講演情報

[J-P-11]対流を考慮した人工雪発生装置の開発★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★

*中央大学 附属高等学校1 (1. 中大附属高等学校)
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研究者生徒氏名:鶴田拓海

1. はじめに
私は2023年カナダのイエローナイフにおいて天然の雪の観察を行い,雪の幾何学的な結晶構造と天然ものゆえのノイズに魅了された.これを人工的に再現したいと思った.先行研究[1][2]などによると,雪結晶を再現する方法としては低温室を用いたものやペットボトルとドライアイスを用いたものなどがある.だが,低温室は高価かつ数が少ないという難点が,ペットボトルを用いた方法では多様な雪結晶を再現することはできないといった課題がある.そこで,高校でも実行可能な安価かつ多様な雪結晶を再現できる装置の開発を研究目標とした.

2. 雪の形成メカニズム
地上で暖められた空気は空気塊を形成して上昇する.地上と比べ高度が上がるにつれ気圧が下がるため,空気塊は膨張し温度が下がる.そうすると,空気中に溶けていた水蒸気が空気中に存在する微粒子を核として析出し,氷晶や水滴を形成する.この時,氷晶の形状は,周囲の気温と水蒸気量を変数として変化する.特に水蒸気が多い場合,氷晶と水滴間に水蒸気的な飽和度の差が生じ,空気を介した水分の急速な譲渡が行われ氷晶が発達する.これらのことから,人工雪を再現するにあたって必要な条件は氷晶と過冷却水滴が共存できる環境にあることがわかる.

3. 人工雪発生装置
3.1開発
多様な雪結晶を再現するには気温と水蒸気量を任意に変化させられる装置が必要である.そこで我々は次のような装置を開発した.冷凍庫内部に設置したプラスチック球内にゴムチューブを介して温度を制御した水蒸気を送り込み,線香の煙を凝結核として加え,半球内で対流を起こすことにより雪結晶が成長することを期待する装置である.(図1)

3.2実験
この装置を用いてフラスコ内の水温(3℃・4℃・5℃・6℃)と時間(10分・20分・30分)を変数とした対照実験を行った.結果は,六花状のもの,針状のもの,氷枝が単独で存在しているもの,複数の結晶がくっ付いたものなど,実に多彩な結晶を作り出すことができた.(図2はその一例である)

3.3 考察
水温を1℃変えるだけで得られた氷晶の種類に大きな変化があった。これは、過冷却水滴の飽和水蒸気圧曲線と氷晶に対する飽和水蒸気圧曲線の差がもたらしたものと解釈される。
また,時間を変えた時の氷晶の成長速度は加速度的になる.氷晶の周りの空気の体積とくっつく水蒸気の量が比例しているためだと考えられる.ただし、どの段階から過冷却水滴から氷晶に対する水蒸気の譲渡が行われているかは不明である.また、氷に対する飽和水蒸気圧の有効半径がどの程度なのかを今後調べる必要がある.

4.今後の展望
今後の展望として,より細かな温度設定や水蒸気量の定量化を行っていきたい.

参考文献
[1]亀田貴雄・舘山一孝・百武欣二・高橋修平・遠藤浩司・関光雄,2009,学校教育における雪結晶生成実験-北見工業大学の物理学実験での実施例-.雪氷,71,4,263‐272
[2]平松和彦,1997,ペットボトルで雪の結晶をつくる.1997年度日本雪氷学会全国大会講演予稿集,216.

キーワード:人工雪 対流 過冷却水滴 冷凍庫 氷晶

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