講演情報
[J-P-1]作並断層とその周辺の地質構造について
*宮城県 仙台第三高等学校1 (1. 宮城県仙台第三高等学校)
研究者生徒氏名:小野晃太郎
日本には多くの活断層がある。これらの断層の研究は、土地利用における防災上の問題点を明らかにする上で重要である。また、断層は地形境界となり、それらの活動は日本列島の成り立ちを解明する上で重要な要素である。東北地方には奥羽山脈があり、その東縁には山地を隆起させる大断層が南北に連なる。その一つとして作並断層が挙げられる。
作並断層は宮城県南西部をほぼ南北方向に延びている断層であり、奥羽山脈の形成に大きく寄与しているとされる断層である。作並断層については少なくとも中期更新世前半ないし初頭まで、本断層の活動により奥羽脊梁山脈は継続的に隆起し、奥羽山脈と広義の仙台平野との地形的分化は進行したと推察されること¹⁾、地質構造については脊梁山脈東縁の作並断層以東は、全体として緩い構造であるが、全体としては、作並断層に向かってわずかに傾斜していて、向斜を形成し、この構造には第四系までのすべての地層が参加していて,第四紀における脊梁山脈の複背斜状隆起と対を成す前縁沈降帯様の性格を持つものであること²⁾などが知られている。しかし、断層露頭の記載などの報告は少なく、断層運動に関する研究は乏しい。本研究において作並断層のものとされる断層露頭を調査したところ東西方向の姿勢を示す明瞭な断層露頭を確認した。これは南北方向の姿勢を示す作並断層と直交するものであり、これまで知られていた作並断層の姿勢と異なる。そこで作並断層の地質構造を解明するために、周辺の地層の分布の調査と断層露頭の解析を行った。
本研究では作並断層が推定される仙台市青葉区作並において野外調査を実施した。野外調査の手法は、観察した断層付近及び断層の延長が予想される地点での2万5千分の1地形図への地質構造と岩相分布に関するルートマップの作成、構造のスケッチ、クリノーメーターを用いた走向傾斜の測定、サンプルの採集を実施した。
今回、作並駅から約1km北西の広瀬川河床およびその周辺においてルートマップを作成した。河床の東側では凝灰岩、西側では堆積岩であるシルト岩が見られ、推定される作並断層(一般走向はN10°E)の境界部が南北方向に連なっていることと整合的である。また本研究では、作並断層の境界部と考えられる位置に凝灰岩とシルト岩が断層破砕帯で接している断層露頭を確認した。この断層の走向は東西方向(走向はN78°W)であり、従来知られていた作並断層とは異なる姿勢を示している。この露頭については、薄片の作成は困難な粘土質の岩石であった。また、断層露頭の近傍には、取り込まれたれきが含まれる構造が複数見られた。加えて、この断層より20mほど北側には地層が変形し、それぞれが互いに取り込まれた構造も確認できた。断層露頭の姿勢を踏まえ、延長部において断層の有無および岩相分布の調査も合わせて実施した。
以上の結果を踏まえ、作並断層周辺の構造について考察する。今回記載を行った断層露頭では断層を挟んだ両側の地層は大きく異なり、さまざまな変形構造も見られることから小規模な変動ではなく、繰り返し活動を起こし形成されたものである可能性が高いと考えられる。加えてこの断層から北に20mほどの地点で見られた地層が変形した構造は、作並断層が形成される過程で大きな力を受けたことによるものだと推察する。
[参考文献]
1)大月義徳. 奥羽脊梁山脈東縁作並一屋敷平断層の活動時期.季刊地理学, 48(3), 1996.
2)北村信編. 新生代東北本州弧地質資料集第3巻一その3一島弧横断ルートN024(白鷹山一上山一蔵王一岩沼).1986.
キーワード:作並断層、ルートマップ、断層、奥羽山脈、断層露頭
日本には多くの活断層がある。これらの断層の研究は、土地利用における防災上の問題点を明らかにする上で重要である。また、断層は地形境界となり、それらの活動は日本列島の成り立ちを解明する上で重要な要素である。東北地方には奥羽山脈があり、その東縁には山地を隆起させる大断層が南北に連なる。その一つとして作並断層が挙げられる。
作並断層は宮城県南西部をほぼ南北方向に延びている断層であり、奥羽山脈の形成に大きく寄与しているとされる断層である。作並断層については少なくとも中期更新世前半ないし初頭まで、本断層の活動により奥羽脊梁山脈は継続的に隆起し、奥羽山脈と広義の仙台平野との地形的分化は進行したと推察されること¹⁾、地質構造については脊梁山脈東縁の作並断層以東は、全体として緩い構造であるが、全体としては、作並断層に向かってわずかに傾斜していて、向斜を形成し、この構造には第四系までのすべての地層が参加していて,第四紀における脊梁山脈の複背斜状隆起と対を成す前縁沈降帯様の性格を持つものであること²⁾などが知られている。しかし、断層露頭の記載などの報告は少なく、断層運動に関する研究は乏しい。本研究において作並断層のものとされる断層露頭を調査したところ東西方向の姿勢を示す明瞭な断層露頭を確認した。これは南北方向の姿勢を示す作並断層と直交するものであり、これまで知られていた作並断層の姿勢と異なる。そこで作並断層の地質構造を解明するために、周辺の地層の分布の調査と断層露頭の解析を行った。
本研究では作並断層が推定される仙台市青葉区作並において野外調査を実施した。野外調査の手法は、観察した断層付近及び断層の延長が予想される地点での2万5千分の1地形図への地質構造と岩相分布に関するルートマップの作成、構造のスケッチ、クリノーメーターを用いた走向傾斜の測定、サンプルの採集を実施した。
今回、作並駅から約1km北西の広瀬川河床およびその周辺においてルートマップを作成した。河床の東側では凝灰岩、西側では堆積岩であるシルト岩が見られ、推定される作並断層(一般走向はN10°E)の境界部が南北方向に連なっていることと整合的である。また本研究では、作並断層の境界部と考えられる位置に凝灰岩とシルト岩が断層破砕帯で接している断層露頭を確認した。この断層の走向は東西方向(走向はN78°W)であり、従来知られていた作並断層とは異なる姿勢を示している。この露頭については、薄片の作成は困難な粘土質の岩石であった。また、断層露頭の近傍には、取り込まれたれきが含まれる構造が複数見られた。加えて、この断層より20mほど北側には地層が変形し、それぞれが互いに取り込まれた構造も確認できた。断層露頭の姿勢を踏まえ、延長部において断層の有無および岩相分布の調査も合わせて実施した。
以上の結果を踏まえ、作並断層周辺の構造について考察する。今回記載を行った断層露頭では断層を挟んだ両側の地層は大きく異なり、さまざまな変形構造も見られることから小規模な変動ではなく、繰り返し活動を起こし形成されたものである可能性が高いと考えられる。加えてこの断層から北に20mほどの地点で見られた地層が変形した構造は、作並断層が形成される過程で大きな力を受けたことによるものだと推察する。
[参考文献]
1)大月義徳. 奥羽脊梁山脈東縁作並一屋敷平断層の活動時期.季刊地理学, 48(3), 1996.
2)北村信編. 新生代東北本州弧地質資料集第3巻一その3一島弧横断ルートN024(白鷹山一上山一蔵王一岩沼).1986.
キーワード:作並断層、ルートマップ、断層、奥羽山脈、断層露頭
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