講演情報
[T5-O-2]寿都町,神恵内村文献調査報告書(案)の地層処分技術WGにおける審議への対応
*兵藤 英明1、浜本 洋1、加藤 誠司1、松本 孟紘1、松岡 洋1、宮崎 遼1、尾上 博則1、三枝 博光1、高林 佑灯1、髙畑 祐美1、田丸 豊浩1 (1. 原子力発電環境整備機構)
キーワード:
地層処分、文献調査、寿都町、神恵内村、地層処分技術WG
原子力発電環境整備機構(以下,NUMO)は北海道寿都町及び神恵内村の文献調査報告書(案)(以下,報告書案)をとりまとめ,2024年2月13日に開催された総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 特定放射性廃棄物小委員会 地層処分技術ワーキンググループ(以下,技術WG)第1回会合に提出した。同年5月24日の第4回会合までの4回にわたり,2023年11月に経済産業省資源エネルギー庁によって公表された「文献調査段階の評価の考え方」(以下,「評価の考え方」)が報告書案に適切に反映されているか議論・評価いただき,その他のご意見もいただいた。
報告書案は,特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(以下,最終処分法)施行規則第六条に示された構成に従いとりまとめ,文献調査の項目ごとの詳細な調査・評価結果などについては別に添付する説明書などにまとめている。報告書案の要約書も作成し併せて技術WGに提出した。
調査結果の概要として寿都町,神恵内村の概要調査地区の候補などを図1に示す。「評価の考え方」の基準に該当し避ける場所は,神恵内村の「積丹岳から15 kmの範囲」などであるが,これに加えて,避ける場所の基準に該当する可能性の観点から概要調査以降の調査を実施する場合に留意すべきと考えられる事項の主な例の位置も示している。
技術WGにおいては,審議のために,報告書案本文と項目ごとの説明書から「評価の考え方」の基準などに合わせて抜粋した資料などを用いて,Ⅰ.共通事項(既存の文献・データでは十分な評価が行えない場合,文献・データの収集),Ⅱ.項目ごとの基準に基づいた評価のプロセス(内訳は後述のa~f),Ⅲ.技術的観点からの検討の考え方に基づいた検討のプロセス(内訳は後述のg,h),Ⅳ.評価・検討結果のまとめ(図1はこの内容)のような内容を説明した。
Ⅱの各項目においては,「評価の考え方」の基準,確認の仕方に示された評価要素ごとの調査・評価結果,基準に照らした評価などに加えて,概要調査以降の調査を実施する場合について説明した。Ⅲについても「評価の考え方」に示された検討の考え方に沿った検討結果などを説明した。評価要素ごとの調査・評価結果は以下のとおり。
a 断層等:文献・データに示された活断層など個別の断層ごとに,変動地形学的調査,地質学的調査及び地球物理学的調査の知見の例(寿都町の陸域の白炭断層,神恵内村の海域の神威海脚西側の断層)から,後期更新世以降の活動や地表における延長を評価した例などを示した。
b マグマの貫入と噴出:「火道,岩脈,カルデラ等の履歴」の例として神恵内村の珊内川中流の岩脈,「第四紀に活動した火山の活動中心」の例として火道,火口の位置が明確ではない積丹岳,「地殻及びマントル最上部にメルトが存在する可能性の評価」の例として寿都町南端付近の低周波地震などを示した。
c 侵食:沿岸部の隆起量の評価例として海成段丘の高度分布,海水準低下による過去の下刻量の評価例として寿都町朱太川河口付近の沖積層基底礫層の深度などを示した。
d 第四紀の未固結堆積物:該当する地層の最終処分を行おうとする地層における分布などを示した。
e 鉱物資源:現在稼働中または近年稼働していた鉱山の鉱床等の鉱量等の設定と,寿都町,神恵内村内の鉱床の鉱種ごとの鉱量,鉱床の分布深度などを示した。
f 地熱資源:坑井データによる地温勾配データなどを示した。
g 地層や岩体,断層などの分布といった地下の状況の取りまとめ:地質層序表,地表地質図,推定地質断面図,海底地質図,海底地質断面図,推定古地理図などを示した。
h 地質環境特性:上記gを基に抽出した主な検討対象地層の抽出,文献調査対象地区内には情報が乏しい岩盤特性について周辺の同種岩盤の情報の収集,収集整理した情報の閉じ込め機能と建設可能性の観点からの検討などを示した。
このような説明に対して主に以下の御指摘をいただき,これに対応して報告書案を修正する。
「文献調査を通じて,今後の調査に向けた留意事項とされた項目については,概要調査に進んだ場合に何を実施するのか等の具体的な計画や,留意事項について判断出来るかの目安を報告書内で示しておくことが望ましい。また,文献調査から概要調査に進む場合の考え方について,最終処分法の要件,及びこれまでの審議会の議論の結果と齟齬がないことを確認した上で,報告書に明記すべきと思われる」。
<参照文献>
i. 「文献調査段階の評価の考え方」に基づいた評価及び検討のプロセス(NUMO)
ii. 文献調査報告書(案)への「文献調査段階の評価の考え方」の反映状況に関する技術的・専門的観点からの評価(案)(資源エネルギー庁)
(ⅰ,ⅱはそれぞれ技術WG第4回会合(2024/5/24)の参考資料2,資料3)
報告書案は,特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(以下,最終処分法)施行規則第六条に示された構成に従いとりまとめ,文献調査の項目ごとの詳細な調査・評価結果などについては別に添付する説明書などにまとめている。報告書案の要約書も作成し併せて技術WGに提出した。
調査結果の概要として寿都町,神恵内村の概要調査地区の候補などを図1に示す。「評価の考え方」の基準に該当し避ける場所は,神恵内村の「積丹岳から15 kmの範囲」などであるが,これに加えて,避ける場所の基準に該当する可能性の観点から概要調査以降の調査を実施する場合に留意すべきと考えられる事項の主な例の位置も示している。
技術WGにおいては,審議のために,報告書案本文と項目ごとの説明書から「評価の考え方」の基準などに合わせて抜粋した資料などを用いて,Ⅰ.共通事項(既存の文献・データでは十分な評価が行えない場合,文献・データの収集),Ⅱ.項目ごとの基準に基づいた評価のプロセス(内訳は後述のa~f),Ⅲ.技術的観点からの検討の考え方に基づいた検討のプロセス(内訳は後述のg,h),Ⅳ.評価・検討結果のまとめ(図1はこの内容)のような内容を説明した。
Ⅱの各項目においては,「評価の考え方」の基準,確認の仕方に示された評価要素ごとの調査・評価結果,基準に照らした評価などに加えて,概要調査以降の調査を実施する場合について説明した。Ⅲについても「評価の考え方」に示された検討の考え方に沿った検討結果などを説明した。評価要素ごとの調査・評価結果は以下のとおり。
a 断層等:文献・データに示された活断層など個別の断層ごとに,変動地形学的調査,地質学的調査及び地球物理学的調査の知見の例(寿都町の陸域の白炭断層,神恵内村の海域の神威海脚西側の断層)から,後期更新世以降の活動や地表における延長を評価した例などを示した。
b マグマの貫入と噴出:「火道,岩脈,カルデラ等の履歴」の例として神恵内村の珊内川中流の岩脈,「第四紀に活動した火山の活動中心」の例として火道,火口の位置が明確ではない積丹岳,「地殻及びマントル最上部にメルトが存在する可能性の評価」の例として寿都町南端付近の低周波地震などを示した。
c 侵食:沿岸部の隆起量の評価例として海成段丘の高度分布,海水準低下による過去の下刻量の評価例として寿都町朱太川河口付近の沖積層基底礫層の深度などを示した。
d 第四紀の未固結堆積物:該当する地層の最終処分を行おうとする地層における分布などを示した。
e 鉱物資源:現在稼働中または近年稼働していた鉱山の鉱床等の鉱量等の設定と,寿都町,神恵内村内の鉱床の鉱種ごとの鉱量,鉱床の分布深度などを示した。
f 地熱資源:坑井データによる地温勾配データなどを示した。
g 地層や岩体,断層などの分布といった地下の状況の取りまとめ:地質層序表,地表地質図,推定地質断面図,海底地質図,海底地質断面図,推定古地理図などを示した。
h 地質環境特性:上記gを基に抽出した主な検討対象地層の抽出,文献調査対象地区内には情報が乏しい岩盤特性について周辺の同種岩盤の情報の収集,収集整理した情報の閉じ込め機能と建設可能性の観点からの検討などを示した。
このような説明に対して主に以下の御指摘をいただき,これに対応して報告書案を修正する。
「文献調査を通じて,今後の調査に向けた留意事項とされた項目については,概要調査に進んだ場合に何を実施するのか等の具体的な計画や,留意事項について判断出来るかの目安を報告書内で示しておくことが望ましい。また,文献調査から概要調査に進む場合の考え方について,最終処分法の要件,及びこれまでの審議会の議論の結果と齟齬がないことを確認した上で,報告書に明記すべきと思われる」。
<参照文献>
i. 「文献調査段階の評価の考え方」に基づいた評価及び検討のプロセス(NUMO)
ii. 文献調査報告書(案)への「文献調査段階の評価の考え方」の反映状況に関する技術的・専門的観点からの評価(案)(資源エネルギー庁)
(ⅰ,ⅱはそれぞれ技術WG第4回会合(2024/5/24)の参考資料2,資料3)
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