講演情報
[T8-O-8]産業廃棄物最終処分場等の立地条件としての地質環境について-地下水の水質監視用井戸-
*田村 嘉之1 (1. 一般財団法人千葉県環境財団)
キーワード:
監視井戸、地下水、地質汚染、産業廃棄物最終処分場、水循環基本法
はじめに
田村(2022)では、産業廃棄物最終処分場の設置に係る法律、省令及び要綱にある地質に関係する立地環境等としては、急傾斜地崩壊危険区域、砂防指定地、地すべり防止区域を含まない等の項目があるが、地下水などの水環境については、「廃棄物処理施設生活環境影響調査指針」で評価するが、立地基準とはなっていないことを述べた。また、地下水に関しては、君津市等の「水道水源保護条例」では、対象となる事業としてゴルフ場、最終処分場等を対象とし、排水基準による規制のみで、立地規制とはなっていないことなど、千葉県内の産業廃棄物最終処分場を取り巻く地質環境の概況、地質災害との関連性及び埋立地の維持管理上で発生している問題点について述べた。
本発表では、水循環としての地下水利用がある地域や都市部において、水質監視用井戸設置に関する問題点を水文地質学観点から述べる。
概況
田村(2022)他でも示したが、千葉県における産業廃棄物最終処分場は、図-1に示したように9箇所ある。安定型、管理型の設置位置は、人口密集地である千葉県の東京湾岸、東葛飾でなく、房総半島の南側に集中している。このうち、管理型処分場の立地している地質環境について、地下水環境の状況を加えて以下に示す。
管理型1
地形:標高215m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場の北側隣接地に地すべり地形がある。
地質:上総層群黄和田層。地質構造は概ね北西へ20~10度傾斜している単斜構造。処分場北西側と東側には向斜軸、また北西側向斜軸の北側に低角な断層がある。
地下水環境:平成17年8月に埋立地の地下水流動方向の下流側に設置した水質監視井戸にて塩化物イオン濃度の上昇が確認され、平成18年に千葉県より改善勧告がだされた。一方、本問題については、平成18年6月に処分場の事業者からNPO法人日本地質汚染審査機構に、中立性・科学性の立場から、情報公開を前提に調査・対策・審査を依頼され、審査会の開催、住民説明会など開催され、審査の過程がすべて公開されている(https://www.npo-geopol.or.jp/otsukayamareport.htm参照)。現在も県へ提出された計画書によるモニタリング及び揚水対策を実施している。
管理型2
地形:標高90m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場付近に地すべり地形、急傾斜地の区域はない。
地質:上総層群梅ヶ瀬層。地質構造は概ね北西へ約12度傾斜している単斜構造。
地下水環境:平成24年1月に塩化物イオン濃度が高いことが確認され、平成24年3月に千葉県より指導(勧告)がなされた(https://www.pref.chiba.lg.jp/haishi/press/2011/saisyuusyobunjyou/araisougousisetu3.html参照)。その指導に至った水質監視井戸の水質測定結果のうち、①臭素イオン濃度が高い値であること、②有機ふっ素化合物のうちPFOAの濃度が高いことより、内部保有水の混入の疑いがあるとされた。一方、処分場埋立地の遮水構造物に設置されている漏水検知システムの異常がないこと、水質監視井戸の塩化物イオン濃度が低下傾向を示していること、地下水の環境基準項目で基準を超えた項目がないことより、監視指導にとどめている。なお、事業者側からの見解では埋立地の地上部に露出している土堰堤の法尻からの流出により、埋立地外に漏洩したとされ、現在その法尻からの流出防止策等を講じている。
管理型処分場等における水質監視井戸の重要性と問題点
管理型1の処分場では審査から計画、そしてその後の水質監視状況はすべて公開されている。また、揚水対策として設置した数多くの井戸は詳細な地質ボーリング記載や物理試験等の結果を反映して作成されている。したがって、水文地質構造を把握しての対策がなされている状況である。一方、管理型2では、水質監視の状況は公開さているもの、具体的な対策と効果に関する所見が公開されていない。水文地質構造を把握しての対策が講じられているかどうか不明である。
このように処分場や地質汚染された場所での水質監視では、水文地質構造に関する調査、解析した結果に基づく、水質監視井戸の設置が重要である。しかし、水文地質構造の解明が不十分な状態での水質監視井戸の設置も散見され、水質監視としての十分に機能していない等の問題もある。
引用文献
田村嘉之,2022, 産業廃棄物最終処分場の立地条件としての地下水盆管理と水循環について.日本地質学会第129年学術大会講演要旨,G3-O-5.
田村(2022)では、産業廃棄物最終処分場の設置に係る法律、省令及び要綱にある地質に関係する立地環境等としては、急傾斜地崩壊危険区域、砂防指定地、地すべり防止区域を含まない等の項目があるが、地下水などの水環境については、「廃棄物処理施設生活環境影響調査指針」で評価するが、立地基準とはなっていないことを述べた。また、地下水に関しては、君津市等の「水道水源保護条例」では、対象となる事業としてゴルフ場、最終処分場等を対象とし、排水基準による規制のみで、立地規制とはなっていないことなど、千葉県内の産業廃棄物最終処分場を取り巻く地質環境の概況、地質災害との関連性及び埋立地の維持管理上で発生している問題点について述べた。
本発表では、水循環としての地下水利用がある地域や都市部において、水質監視用井戸設置に関する問題点を水文地質学観点から述べる。
概況
田村(2022)他でも示したが、千葉県における産業廃棄物最終処分場は、図-1に示したように9箇所ある。安定型、管理型の設置位置は、人口密集地である千葉県の東京湾岸、東葛飾でなく、房総半島の南側に集中している。このうち、管理型処分場の立地している地質環境について、地下水環境の状況を加えて以下に示す。
管理型1
地形:標高215m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場の北側隣接地に地すべり地形がある。
地質:上総層群黄和田層。地質構造は概ね北西へ20~10度傾斜している単斜構造。処分場北西側と東側には向斜軸、また北西側向斜軸の北側に低角な断層がある。
地下水環境:平成17年8月に埋立地の地下水流動方向の下流側に設置した水質監視井戸にて塩化物イオン濃度の上昇が確認され、平成18年に千葉県より改善勧告がだされた。一方、本問題については、平成18年6月に処分場の事業者からNPO法人日本地質汚染審査機構に、中立性・科学性の立場から、情報公開を前提に調査・対策・審査を依頼され、審査会の開催、住民説明会など開催され、審査の過程がすべて公開されている(https://www.npo-geopol.or.jp/otsukayamareport.htm参照)。現在も県へ提出された計画書によるモニタリング及び揚水対策を実施している。
管理型2
地形:標高90m前後の上総丘陵及び南北方向に延びる谷地形。処分場付近に地すべり地形、急傾斜地の区域はない。
地質:上総層群梅ヶ瀬層。地質構造は概ね北西へ約12度傾斜している単斜構造。
地下水環境:平成24年1月に塩化物イオン濃度が高いことが確認され、平成24年3月に千葉県より指導(勧告)がなされた(https://www.pref.chiba.lg.jp/haishi/press/2011/saisyuusyobunjyou/araisougousisetu3.html参照)。その指導に至った水質監視井戸の水質測定結果のうち、①臭素イオン濃度が高い値であること、②有機ふっ素化合物のうちPFOAの濃度が高いことより、内部保有水の混入の疑いがあるとされた。一方、処分場埋立地の遮水構造物に設置されている漏水検知システムの異常がないこと、水質監視井戸の塩化物イオン濃度が低下傾向を示していること、地下水の環境基準項目で基準を超えた項目がないことより、監視指導にとどめている。なお、事業者側からの見解では埋立地の地上部に露出している土堰堤の法尻からの流出により、埋立地外に漏洩したとされ、現在その法尻からの流出防止策等を講じている。
管理型処分場等における水質監視井戸の重要性と問題点
管理型1の処分場では審査から計画、そしてその後の水質監視状況はすべて公開されている。また、揚水対策として設置した数多くの井戸は詳細な地質ボーリング記載や物理試験等の結果を反映して作成されている。したがって、水文地質構造を把握しての対策がなされている状況である。一方、管理型2では、水質監視の状況は公開さているもの、具体的な対策と効果に関する所見が公開されていない。水文地質構造を把握しての対策が講じられているかどうか不明である。
このように処分場や地質汚染された場所での水質監視では、水文地質構造に関する調査、解析した結果に基づく、水質監視井戸の設置が重要である。しかし、水文地質構造の解明が不十分な状態での水質監視井戸の設置も散見され、水質監視としての十分に機能していない等の問題もある。
引用文献
田村嘉之,2022, 産業廃棄物最終処分場の立地条件としての地下水盆管理と水循環について.日本地質学会第129年学術大会講演要旨,G3-O-5.
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