講演情報
[J-P-3]栗駒山麓ジオパークに位置するクロスラミナ露頭解析からみた古流向の復元
*宮城県 仙台第三高等学校1 (1. 宮城県仙台第三高等学校)
研究者生徒氏名:髙木瑚太郎
宮城県栗原市には日本ジオパークの一つである栗駒山麓ジオパークがある。当ジオパークでは平成20年に起きた岩手・宮城内陸地震による山地災害や河川の氾濫、冷害など、かつてそこで起こった数々の災害を後世に伝える活動を行っている。
一方で、ジオパーク内には成因や時代区分の詳しく分かっていない露頭が数多く残されている。これらの露頭における科学的な価値を十分に活かし、発信していく必要がある。そこで本研究では、栗駒山麓ジオパークに存在する露頭の解析を通して学術的価値を明らかにし新たなジオサイトとして一般普及させることを目的とし研究を進めた。今回の調査では、栗駒市金成小迫に位置するクロスラミナ構造を持つ露頭を調査対象とした。この露頭は20万分の1地質図「一関」において13Maから8Maごろに形成された上黒沢層に属する砂礫層(凝灰角礫岩を含む)とされているが、露頭に関する詳細は明らかになっていない。
そこで本研究では、露頭を構成する堆積物をサンプリングし観察を行った。サンプルは構成粒子が比較的大きいラミナと小さいラミナの2つから採取し、ふるいを用いて構成粒子の大きさごとに鉱物の種類や粒子の特徴について差が見られるかを調べた。また砂の粒径の鉱物を観察し、サンプル内の粒子は特徴ごとに分類した。サンプルに多く見られる白い岩片は軽石と推定した。これらの岩片を「シロ」、その中に一つでも有色鉱物が認められたものを「ゴマ」、0.3mm以下の粒子が塊になっているものをと定義した。また、本露頭のラミナの走向傾斜を測定することでかつての水の流れを示す古流向を復元、走向傾斜のデータからステレオネットに投影することで方位解析を行った。
その結果、それぞれのサンプルにおいて石質岩片「シロ」の割合が76.7%、64.4%、89.7%といずれも構成粒子の殆どを占める結果となった。更に、その他石質岩片「ゴマ」、「集合」も合わせるといずれのサンプルにおいても白色の石質岩片の割合が約9割を占めた。加えてステレオネットによる解析では、ラミナの方向により南東から北西方向(T=N47°W)の水流が推定された。
これらのことを踏まえ、本地域におけるかつての海流と地形に関する考察を行う。本露頭の形成年代とされている13Maから8Maごろは東北日本の形成が行われた時代であり、Horikawa et al (2018) によると10Ma頃の日本において南東から北西方向の海流の存在が示唆されており、これはラミナから示される古流向と一致した。また、構成粒子について、白色の石質岩片が多くを占め、角ばっていることから侵食作用は進んでいないため、その供給源は、比較的近傍の珪長質の火山ではないかと考えた。この露頭の南側には、松島湾周辺において松島層を形成した火山活動が存在し、それらに関連する火山活動は本露頭の堆積物の供給源である可能性がある。
[参考文献]
・Kozaka, Y., Horikawa, K., Asahara, Y., Amakawa, H., & Okazaki, Y. (2018) Late Miocene–mid-Pliocene tectonically induced formation of the semi-closed Japan Sea, inferred from seawater Nd isotopes. Geology, 46, 903-906.
・髙嶋礼詩 松島の地質と地形のなりたち
キーワード:クロスラミナ、ステレオネット、古流向、栗駒、古環境復元
宮城県栗原市には日本ジオパークの一つである栗駒山麓ジオパークがある。当ジオパークでは平成20年に起きた岩手・宮城内陸地震による山地災害や河川の氾濫、冷害など、かつてそこで起こった数々の災害を後世に伝える活動を行っている。
一方で、ジオパーク内には成因や時代区分の詳しく分かっていない露頭が数多く残されている。これらの露頭における科学的な価値を十分に活かし、発信していく必要がある。そこで本研究では、栗駒山麓ジオパークに存在する露頭の解析を通して学術的価値を明らかにし新たなジオサイトとして一般普及させることを目的とし研究を進めた。今回の調査では、栗駒市金成小迫に位置するクロスラミナ構造を持つ露頭を調査対象とした。この露頭は20万分の1地質図「一関」において13Maから8Maごろに形成された上黒沢層に属する砂礫層(凝灰角礫岩を含む)とされているが、露頭に関する詳細は明らかになっていない。
そこで本研究では、露頭を構成する堆積物をサンプリングし観察を行った。サンプルは構成粒子が比較的大きいラミナと小さいラミナの2つから採取し、ふるいを用いて構成粒子の大きさごとに鉱物の種類や粒子の特徴について差が見られるかを調べた。また砂の粒径の鉱物を観察し、サンプル内の粒子は特徴ごとに分類した。サンプルに多く見られる白い岩片は軽石と推定した。これらの岩片を「シロ」、その中に一つでも有色鉱物が認められたものを「ゴマ」、0.3mm以下の粒子が塊になっているものをと定義した。また、本露頭のラミナの走向傾斜を測定することでかつての水の流れを示す古流向を復元、走向傾斜のデータからステレオネットに投影することで方位解析を行った。
その結果、それぞれのサンプルにおいて石質岩片「シロ」の割合が76.7%、64.4%、89.7%といずれも構成粒子の殆どを占める結果となった。更に、その他石質岩片「ゴマ」、「集合」も合わせるといずれのサンプルにおいても白色の石質岩片の割合が約9割を占めた。加えてステレオネットによる解析では、ラミナの方向により南東から北西方向(T=N47°W)の水流が推定された。
これらのことを踏まえ、本地域におけるかつての海流と地形に関する考察を行う。本露頭の形成年代とされている13Maから8Maごろは東北日本の形成が行われた時代であり、Horikawa et al (2018) によると10Ma頃の日本において南東から北西方向の海流の存在が示唆されており、これはラミナから示される古流向と一致した。また、構成粒子について、白色の石質岩片が多くを占め、角ばっていることから侵食作用は進んでいないため、その供給源は、比較的近傍の珪長質の火山ではないかと考えた。この露頭の南側には、松島湾周辺において松島層を形成した火山活動が存在し、それらに関連する火山活動は本露頭の堆積物の供給源である可能性がある。
[参考文献]
・Kozaka, Y., Horikawa, K., Asahara, Y., Amakawa, H., & Okazaki, Y. (2018) Late Miocene–mid-Pliocene tectonically induced formation of the semi-closed Japan Sea, inferred from seawater Nd isotopes. Geology, 46, 903-906.
・髙嶋礼詩 松島の地質と地形のなりたち
キーワード:クロスラミナ、ステレオネット、古流向、栗駒、古環境復元
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