講演情報

[J-P-20]馬門石の赤色はヘマタイト?

*熊本県立 宇土高等学校1 (1. 熊本県宇土高等学校)
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研究者生徒氏名:
3年:徳丸亮汰、本田琢磨、小林瑞、新宅草太
2年:吉田大暉、西川幸輝、米田直人、村上聖真
1年:橋本直大、徳丸幸樹、堀田舞衣、西田琉花

1:動機 私たちが住む熊本県宇土市で産出される馬門石は、Aso-4火砕流堆積物である阿蘇溶結凝灰岩とされているが、赤色の原因は未だ不明であるため。

2:目的・仮説 本研究では馬門石の赤色の原因を明らかにしたい。今回は文献を参考に、赤色の原因を「鉄」のFe2O3と考え、研究を進めた。以下、赤いものを馬門石、黒いものをAso-4とよぶ。

3:研究内容 A:観察・実験 馬門石とAso-4の違いや鉄の酸化物の生成を知るため、観察・実験を行った。(1)馬門石とAso-4の違い 密度→差はほとんどなかった。磁性→磁石についたものは、磁鉄鉱の他に角閃石等も見られた。(2)空気中と水道水中の鉄クギのサビの発生を観察 水道水中の鉄クギで赤サビFeO(OH)が発生した。(3)粉末(Fe、Fe2O3、Aso-4、馬門石)のガスバーナーでの加熱、塩酸中での反応 馬門石とFe2O3の実験結果は類似していた。
⇒ 赤色の原因は、Fe2O3かFeO(OH)ではないか。
B:成分分析 両者の成分の違いを調べるため、熊本県産業技術センターで成分分析や電気炉での加熱を行った。(1)蛍光Ⅹ線分析 成分組成はほぼ同じで、鉄が約10%含まれていた。
(2)Ⅹ線回折 固有波長のピークが不明瞭で、Fe2O3の有無を明確にできなかった。(3)電気炉での加熱 1,000℃で加熱すると、どちらも赤色になった。⇒馬門石の赤色の原因は、岩石中の「鉄」ではないか。さらに(2)よりFeO(OH)ではと考えたが、Fe2O3である可能性もある。
C:岩石の分布調査 両者の産状と色の関係を明らかにすべく、宇土市網津町馬門にて分布調査を行った。その結果、複数箇所で境界が見られた。主な観察結果は以下のとおり。
①基底部付近はAso-4、その上に馬門石が見られることが多かった。②境界面の傾斜は場所によって様々で、局所的に変化していた。③境界面は色が漸移しており、不明瞭だった。④含まれる礫や黒曜石レンズの量や大きさに、違いは見られなかった。⇒両者の大きな違いは色だけ。元は同じ岩石ではないか。⇒①②より、馬門石の生成は熱による酸化ではなく水による酸化が原因ではないか。

4:考察 元々は全てAso-4だったが、水や空気に触れることで部分的に酸化し、FeO(OH)が発生して赤くなったものが馬門石ではないか。

5:まとめ 馬門地区における馬門石の分布の詳細を明らかにした。馬門石とAso-4は色の特徴以外ほぼ同じである。現在、Aso-4が、馬門地域では内部の角閃石が風化する際に、鉄が水により赤サビを形成し、赤くなったものが馬門石だと考えているが、断定できない。

6:今後の課題● 岩石中のFe2O3の検出。● FeO(OH)とFe2O3の温度による生成の変化を調べる。● 馬門の阿蘇溶結凝灰岩は、Aso-4火砕流堆積物のどのユニットかを明らかにする。● 鉱物による酸化、 風化のしやすさなどを調べる。● 馬門地区での追加の分布調査や、他地域の馬門石に類似した岩石の調査を行う。

7:謝辞・主な参考文献 本校教諭の本多栄喜先生、熊本県産業技術センターの大城善郎様、元本校地学教師の田中基義先生、御船町恐竜博物館学芸員の池上直樹先生など、研究に関わって下さった皆様に心より感謝申し上げる。●酸化鉄、水酸化鉄系化合物の生成と物性(1969)高田利夫●阿蘇火山の生い立ち 地質が語る大地の鼓動(2003)渡辺一徳●国土地理院地図●熊本の自然をたずねて(2009)熊本県高等学校教育研究会地学部会●熊本日日新聞(2021)「馬門石 噴火の軌跡に触れる」

キーワード:岩石、Aso-4火砕流堆積物、鉄、馬門石、酸化

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