogherty (1994)やBaumgartner et al. (2023)で示された白亜紀放散虫化石レンジに基づき, T. brouweri, Diacanthocapsa spp., Stichomitra cf. S. communis, Argofusus cf. A. primitivus が共産する事を考慮すると, ニュージーランド北島最南部パリサー岬のチャート層の地層年代は中生代白亜紀前期アプチアン前期である可能性が高いと判断された.
殻形態比較:パリサー岬と四万十帯北帯五色ノ浜のチャートより産出したT. brouweri の殻の大きさの比較を行った. また, パリサー岬とDSDP Leg27 site259の白亜紀前期試料より多産したD. aff. D. fossilis 標本を元に, 殻の大きさと厚さの比較を行った.その結果, 1)高緯度帯の個体は低緯度帯の個体より大きい傾向にある, 2)高緯度帯の個体の中には低緯度帯の個体に近い大きさの個体が存在する, 3)高緯度帯の個体は殻の大きさの個体差が低緯度のものより顕著である, という特徴が明らかとなった. また, D. aff. D. fossilis の殻の厚さを比較した結果, 高緯度帯の放散虫の殻は低緯度帯の個体よりも明らかに厚いということを確認できた. これらの特徴は, 白亜紀前期の高緯度帯の放散虫種と, 低緯度帯の放散虫種の間に生じる一般的な特徴である可能性が高い. 今後は, 比較検討する放散虫種数と地点を増やし, 更に検証を重ねる予定である.
【謝辞】
本研究で使用した試料はIODPのleg27 site259の学術試料から得られたものである. 高知コアセンターのスタッフの協力とIODPの支援に感謝申し上げる.
引用文献 相田ほか, 2009, 化石, 85, 25-42. 庵谷ほか, 2009, 大阪微化石研究会誌, 特別号, 14, 297-315. Empson-Morin, 1984, micropaleontology, 30, 87-115. O’Dogherty, 1994, Memoires de Geologie (Lausanne), 21, 83-96, 138-150, 216-218. Geroge, 1993, N Z J Geol Geophys, 36, 185-199. Baumgartner et al., 2023, Micropaleontology, 69, 6, 555–633. Veevers et al., 2009, dsdp 27, 49, 1049-1054.
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