講演情報
[T15-P-13]山口県中南部徳山湾周辺に分布する火山深成複合岩体
*大河内 砂恵1、大和田 正明1 (1. 山口大学)
キーワード:
後期中生代、カルデラ、太華山、徳山湾
【はじめに】西中国地方に産する白亜紀火山岩類は,下位から関門層群,周南層群,匹見層群および阿武層群に層序区分されている.このうち周南層群は前期白亜紀末期-後期白亜紀初期に陸上に噴出した安山岩質-流紋岩質火山岩からなり,禅定寺山層と物見ヶ岳層に区分される(今岡・飯泉,2009).また,西中国地域においては多くのカルデラが発見され,新たに「西中国後期白亜紀カルデラ群」(Late Cretaceous caldera cluster in the western Chugoku District , southwest Japan)が提案されている(今岡ほか,2019).
本研究対象地域である山口県徳山湾周辺の太華山には,主に周南層群禅定寺山層の火山噴出岩類(以後,噴出岩類),貫入岩類,泥質片岩そして珪質片岩の分布が報告されている(村上,1986).すなわち,火山深成複合岩体と見なすことができる.そこで,太華山を含む徳山湾周辺の構成岩石の詳細を記載し,噴出岩類と貫入岩類の地質学的位置付けについて検討した.
【地質概要】徳山湾は山口県周南市の大島半島(太華山地域),粭島および大津島に囲まれ,湾内に黒髪島と仙島がある.徳山湾を囲む地域は,変成岩類を基盤とし,噴出岩類と貫入岩類を伴う.噴出岩類の分布は太華山地域に限られるが,太華山地域の南西部,粭島,大津島そして湾内の黒髪島・仙島には花崗岩が噴出岩類や変成岩類を貫く.そのほか,太華山地域や大津島では,安山岩が岩脈として産する(岡村,1965;村上,1986).
【太華山周辺の地質】太華山周辺に産する噴出岩類は,主に安山岩質ないしデイサイト質の凝灰岩,凝灰角礫岩である.構成粒子の大きさや含む岩片の種類は露頭によって異なる.全体の構造は南北~北北西-南南東走向で,西側へ緩く傾斜する.岩相は下位に安山岩質岩,上位にデイサイト質岩が卓越する.また,上位のデイサイト質凝灰岩は溶結構造を示す.一方,南東部では,安山岩岩脈が,南西部では,花崗岩がそれぞれ変成岩類と噴出岩類を貫く.
【徳山湾周辺に分布する火山深成複合岩体の特徴】徳山湾東部の太華山地域の噴出岩類は,全体として下位に安山岩質岩が,上位にデイサイト質岩が累重し,西へ緩く傾斜している.一方,徳山湾西部の島嶼部には貫入岩類のみが分布する.徳山湾内の黒髪島の花崗岩は,全体としてドーム状構造を示す(岡村,1965).すなわち,徳山湾の西部は東部と比較して隆起が大きく,より下部まで削剥されたと考えられる.また,花崗岩は噴出岩類を貫き,「西中国後期白亜紀カルデラ群」の火山深成複合岩体の貫入関係と一致する.さらに,徳山湾の地形的特徴や太華山地域と大津島の変成岩類を貫く岩脈の存在を考慮すると,徳山湾全体の地形はカルデラ状の構造を反映し,噴出岩類はカルデラ内部の充填物で,貫入岩類は噴出岩類に底付けしたマグマ溜まりが固結したものと推察される.
【引用文献】
今岡照喜・飯泉滋,2009,白亜紀-古第三紀の火成活動.日本地質学会編,日本地方地質誌6中国地方,朝倉書店,247-339.
今岡ほか,2019,山口県中央部の後期白亜紀カルデラ群の地質:吉部,山口,生雲,佐々並カルデラ.地質学雑誌,125,529-553.
村上允英,1986編,西中国および周辺地域の酸性~中性火成活動.山口大学教養部紀要,村上允英教授記念号,67.
岡村義彦,1965,山口県徳山市黒髪島花崗岩体の構造.広島大学地学研究報告,14,307-316.
本研究対象地域である山口県徳山湾周辺の太華山には,主に周南層群禅定寺山層の火山噴出岩類(以後,噴出岩類),貫入岩類,泥質片岩そして珪質片岩の分布が報告されている(村上,1986).すなわち,火山深成複合岩体と見なすことができる.そこで,太華山を含む徳山湾周辺の構成岩石の詳細を記載し,噴出岩類と貫入岩類の地質学的位置付けについて検討した.
【地質概要】徳山湾は山口県周南市の大島半島(太華山地域),粭島および大津島に囲まれ,湾内に黒髪島と仙島がある.徳山湾を囲む地域は,変成岩類を基盤とし,噴出岩類と貫入岩類を伴う.噴出岩類の分布は太華山地域に限られるが,太華山地域の南西部,粭島,大津島そして湾内の黒髪島・仙島には花崗岩が噴出岩類や変成岩類を貫く.そのほか,太華山地域や大津島では,安山岩が岩脈として産する(岡村,1965;村上,1986).
【太華山周辺の地質】太華山周辺に産する噴出岩類は,主に安山岩質ないしデイサイト質の凝灰岩,凝灰角礫岩である.構成粒子の大きさや含む岩片の種類は露頭によって異なる.全体の構造は南北~北北西-南南東走向で,西側へ緩く傾斜する.岩相は下位に安山岩質岩,上位にデイサイト質岩が卓越する.また,上位のデイサイト質凝灰岩は溶結構造を示す.一方,南東部では,安山岩岩脈が,南西部では,花崗岩がそれぞれ変成岩類と噴出岩類を貫く.
【徳山湾周辺に分布する火山深成複合岩体の特徴】徳山湾東部の太華山地域の噴出岩類は,全体として下位に安山岩質岩が,上位にデイサイト質岩が累重し,西へ緩く傾斜している.一方,徳山湾西部の島嶼部には貫入岩類のみが分布する.徳山湾内の黒髪島の花崗岩は,全体としてドーム状構造を示す(岡村,1965).すなわち,徳山湾の西部は東部と比較して隆起が大きく,より下部まで削剥されたと考えられる.また,花崗岩は噴出岩類を貫き,「西中国後期白亜紀カルデラ群」の火山深成複合岩体の貫入関係と一致する.さらに,徳山湾の地形的特徴や太華山地域と大津島の変成岩類を貫く岩脈の存在を考慮すると,徳山湾全体の地形はカルデラ状の構造を反映し,噴出岩類はカルデラ内部の充填物で,貫入岩類は噴出岩類に底付けしたマグマ溜まりが固結したものと推察される.
【引用文献】
今岡照喜・飯泉滋,2009,白亜紀-古第三紀の火成活動.日本地質学会編,日本地方地質誌6中国地方,朝倉書店,247-339.
今岡ほか,2019,山口県中央部の後期白亜紀カルデラ群の地質:吉部,山口,生雲,佐々並カルデラ.地質学雑誌,125,529-553.
村上允英,1986編,西中国および周辺地域の酸性~中性火成活動.山口大学教養部紀要,村上允英教授記念号,67.
岡村義彦,1965,山口県徳山市黒髪島花崗岩体の構造.広島大学地学研究報告,14,307-316.
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