講演情報

[T8-O-10]首都圏の台地を構成するMIS 5e–5a堆積物の層相変化に伴う地盤震動特性の変化

*中澤 努1、長 郁夫1、野々垣 進1 (1. 産総研地質調査総合センター)
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キーワード:

地盤震動特性、上部更新統、台地、首都圏

一般に台地の地盤は低地に比べて良好という認識が強く根付いている.しかし台地にも一部には沖積層によく似た軟弱な泥層の分布が知られるなど,実際には,台地を構成する地層の層相およびその組み合わせにより,地盤震動特性は大きく変化すると予想される.演者らは首都圏の台地の構成層であるMIS 5e–5cの堆積物,すなわち更新統下総層群木下層や常総層,新期段丘堆積物の分布および層相の側方変化により地盤震動特性がどのように変化するかをボーリング調査と既存土質ボーリング柱状図の解析,そして常時微動観測を実施することにより検討した.
 下総台地のMIS 5c面に位置する流山市西初石付近には,工学的基盤となる下総層群上泉層/清川層の上位に木下層下部の内湾成泥層,木下層上部の内湾成砂泥互層,常総層の河川成砂層,それを覆って関東ローム層が分布する.ここでは地盤の共振周波数を示すとされるH/Vスペクトルに1 Hz付近と4〜5 Hzにピークがみられ,このうち1 Hz付近のほうが明瞭であった.同じくMIS 5c面である柏市旭町付近では,木下層下部が分布するのは流山と同様であるが,木下層上部が海成の砂層からなることが異なる.ここでは流山に似て1〜2 Hzと5 Hz付近の両方にいずれも低いピークが認められたが,流山に比べ5 Hz付近のピークが明瞭になった.また木下層下部が分布しない柏市豊住付近では高周波数帯域までフラットに近い特性を示した.
 武蔵野台地のMIS 5e面に位置する世田谷区上用賀には,工学的基盤となる上総層群の上位に,木下層(東京層;MIS 5e)下部の軟らかい内湾成泥層が分布し,その上位に木下層上部の内湾成の砂質泥層,そして関東ローム層が累重する.ここではH/Vスペクトルのピークが1 Hz付近の低周波数帯域に明瞭にみられた.一方でMIS 5a面に相当する世田谷区野毛町は,木下層下部は分布するが木下層上部は侵食され,新期段丘堆積物とそれを覆って関東ローム層が分布する.ここではH/Vスペクトルに1.4 Hzと4.6 Hzの2つのやや低いピークが認められ,このうち4.6 Hzのピークのほうが比較的明瞭であった.
 以上をまとめると,まず木下層下部の軟らかい泥層が分布し,その上位も泥層が主体で表層の関東ローム層まで粗粒堆積物を挟まない場合,H/Vスペクトルには1 Hz付近の低周波数帯域に明瞭なピークが認められるなど,台地であるにもかかわらず低地に類似する地盤特性を示した.一方で木下層下部が分布する地域であっても,木下層上部が砂層である場合,あるいは河川成の常総層/新期段丘堆積物が厚く分布する場合はピークが2つに分かれ,いずれのピークもやや不明瞭になった.また木下層下部が分布しない場合は,高周波数帯域までフラットに近い特性を示した.すなわち首都圏の台地部の地盤震動特性は,1)木下層下部(MIS 5e)の軟弱な谷埋め泥層の有無,2)それを被覆する木下層上部および常総層などの段丘堆積物の層相変化,以上の組み合わせによって大きく変化することが明らかになった.

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