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[T8-O-9]山岳トンネルのFEMにおける底盤の変位・応力を考慮した地山剛性領域モデルに関する弾性論的2,3の考察

*渡辺 敬三1 (1. 株式会社 復建技術コンサルタント)
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キーワード:

有限要素法、山岳トンネル、地山変位-応力、弾性係数領域、弾性理論

1.研究の概要
 山岳トンネルのFEMでは,トンネル周辺の変形係数を同一とした単一剛性モデルの場合,天端沈下量より底盤隆起量が大きくなる,すなわち解析上の大きなリバウンドが生じる場合がある.しかし,この現象は実際のトンネルで起こる変形と異なる場合があるため,過年度に山岳トンネルの底盤に関わる地山の変位・応力を,FEM(二次元変形応力解析)を用いて主に帰納法的に考察し,解析上のリバウンドを抑制するための地山の変形特性値および剛性領域の配置モデルを提案した1).本発表では,深度方向に増加する地圧条件下における地山剛性領域モデルと弾性理論解の関係について考察した.
2.提案した地山剛性領域モデル
 過年度提案した地山剛性領域モデルは,天端沈下量(y1)と底版隆起量(y2)の比(-y2/y1)に着目し,DⅡ地山(変形係数E01=150MPa)及びE地山(E01=60MPa)を中心とした解析検討によるトンネル周辺及び底盤下の3領域設定モデルである.各領域(変形係数E01~E03が属する)は次の意味合いをもつ.E01領域は,トンネル周辺,すなわちトンネル側壁方向で2D(D;掘削幅)程度の範囲の剛性域で,アーチから側壁のトンネルおよび近傍地山の応力・変形を生じさせる.E02領域(E02=βE01)は,掘削前の初期地山,あるいはトンネル掘削の影響を受けない範囲の剛性域で,E03領域(E03=αE01)は,トンネル掘削時に応力解放の影響の少ない底盤直下剛性域(厚さ6~10m)とした.
ただし,土被り100m以下の条件で,β/α=2,α=2~5,β=4~10とした.
3.掘削解放力および地中応力・変位分布に関する考察
 (1)トンネルの掘削解放力を二次元理論式2)を用い,円形,上半円,馬蹄形,三心円,三心円+インバート,矩形の各断面について,中心角5度刻みで計算を行い,掘削解放力を上半,下半に分けて合算した.計算された掘削解放力を考察した結果,下半がより円形,すなわち円形断面やインバート付き断面で,下半の上向き解放力が上半の下向き解放力より大きくなる.(2)円形断面トンネルにおいて弾性論による地中応力,変位を求める式として,Kirschの解がある.このモデルは平面ひずみ条件の単一剛性場の板状モデルで,一軸方向の応力場(例えば鉛直地圧Pz)で解かれている3).一般に,座標系をπ/2回転させて重ね合わせた二軸応力式4)(水平地圧PH=kPz,ここでkは側圧係数)が示される.ここで当式をPz=h・γt (h:当該点の土被り,γt:単位体積重量)として拡張可能とみなし,円形断面で単一剛性場のFEM弾性解析と比較したところ,地山の応力および変位は,FEM解析値とKirschの解の理論値が概ね類似することが分かった.(3)上記の考察から次の仮説を示す。「自重下の弾性変形では,底盤下地山は除荷時の剛性アップがあるが,その後,除荷剛性の低下と応力再配分が進み,底盤隆起は最終的に絶対値で天端沈下の大きさと同等かより大きくなる.実際のトンネル掘削における膨張性地山等の変形は,弾塑性と粘弾性の性質を持つが,周辺の剛性域分布に強い影響を受け,かつ下半,底盤下の応力再配分に時間を要して遅れ変形として発現する.」
参考文献 1)渡辺敬三;山岳トンネルのFEMにおける掘削解放力と底盤の変位・応力および地山の剛性領域に関する帰納法的考察,土木学会トンネル工学会報告集,2023年11月
2)久武勝保・山崎康裕;トンネル沈下のFEM結果に及ぼす解析領域の影響, トンネルと地下第32巻11号, 2001年11月
3)S.P.Timoshenko and J.N.Goodier,Theory of Elasticity,McGraw-Hill, 3rd.edition,1970.
4)E.フック&E.T.ブラウン「岩盤地下空洞の設計と施工」小野寺透・吉中龍之進・斉藤正忠・北川隆共訳,土木工学社,1985.

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