講演情報

[J-P-12]現地調査に基づく伊豆諸島三宅島大路池の水理特性

*市川学園 市川高等学校1 (1. 市川学園市川高等学校)
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研究者生徒氏名:児嶋悠斗

 大路池は太平洋北西部,伊豆諸島三宅島の南部に位置する約2500年前の噴火口にできた(津久井ほか,2005)海水との交流はない淡水の湖沼(新井ほか,1977)である(図1C).
 新井ほか(1977)は池の水と海水のイオン組成をキーダイアグラムで表したことから異なる組成であることを発見し,池の水と海水の交流がないことを証明した(図2).新井ほか(1977),新井(1978),青木ほか(1984)は大路池が地下水の露頭であり,水収支は地下水でのみ行われていて,地表からの河川などによる流出入はないことを示唆した.小寺ほか(2014)は大路池を含む三宅島の陸水の水質が火山の影響を多く受けていることを示唆した.佐藤ほか(2020)は地下水と海からの塩によって水質が形成されていることを示唆した.
 そこで本研究では火山や海水,地下水が大路池の水質に与える影響を解明し,大路池の水理特性を明らかにすることを目的とする。そのために2024年1月17日に予察的に調査を行った.また2024年7月下旬にも現地調査を行う予定である.
 2024年1月17日の調査の結果,Loc.6で他の5か所に比べ水温の変化が小さく,pH,電気伝導度,Na⁺濃度の値が低くなった(図3~6).このような観測結果となった原因として9世紀に雄山から大路池北西部付近まで流れ込んだ玄武岩質溶岩流(津久井ほか,2005)の内部を水が通って大路池内に流入したこと(図7),池の底部と表層部の密度の違いから内部で水の流れが発生したこと,風によって池に水の流れができたことなどが考えられる.土(2017)は富士山で玄武岩質溶岩流内部から湧水が湧出することを発見している(図8).これは大路池付近の溶岩流内部を水が通って池に流入している可能性を示唆する.
 今後は2024年1月及び7月の調査により得られたデータを基に考察を行い,本学会にて発表する予定である.

<参考文献>
青木滋・新藤静夫・茅原一也(1984)三宅島火山島の地下水.火山第2集第29号(1984),三宅島噴火特集号,S324〜S334頁;アジア航測株式会社「赤色立体地図」;新井正・森和紀・高山茂美(1977)三宅島の陸水について. 陸水学雑誌. 38, 1, 1-8.;新井正(1978)三宅島・大路池の水収支.地理学評論.51-9,704〜720;小寺浩二・濱侃・斎藤圭・森本洋一(2014)名水を訪ねて(106)伊豆諸島の名水. 地下水学会誌. 56-3, 237~249.;佐藤篤来・松本達志・小寺浩二・猪狩彬寛・矢巻剛(2020)三宅島における火山活動の影響を考慮した水環境の変化に関する研究(1). 2020年度日本地理学会春季学術大会講演要旨集P167.地質図Navi.三宅島火山地質図.産業技術総合研究所地質調査総合センター;津久井雅志・川辺禎久・新堀賢志(2005)三宅島火山地質図.独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター,火山地質図12,三宅島火山;土隆一(2017)富士山の地質と地下水流動.地学雑誌126(1) 33-42.

三宅島,大路池,水質,溶岩流

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