講演情報

[T8-O-7]世界の地盤沈下の概況(その1)アフリカ,西・南・東南アジア地域

*藤崎 克博1 (1. なし)
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キーワード:

衛星測位システム、干渉合成開口レーダー、地盤沈下、地下水過剰揚水、石油・ガス採取

昨年の講演では,第10回国際地盤沈下シンポジウムTISOLS2023(Tenth International Symposium On Land Subsidence, 2023)の講演要旨に基づいて,世界の地盤沈下の現況を報告した(藤崎・古野,日本地質学会第130年学術大会T16-O-15,2023).今回は,TISOLS2020のプロシーディングス(Fokker, P. A. and G. Erkens eds, PIAHS 382, 2020)およびユネスコ地盤沈下部会(UNESCO LaSII)作成のInteractive map of Land Subsidence sites(www.landsubsidence-unesco.org/maps/)の事例を加えて,世界の地盤沈下の概況を報告する.ただし,事例が多いため今回はアフリカ,西・南・東南アジア地域の状況について述べる.残りの地域については,別途報告する予定である.アフリカでは,ナイジェリアのギニア湾岸のラゴスで,人口増による生活用地下水の過剰揚水による最大88mm/年(2015-2019)に達する沈下が報告されている.ニジェール川デルタのポートハーコートでは,石油採掘による最大200mm/年(2015-2020)の沈下がみられる.ガーナのボルタ川デルタでは,9mm/年(2016-2020)の沈下が観測されているが,原因は特定されていない.エジプトのナイル川デルタでは,地下水の過剰揚水による12-20mm/年(2015-2019)の沈下と主要都市での構造物の荷重による12-20mm/年(2015-2019)の沈下が報告されている.これらはいずれも干渉合成開口レーダー(InSAR)による観測である.南アフリカのセンチュリオンでは,InSAR(2015-2017)による沈下量とシンクホールとの関係が検討されている.西アジアでは,クエートのブルガン油田で石油採掘による10mm/年程度(InSAR2008-2011)の沈下が報告されている.UAEでは,アルアインで地下水の過剰揚水による最大40mm/年(InSAR2015-2019)の沈下が観測されている.イランでは,テヘランで人口増による生活用地下水揚水増加で最大250mm/年(InSAR2003-2017)の沈下が報告されている.データが古いが(InSAR2004),ヤズド(最大94mm/年),ザランド(最大250mm/年),カーシュマル(最大270mm/年),マシュハド(最大300mm/年),ラフサンジャーン(最大500mm/年)での地下水過剰揚水による沈下が観測されている.パキスタンのカラチでは最大15mm/年(InSAR2004-2016)の沈下が,ケッタでは最大150mm/年(InSAR2008-2016)に上る地下水過剰揚水による沈下が報告されている.南アジアでは,インドのガンジス川デルタのコルカタで最大16mm/年(InSAR2007-2011)の沈下が観測されている.バングラディシュのブラマプトラ川デルタでは,5-20mm/年(InSAR,GNSS2007-2011)の地下水過剰揚水に起因する沈下が報告されている.東南アジアでは,ミャンマーのヤンゴンで20mm/年以上,最大110mm/年(InSAR2015-2017)の地下水揚水による沈下が観測されている.タイのバンコックでは,地下水の過剰揚水による最大120mm/年(水準測量1978-1981)の沈下があったが,法による揚水規制が強化され,最近では10mm/年(水準測量2012-2018)程度にまで沈静化してきている.ベトナムでは,メコンデルタの都市部で20-50mm/年,農村部で0-20mm/年(InSAR2014-2019)の沈下が報告されている.とくにホーチミンでは人口増による地下水揚水の増大で40-70mm/年(InSAR2014-2017)に達する沈下が観測されている.インドネシアでは,ジャワ島北岸の各都市で地下水の過剰揚水による大きな地盤沈下が観測されている.ジャカルタでは最大60mm/年(InSAR2017-2018),スマランでは最大150mm/年(水準測量2008-2016),スラバヤで最大20mm/年(InSAR2014-2017)の沈下が報告されている.スマトラ島では,泥炭湿地森林を開拓してパルプ生産用のアカシア植林地や油ヤシ農園を造成したことにより,泥炭の分解による沈下が生じている.沈下量は,最初の5年間で約1.5mにも達する.スラウェシ島のマッカサルでも50-150mm/年(InSAR1994-1999)の沈下が報告されている.フィリピンのマニラでは,最大60mm/年(水準測量1964-2002)の沈下が報告されている.

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