講演情報

[T8-O-4]木津川周辺にみられる堆積環境と河川の変遷について

*北田 奈緒子1、水谷 光太郎1、井上 直人1、伊藤 浩子1、三村 衛1、肥後 陽介2 (1. 一般財団法人 GRI財団、2. 京都大学)
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キーワード:

地盤情報、河川堆積物、第四紀、都市地質学

地盤情報データベースベースを用いた地質学的な検討は,大阪堆積盆地を皮切りに関西圏の多くの地域で実施されてきた。その中で,特に港湾部に隣接する地域は海成粘土層と火山灰層との関係から,堆積年代を含めた検討が容易であるが,内陸になると海成粘土層の分布は限定的で,対比可能な鍵層が極端に少なくなること,河川成の堆積物は分布範囲が狭く,層相変化が激しいために側方対比の難易度が著しく高くなる。「関西圏地盤情報ネットワーク(KG-NET)」の一つである関西圏地盤研究会では,これらのデータを用いた利活用事例を示すために,内陸地域のボーリングデータを用いた河川流域の特徴や解析を実施している。このうち,木津川周辺におけるボーリングの検討について報告する。 木津川は,花崗岩地域を流れる河川であり,風化した花崗岩によるマサ土と呼ばれる砂が主な堆積物となるのが特徴である。国土地理院発行の治水分類図によると,河川の周辺には多数の旧河道が分布する。ボーリングデータを用いて検討を行うと,河床部では表層部では,砂層が下部には砂礫層が分布することが読み取れるが,旧河道部では,現在の河床の地層構成とは異なり,砂や粘土からなる場合が多くみられる。そこで,木津川流域の八幡市上津屋付近において,旧河道部とそうでない地域でボーリング調査を実施し,浅層地下水の水位観測を実施して特徴を検討した。調査の結果から旧河道部には比較的細粒な堆積物からなることが明らかになった。また,地域の微地形を検討すると,堤防の形状と堤内部の低地を抽出すると,河川決壊時に形成されたと思われる押堀(おっぽり)状の地形が複数確認され,堤防決壊箇所が明らかになった。また,その延長上の提内には古い空中写真を用いると破堤ローブが確認された。以上の事から,木津川の砂岩に該当する八幡市上津屋付近の「旧河道」と判読される場所の多くは氾濫河川跡であると推定される。以上の検討を基に,ボーリングデータによる地層分布夜連続性について,検討するとともに,比抵抗調査を実施することで堤内における現在の河川増水時の特徴のメカニズムを検討した。2020年10月10日には,国土交通省淀川河川事務所が防災情報として配信している河川水位情報及び気象庁の降水予測情報から河川水位の上昇が想定できたことから現地に赴き,堤内地における漏水・噴砂現象の現地観察を行った。堤内地の水田を観察してみたところ,多くの水田において気体を含む漏水・噴砂現象を確認することができた。また,気体を含む漏水・噴砂現象は堤防に近い箇所ほど顕著であることがわかった。後日この時の河川データおよび地下水位データを取りまとめると,当時河川水位は最大で標高14.5mまで達した。通常河川水位は標高10m程度であることから,約4.5m程度河川水位が上昇していたことになる。標高14.5mとなれば,水位観測孔の孔口標高が約13mであり,河川の水位の方が高いので漏水や噴砂現象が堤防近くで見られる要因であると結論づけた。また,噴砂箇所は旧氾濫河川部に取り囲まれた部分で顕著に観察されることから,河川増水時に堤内に流れ込む河川の流れが旧氾濫河川部にみられる細粒分(シルトや粘土)によって流動阻害が発生し,河川水が漏水・噴砂現象を引き起こす可能性が高いと推定される。

引用文献:北田奈緒子・伊藤浩子・水谷光太郎・濱田晃之・藤原照幸・三村衛・肥後陽介:木津川流域における表層地質とその特性について,応用地質学会研究発表会論文集,34,2020.国土地理院:地水分類図「淀」,「宇治」KG-NET関西圏地盤研究会・関西地質調査業協会:新関西地盤2021-京都南部地域と木津川周辺-,160 p, 2021.

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