講演情報
[J-P-2]凝灰岩の分析を通じた細倉鉱山周辺の地史の考察
*宮城県 仙台第三高等学校1 (1. 宮城県仙台第三高等学校)
研究者生徒氏名:張山真聖
ジオパークとは、地球科学的意義のある地形や景観が保護、持続可能な開発の全てを含んだ総合的な考え方によって管理され、1つにまとまったエリアのことである。宮城県栗原市にある栗駒山麓ジオパークもその1つである。また、ジオサイトとは、ジオパークに含まれる地形や景観のことであり、この地域を特徴づける見学場所である。本研究では、栗駒山麓ジオパークからジオサイトになりうる露頭の解析を通して、新たな見学地を提案する。
栗原市には、かつて国内最大級の鉛、亜鉛鉱山であった細倉鉱山が位置している。細倉鉱山の鉱床は熱水性の鉱脈鉱床であり、細倉層中に胚胎している。細倉層は新第三系中新統の地層であり、細倉鉱山の鉱床母岩となる重要な地層となっている。細倉層は岩相より下部の層と上部層に区分される。下部層は安山岩質溶岩、火砕岩からなる。上部層は主にデイサイト質火砕岩、溶岩からなり、安山岩質溶岩や凝灰岩質泥岩を挟在する(高橋 1988)。細倉鉱山やその周辺地域については、商業的な観点のみならず地質学的な観点から調査が行われた論文も複数書かれているが、形成過程などの詳細については不明な点が多い。本研究では、当地域の地質調査を通じて凝灰岩の構造や特徴を明らかにすることにより、地史を考察することを目的とし、ひいてはジオサイトとしての魅力を発掘することも視野に入れている。
細倉地域の地質構造を明らかにするために地質調査を行った。調査の内容は、クリノメーターによる走向傾斜の測定、2万5千分の1地形図への地質構造及び岩相分布の記載と調査地域についての柱状図、ルートマップの作成を実施した。これらの層序および地質構造を解析した。さらに、露頭から採取した岩石について、研磨面の観察および薄片を用いた鉱物の比較を通して岩石学的な比較を行った。
野外調査の結果、調査地域内において標高200m以下に安山岩が厚く堆積している。その上位に凝灰岩層と安山岩層が交互し、その後、凝灰岩層が主となる様子が確認できた。しかし、凝灰岩と分類した岩石の中でも含まれるれきのサイズや基質部の色や構成鉱物に違いがみられた。同様の標高に位置する岩石でも細粒な黒い鉱物が多く含まれているものや、砂質で黒い物体の貫入を受けているもの、全体的に灰色で非常に細粒なもの、緑の鉱物とオレンジ色の小さな鉱物を含みグリーンタフの可能性があるものなど、採取した場所によって全く外観が異なっていた。また、安山岩層と凝灰岩層それぞれ一箇所ずつにおいて、岩脈のような構造が観察された。
以上のことから、本地域において、溶岩流の噴出と、その後の凝灰岩の堆積する過程が観察でき、凝灰岩の露頭については多様な形態を確認できる。このことから、本地域の形成課程に関する詳細な活動履歴を復元できる可能性がある。
今後は採取地点に関する詳細な分布をもとにサンプルの岩石薄片を作成し、鉱物顕微鏡による鉱物組成の観察を通して岩石の成因を解明したい。それによって過去の地球活動が明らかになれば、調査範囲の地層の層序関係が明確になるとともにルートマップと柱状図のより詳細な記載が可能になり、本研究の目的に近づけると考える。
[参考文献]
・高橋洋.細倉鉱床の鉱化変質分帯と生成モデル.鉱山地質,1988
・柏木高明.鈴木強,脇田健治.細倉鉱山の地質構造と鉱脈系について.鉱山地質,1971
・上野健一.久田健一郎編.地球学シリーズ3 地球学調査・解析の基礎.古今書院,2011
・西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.ナツメ社.2020
キーワード:栗駒、細倉層、凝灰岩、ルートマップ、ジオサイト
ジオパークとは、地球科学的意義のある地形や景観が保護、持続可能な開発の全てを含んだ総合的な考え方によって管理され、1つにまとまったエリアのことである。宮城県栗原市にある栗駒山麓ジオパークもその1つである。また、ジオサイトとは、ジオパークに含まれる地形や景観のことであり、この地域を特徴づける見学場所である。本研究では、栗駒山麓ジオパークからジオサイトになりうる露頭の解析を通して、新たな見学地を提案する。
栗原市には、かつて国内最大級の鉛、亜鉛鉱山であった細倉鉱山が位置している。細倉鉱山の鉱床は熱水性の鉱脈鉱床であり、細倉層中に胚胎している。細倉層は新第三系中新統の地層であり、細倉鉱山の鉱床母岩となる重要な地層となっている。細倉層は岩相より下部の層と上部層に区分される。下部層は安山岩質溶岩、火砕岩からなる。上部層は主にデイサイト質火砕岩、溶岩からなり、安山岩質溶岩や凝灰岩質泥岩を挟在する(高橋 1988)。細倉鉱山やその周辺地域については、商業的な観点のみならず地質学的な観点から調査が行われた論文も複数書かれているが、形成過程などの詳細については不明な点が多い。本研究では、当地域の地質調査を通じて凝灰岩の構造や特徴を明らかにすることにより、地史を考察することを目的とし、ひいてはジオサイトとしての魅力を発掘することも視野に入れている。
細倉地域の地質構造を明らかにするために地質調査を行った。調査の内容は、クリノメーターによる走向傾斜の測定、2万5千分の1地形図への地質構造及び岩相分布の記載と調査地域についての柱状図、ルートマップの作成を実施した。これらの層序および地質構造を解析した。さらに、露頭から採取した岩石について、研磨面の観察および薄片を用いた鉱物の比較を通して岩石学的な比較を行った。
野外調査の結果、調査地域内において標高200m以下に安山岩が厚く堆積している。その上位に凝灰岩層と安山岩層が交互し、その後、凝灰岩層が主となる様子が確認できた。しかし、凝灰岩と分類した岩石の中でも含まれるれきのサイズや基質部の色や構成鉱物に違いがみられた。同様の標高に位置する岩石でも細粒な黒い鉱物が多く含まれているものや、砂質で黒い物体の貫入を受けているもの、全体的に灰色で非常に細粒なもの、緑の鉱物とオレンジ色の小さな鉱物を含みグリーンタフの可能性があるものなど、採取した場所によって全く外観が異なっていた。また、安山岩層と凝灰岩層それぞれ一箇所ずつにおいて、岩脈のような構造が観察された。
以上のことから、本地域において、溶岩流の噴出と、その後の凝灰岩の堆積する過程が観察でき、凝灰岩の露頭については多様な形態を確認できる。このことから、本地域の形成課程に関する詳細な活動履歴を復元できる可能性がある。
今後は採取地点に関する詳細な分布をもとにサンプルの岩石薄片を作成し、鉱物顕微鏡による鉱物組成の観察を通して岩石の成因を解明したい。それによって過去の地球活動が明らかになれば、調査範囲の地層の層序関係が明確になるとともにルートマップと柱状図のより詳細な記載が可能になり、本研究の目的に近づけると考える。
[参考文献]
・高橋洋.細倉鉱床の鉱化変質分帯と生成モデル.鉱山地質,1988
・柏木高明.鈴木強,脇田健治.細倉鉱山の地質構造と鉱脈系について.鉱山地質,1971
・上野健一.久田健一郎編.地球学シリーズ3 地球学調査・解析の基礎.古今書院,2011
・西本昌司.観察を楽しむ 特徴がわかる 岩石図鑑.ナツメ社.2020
キーワード:栗駒、細倉層、凝灰岩、ルートマップ、ジオサイト
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