講演情報
[J-P-4]山形県山形市東部盃山および愛宕山の地質と形成史
*山形県立 山形南高等学校1 (1. 山形県立山形南高等学校)
研究者生徒氏名:
遠藤 仁南疏(理数科2年)・須田 太志(理数科2年)・高橋 玲桜(理数科2年)・武田 悠希(理数科2年)・峯田 久志(理数科2年)・井村 匠(山形大学理学部)・湯口 貴史(熊本大学理学部)
(内,発表会参加生徒数 5名)
山形県山形市の盃山および愛宕山地域は、馬見ヶ崎川中流域に位置し、県内では有名な観光スポットである。本地域周辺に分布する地層は、中期中新世~後期中新世に生じた海底火山活動による火山岩類であるとされる(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。先行研究となる神保(1965)および山形応用地質研究会(2016)では、盃山および愛宕山は火砕岩主体の成沢層(神保,1965)を貫くデイサイト~流紋岩質の火山岩類であるとされている(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。一方、一昨年度に我々が実施した現地踏査では、盃山よりも東部の愛宕山南~南東斜面において、さらに愛宕山を貫く暗色貫入岩の産出が確認された。この暗色貫入岩の産状、成因は先行研究では触れられておらず未詳である。また、愛宕山南東部斜面では軽石質火山礫凝灰岩の露出も確認されたが、この火砕岩の層序や分布についても同様に未詳である。そこで、山形盆地内でかつて生じていた海底火山活動を含む地質形成発達史のより詳細な理解を進めるため、盃山と愛宕山における地質の未解明部分を重点的に調査した。
新たな現地踏査の結果、愛宕山の南東斜面にて複数の暗色貫入岩が点在していることがわかった。これらは顕微鏡観察より安山岩と判断される。また、愛宕山南東斜面から馬見ケ崎川河床にかけて、愛宕山をなすデイサイト~流紋岩質溶岩を被覆する軽石質火山礫凝灰岩層が分布する。この軽石質火山礫凝灰岩層は、ほぼEW走向の平行層理が発達しかつ軽石が卓越する上部層、および塊状無層理かつ軽石以外の緻密火山岩礫を含む下部層に分けられ、両者の境界部は不明瞭である。下部層にあたる河床部には暗色~暗灰色緻密かつ隠微晶質の安山岩からなる小岩脈がみられ、軽石質火山礫凝灰岩層にも様相の異なる貫入岩の産出が認められる。これらの中にはジグソーパズル状に割れてほぐれ掛けたものが砕屑岩脈をなすこともあり、水冷に伴い自破砕化したものと解釈される。
以上より、まずこの地域全体がデイサイト質溶岩に覆われ、その後に軽石質火山礫凝灰岩が一部を覆い、対象地域東部に集中して安山岩質マグマが貫入したと推定される。この発見は、先行研究では記載されていなかった本地域の詳細な地質情報を提供するものであり、特に、海底環境であったとされる中期~後期中新世の地質学的プロセスないし地域全体の地質構造の理解を深める重要な手掛かりとなるだろう。今後は踏査地点を増やし、地域の地質情報をさらに明らかにしていくことで、地域の防災対策にも貢献したい。
引用文献:神保 悳(1965) 山形県の地質. 山形県商工労働部鉱山課, 68.;山形応用地質研究会(2016)山形県地質図(10万分の1)および説明書.山形大学出版会,共栄印刷,25–32.
キーワード:盃山,愛宕山,軽石質火山礫凝灰岩,貫入岩
遠藤 仁南疏(理数科2年)・須田 太志(理数科2年)・高橋 玲桜(理数科2年)・武田 悠希(理数科2年)・峯田 久志(理数科2年)・井村 匠(山形大学理学部)・湯口 貴史(熊本大学理学部)
(内,発表会参加生徒数 5名)
山形県山形市の盃山および愛宕山地域は、馬見ヶ崎川中流域に位置し、県内では有名な観光スポットである。本地域周辺に分布する地層は、中期中新世~後期中新世に生じた海底火山活動による火山岩類であるとされる(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。先行研究となる神保(1965)および山形応用地質研究会(2016)では、盃山および愛宕山は火砕岩主体の成沢層(神保,1965)を貫くデイサイト~流紋岩質の火山岩類であるとされている(神保,1965;山形応用地質研究会,2016)。一方、一昨年度に我々が実施した現地踏査では、盃山よりも東部の愛宕山南~南東斜面において、さらに愛宕山を貫く暗色貫入岩の産出が確認された。この暗色貫入岩の産状、成因は先行研究では触れられておらず未詳である。また、愛宕山南東部斜面では軽石質火山礫凝灰岩の露出も確認されたが、この火砕岩の層序や分布についても同様に未詳である。そこで、山形盆地内でかつて生じていた海底火山活動を含む地質形成発達史のより詳細な理解を進めるため、盃山と愛宕山における地質の未解明部分を重点的に調査した。
新たな現地踏査の結果、愛宕山の南東斜面にて複数の暗色貫入岩が点在していることがわかった。これらは顕微鏡観察より安山岩と判断される。また、愛宕山南東斜面から馬見ケ崎川河床にかけて、愛宕山をなすデイサイト~流紋岩質溶岩を被覆する軽石質火山礫凝灰岩層が分布する。この軽石質火山礫凝灰岩層は、ほぼEW走向の平行層理が発達しかつ軽石が卓越する上部層、および塊状無層理かつ軽石以外の緻密火山岩礫を含む下部層に分けられ、両者の境界部は不明瞭である。下部層にあたる河床部には暗色~暗灰色緻密かつ隠微晶質の安山岩からなる小岩脈がみられ、軽石質火山礫凝灰岩層にも様相の異なる貫入岩の産出が認められる。これらの中にはジグソーパズル状に割れてほぐれ掛けたものが砕屑岩脈をなすこともあり、水冷に伴い自破砕化したものと解釈される。
以上より、まずこの地域全体がデイサイト質溶岩に覆われ、その後に軽石質火山礫凝灰岩が一部を覆い、対象地域東部に集中して安山岩質マグマが貫入したと推定される。この発見は、先行研究では記載されていなかった本地域の詳細な地質情報を提供するものであり、特に、海底環境であったとされる中期~後期中新世の地質学的プロセスないし地域全体の地質構造の理解を深める重要な手掛かりとなるだろう。今後は踏査地点を増やし、地域の地質情報をさらに明らかにしていくことで、地域の防災対策にも貢献したい。
引用文献:神保 悳(1965) 山形県の地質. 山形県商工労働部鉱山課, 68.;山形応用地質研究会(2016)山形県地質図(10万分の1)および説明書.山形大学出版会,共栄印刷,25–32.
キーワード:盃山,愛宕山,軽石質火山礫凝灰岩,貫入岩
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