講演情報
[J-P-17]1792年島原大変肥後迷惑での津波被害とその原因
*熊本県立 宇土高等学校1 (1. 熊本県宇土高等学校)
研究者生徒氏名:米田 直人 村上 聖真 吉田 大暉 西川 幸輝 徳丸 幸樹 堀田 舞衣 橋本 直大 西田 琉花
1 はじめに
私たちが暮らす宇土半島を含む有明海沿岸は江戸時代に日本で最大級の自然災害であった島原大変肥後迷惑による津波被害を受けた。2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年には熊本地震を経験し、2024年の能登半島地震では津波による甚大な被害を目の当たりにした。それにもかかわらず、身近な場所で過去に大きな津波被害があったことを多くの人が知らない状況にあるのではないか、と疑問に思った。
2 目的
A 津波被害の実態把握
(1)島原大変の被害の実態を把握
(2)多くの人に実感を持ち理解してもらえるようにする
B 津波被害に関する科学的な理解
(1)津波被害が大きい所(2)津波高と海岸線の形との関係性とその検証
3 研究内容
A(1)被害の実態把握
① 現地での震災遺構調査
宇土半島北側の7か所の供養塔や津波石などの遺構を調査した。
→ 遺構までの道案内や被害状況等を示した看板が設置された所は少なく、場所が分かりにくい所が多かった。津波石が海から遠く離れ、高さ20m近くの場所もあり、津波が来たとは信じられない場所があった。
② 地域住民への聞き取り調査
震災遺構の周辺の地域住民に遺構や島原大変に関して知りうる情報や防災対策について聞き取りを行った。
→ 遺構の存在は知っていても、島原大変やその時の被害状況等について知っている人はほとんどおらず、遺構近くの人が善意で掃除や管理をされ、行政が積極的に管理・運営しているとは言い難い。津波災害に対する訓練はなされておらず、意識は高いとは言えない状況である。
③ 文献調査 「島原大変による寛政大津波(堀川治城、平成20年)」、「日本の歴史上最大の火山災害島原大変(国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所、平成15年)」などを調べ、特別展に参加し資料を拝見した。
→ 宇土半島の北側だけでなく、荒尾・玉名、熊本市や天草市など、有明海沿岸での溺死者数、家屋流出軒数、津波の波高や津波の到達地点などが分かった。
(2)島原大変に対する理解の拡大~大昔の津波による被害を実感できるような工夫~
① 被害状況のマッピング
震災遺構や津波高などをGoogleEarthにプロット。遺構写真や関連データを添付。
→ 様々な地点での被害やその程度の違いが空間的に理解しやすくなった。
② グラフ化 → 場所による被害状況の違いをグラフや表にまとめ可視化した。
B 津波被害に関する科学的な理解
Aより2つの疑問が生じた。
疑問① 同じ宇土半島で距離が近くても、被害の程度は全く異なるのはなぜか。
⇒ 仮説:津波被害は、海岸付近の低い平地で大きい。
疑問② 標高は同じでも場所により、津波が到達の状況が異なるのはなぜか。
⇒ 仮説:津波高は、海岸線の形により異なる。
(1)標高の高・低と平地・傾斜地で分けて、津波被害の大・小を表にまとめる。
→ 標高の低い平地で、溺死者数や家屋の流出軒数が多く、仮説は正しい。
(2)① 津波高と海岸線の形については、大きく4つの異なる海岸線の模型をつくり、波を発生させる実験を行い、海岸に到達する津波が遡上する高さを計測する。
→ 夏休みを利用して、実験装置を完成させ実験する。
② ①で得られた結果を、島原大変および東北地方太平洋沖地震のデータを元に確かめる。
4 まとめ 日本最大級の自然災害である島原大変については、多くの人が知らない状況である。私たち世代がきちんと実態や科学的仕組みを理解し、地域住民に伝えて防災意識を高めていく必要がある。
キーワード:島原大変肥後迷惑、震災遺構、津波災害、岩屑なだれ
1 はじめに
私たちが暮らす宇土半島を含む有明海沿岸は江戸時代に日本で最大級の自然災害であった島原大変肥後迷惑による津波被害を受けた。2011年の東北地方太平洋沖地震、2016年には熊本地震を経験し、2024年の能登半島地震では津波による甚大な被害を目の当たりにした。それにもかかわらず、身近な場所で過去に大きな津波被害があったことを多くの人が知らない状況にあるのではないか、と疑問に思った。
2 目的
A 津波被害の実態把握
(1)島原大変の被害の実態を把握
(2)多くの人に実感を持ち理解してもらえるようにする
B 津波被害に関する科学的な理解
(1)津波被害が大きい所(2)津波高と海岸線の形との関係性とその検証
3 研究内容
A(1)被害の実態把握
① 現地での震災遺構調査
宇土半島北側の7か所の供養塔や津波石などの遺構を調査した。
→ 遺構までの道案内や被害状況等を示した看板が設置された所は少なく、場所が分かりにくい所が多かった。津波石が海から遠く離れ、高さ20m近くの場所もあり、津波が来たとは信じられない場所があった。
② 地域住民への聞き取り調査
震災遺構の周辺の地域住民に遺構や島原大変に関して知りうる情報や防災対策について聞き取りを行った。
→ 遺構の存在は知っていても、島原大変やその時の被害状況等について知っている人はほとんどおらず、遺構近くの人が善意で掃除や管理をされ、行政が積極的に管理・運営しているとは言い難い。津波災害に対する訓練はなされておらず、意識は高いとは言えない状況である。
③ 文献調査 「島原大変による寛政大津波(堀川治城、平成20年)」、「日本の歴史上最大の火山災害島原大変(国土交通省九州地方整備局雲仙復興事務所、平成15年)」などを調べ、特別展に参加し資料を拝見した。
→ 宇土半島の北側だけでなく、荒尾・玉名、熊本市や天草市など、有明海沿岸での溺死者数、家屋流出軒数、津波の波高や津波の到達地点などが分かった。
(2)島原大変に対する理解の拡大~大昔の津波による被害を実感できるような工夫~
① 被害状況のマッピング
震災遺構や津波高などをGoogleEarthにプロット。遺構写真や関連データを添付。
→ 様々な地点での被害やその程度の違いが空間的に理解しやすくなった。
② グラフ化 → 場所による被害状況の違いをグラフや表にまとめ可視化した。
B 津波被害に関する科学的な理解
Aより2つの疑問が生じた。
疑問① 同じ宇土半島で距離が近くても、被害の程度は全く異なるのはなぜか。
⇒ 仮説:津波被害は、海岸付近の低い平地で大きい。
疑問② 標高は同じでも場所により、津波が到達の状況が異なるのはなぜか。
⇒ 仮説:津波高は、海岸線の形により異なる。
(1)標高の高・低と平地・傾斜地で分けて、津波被害の大・小を表にまとめる。
→ 標高の低い平地で、溺死者数や家屋の流出軒数が多く、仮説は正しい。
(2)① 津波高と海岸線の形については、大きく4つの異なる海岸線の模型をつくり、波を発生させる実験を行い、海岸に到達する津波が遡上する高さを計測する。
→ 夏休みを利用して、実験装置を完成させ実験する。
② ①で得られた結果を、島原大変および東北地方太平洋沖地震のデータを元に確かめる。
4 まとめ 日本最大級の自然災害である島原大変については、多くの人が知らない状況である。私たち世代がきちんと実態や科学的仕組みを理解し、地域住民に伝えて防災意識を高めていく必要がある。
キーワード:島原大変肥後迷惑、震災遺構、津波災害、岩屑なだれ
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