講演情報

[J-P-10]蜃気楼の理論的分析および空気中における再現実験

*中央大学 附属高等学校1 (1. 中大附属高等学校)
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研究者生徒氏名:大原遼人

1. はじめに
蜃気楼とは空気中の屈折率の勾配による光の屈折により,物体が反転したり歪んだりした虚像が見られる大気光学現象である.空気中の屈折率は主に気温によって変化する.蜃気楼には上方蜃気楼,下方蜃気楼,側方蜃気楼の3種類あるが,これらは光の屈折の向きに違いはあるものの原理はすべて同じである.今回の再現実験及び分析では上方蜃気楼を対象とした.
静岡県立清水東高等学校自然科学物理班(2009)のような実験で再現した際の光の軌跡を図示するというものがある.一方,本研究では理論的計算により蜃気楼における光の軌跡をエクセル上で描き,ショ糖水溶液を用いた再現実験における光の軌跡との比較を行った.

2.研究背景・目的
本研究の目的は蜃気楼の発生予測プログラムの作成である.そこで,蜃気楼における光の軌跡の理論値計算,並びにショ糖水溶液を用いた再現実験との比較によりその正確性の確認を行った.次に空気中での蜃気楼の再現を行い理論値計算との比較を試みた.

3. 溶液を用いた再現実験
1)屈折率が1.33から1.42の間で等差となるような8つのショ糖水溶液(0,8,16,24,31,37,44,50重量%)を作成する.
2)作成したショ糖水溶液を屈折率の低い方から注射器を用いて水槽の底へ静かに入れ,同じ厚みである8層のショ糖水溶液からなる水槽を作る.
3)最下層から角度をつけて緑色のレーザー光を入射させる.水槽側面に対する入射角5度から5度ずつ増加させ,水面における光の全反射が発生するまで計測をする.(図1)
4)レーザー光の屈折後の座標を計測する.角度はレーザーポインターの側方にスマートフォンを付け測定した.

4. 理論値計算
ある区間が極めて多層に分割されていると仮定し,その層ごとに屈折率が異なり,且つ屈折率がグラデーション状になっている場合を想定する.エクセルを用いて各層間における光の屈折による光の角度の変化,及び進んだ距離を算出する.その算出した結果を用いて光の軌跡を図示する.また,先の再現実験との比較をするため,光の屈折後の座標を明らかにする.
計算はスネルの法則を利用して行った.理論上,光の軌跡の最上部において光が水平になる.光が水平になるとその後水平に進んでしまい計算が続かないため,光の入射から光が水平になるまでと光が水平になった後の2つに分けて計算を行い,図示の段階で合成した.(図2)

5. 空気中における再現実験
 ホットプレートを300℃に加熱し,その150㎜ほど上部に-15℃にした保冷剤を設置する.それらの間にレーザー光を入射させ,線香の煙を利用し,レーザー光の道筋を可視化する.(図3)
 図4は光の軌跡の一部を拡大したものであり,赤線は蜃気楼未発生時(温度差を生じさせていないとき),緑線は蜃気楼発生時の光の軌跡である.
 図4において赤線と緑線にずれが生じていることから蜃気楼が発生していたことが分かる.

6. 考察・今後の展望
空気中の再現実験において光の屈折がかなり小さく,理論値計算との比較が出来なかった.
今後はホットプレートと保冷剤との距離を小さくすることや保冷剤の代わりにドライアイスを利用することで温度勾配を大きくする改善を試みる.また,曲がり方の定量化の方法を再検討する.
蜃気楼の原理を利用した空気の温度分布の計測方法を模索する.
 
参考文献
静岡県立清水東高等学校 自然科学部物理班,2009.光線追跡による蜃気楼モデルの解析.

キーワード:蜃気楼 光の軌跡 再現実験 ショ糖水溶液 温度差

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