講演情報
[T8-O-12]震度5弱の地震観測点近傍における液状化-流動化被害箇所の地質条件:2011年東北地方太平洋沖地震時における東京湾岸埋立地での地質災害に関する地質調査から
*風岡 修1、小島 隆宏1 (1. 千葉県環境研究センター)
キーワード:
液状化-流動化、人工地層、2011年東北地方太平洋沖地震、東京湾岸埋立地、完新世堆積物
はじめに:2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際,東京湾岸埋立地では地盤の沈下や噴砂・噴水を伴う液状化-流動化現象が斑状に発生した.袖ヶ浦市長浦の埋立地では沈下を伴う噴砂が複数箇所で見られた.これら噴砂の近傍には地震観測点があり,計測震度は5弱であった(千葉県環境研究センター,2011).東京湾岸埋立地において噴砂が見られた場所の近傍に設置されていた地震観測点での計測震度はほとんどの場所で5強であり,調査地点は揺れが小さかったものの液状化-流動化被害が生じた特異点と考えられる.この原因を調べるため,噴砂地点ではオールコアボーリングを,地震観測点から噴砂箇所までの水平距離約100mの間は動的コーン貫入試験を行い地質条件の変化を調べた.
調査地の土地改変履歴と調査の概要:調査地は1960年以前は干潟であり,1960年代初期に干拓され水田となった.1960年代末から1970年初めにはサンドポンプ工法により埋め立てられ,土地造成後現況の土地利用となった.
オールコアボーリングは,噴砂が見られた北緯35度26分57秒,東経139度59分21秒,標高3.4mにて深度16mまで行った.動的コーン貫入試験は,斜面調査用簡易貫入試験機にて深度4.5~11mまで行った.
地層構成:オールコアボーリング地点では,深度4.15mに人自不整合があり,この上位は人工地層,下位は沖積層である.また,深度15.11mを境に地層の硬さや層相が急変する不整合面があり,この上位は沖積層,下位は下総層群である.
下総層群は,灰白色~オリーブ黄色の良く締まった細粒砂層を主体とする.不整合面直下では,この砂層が風化・土壌化し,植物の根の跡が多数見られる.
沖積層は,泥層主体の上部と砂層や礫層を挟む泥炭質な泥層である下部から構成され,その境は深度11.15mである.
下部は,オリーブ黒色~黒褐色の軟らかい有機質シルト層や泥炭層及び緑灰色粘土質シルト層とオリーブ色の締まった中粒砂層,粗粒砂層,中礫層が互層をなしている.砂層中には植物片が含まれる.
上部は灰色~灰オリーブ色の軟らかい泥層から構成され,深度4.65mよりも上位にはサンドパイプ状の生痕化石をしばしば含む.また,深度4.15~4.26mは締まった貝殻密集層である.
人工地層は,深度4.01~4.15mの下部盛土アソシエーション,深度0.28~4.01mの埋立アソシエーション,深度0.00~0.28mの上部盛土アソシエーションから構成される.
下部盛土アソシエーションは,灰オリーブ色の泥・細粒砂混じり粗粒砂層から構成され,植物片や貝殻片を含む.1960年代の干拓時の盛土と考えられる.
埋立アソシエーションは,淘汰の良い細粒砂層を主体とし,厚さ5~30cmの貝殻片を含む中粒砂層や,厚さ5~10cmの貝殻片や細礫が混じる中粒ないし粗粒砂層を挟む.細粒砂層の多くは葉理が消失又は不明瞭となっている.貝殻片や細礫が混じる中粒ないし粗粒砂層の多くは葉理が明瞭である.これらはサンドポンプによる埋立層と考えられる.
上部盛土アソシエーションは,シルト礫密集層と砕石質細粒砂層から構成される.最終的な土地造成時の盛土と考えられる.
動的コーン貫入試験結果:オールコアボーリング近傍での貫入試験結果から,Nc(動的コーン貫入試験値)と地層との関係は以下のようにまとめられる.最下位のNc>45と硬い部分は下総層群,この上位のNc=25~45で深度方向へ硬さが互層状に変化する部分は沖積層下部,この上位のNc=4~30で深度方向へ徐々に硬くなる部分は沖積層上部,Nc=1~30で深度方向に硬さが互層状に大きく変化する部分は人工地層と推定される.ここで,地震観測点近傍では,厚さ約4mの人工地層の下位に厚さ約0.5mの沖積層下部があり,その下位は下総層群である.一方,地震観測点から噴砂地点へ向かうにつれて,人工地層の厚さに変化はないものの,沖積層は徐々に厚くなり噴砂地点では約11mとなる.
液状化-流動化に関して:液状化-流動化の判定は,風岡ほか(1994)・風岡(2003)に基づき判断した.埋立アソシエーションの下部・中部の大部分では葉理が不明瞭ないし消失しており,この部分が地震時に液状化-流動化したものと考えられる.地震観測点では人工地層の下位の軟弱な沖積層はごく薄いものの,噴砂が見られた付近では厚く,この沖積層部分で地震動が増幅し震度5弱を超え,人工地層が液状化-流動化したものと推定される.
引用文献:
千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 3-1~3-25.
風岡 修ほか,1994,日本地質学会第101年総会・討論会 講演要旨,125-126.
風岡 修,2003,液状化・流動化の地層断面.アーバンクボタ40号,5-13.
調査地の土地改変履歴と調査の概要:調査地は1960年以前は干潟であり,1960年代初期に干拓され水田となった.1960年代末から1970年初めにはサンドポンプ工法により埋め立てられ,土地造成後現況の土地利用となった.
オールコアボーリングは,噴砂が見られた北緯35度26分57秒,東経139度59分21秒,標高3.4mにて深度16mまで行った.動的コーン貫入試験は,斜面調査用簡易貫入試験機にて深度4.5~11mまで行った.
地層構成:オールコアボーリング地点では,深度4.15mに人自不整合があり,この上位は人工地層,下位は沖積層である.また,深度15.11mを境に地層の硬さや層相が急変する不整合面があり,この上位は沖積層,下位は下総層群である.
下総層群は,灰白色~オリーブ黄色の良く締まった細粒砂層を主体とする.不整合面直下では,この砂層が風化・土壌化し,植物の根の跡が多数見られる.
沖積層は,泥層主体の上部と砂層や礫層を挟む泥炭質な泥層である下部から構成され,その境は深度11.15mである.
下部は,オリーブ黒色~黒褐色の軟らかい有機質シルト層や泥炭層及び緑灰色粘土質シルト層とオリーブ色の締まった中粒砂層,粗粒砂層,中礫層が互層をなしている.砂層中には植物片が含まれる.
上部は灰色~灰オリーブ色の軟らかい泥層から構成され,深度4.65mよりも上位にはサンドパイプ状の生痕化石をしばしば含む.また,深度4.15~4.26mは締まった貝殻密集層である.
人工地層は,深度4.01~4.15mの下部盛土アソシエーション,深度0.28~4.01mの埋立アソシエーション,深度0.00~0.28mの上部盛土アソシエーションから構成される.
下部盛土アソシエーションは,灰オリーブ色の泥・細粒砂混じり粗粒砂層から構成され,植物片や貝殻片を含む.1960年代の干拓時の盛土と考えられる.
埋立アソシエーションは,淘汰の良い細粒砂層を主体とし,厚さ5~30cmの貝殻片を含む中粒砂層や,厚さ5~10cmの貝殻片や細礫が混じる中粒ないし粗粒砂層を挟む.細粒砂層の多くは葉理が消失又は不明瞭となっている.貝殻片や細礫が混じる中粒ないし粗粒砂層の多くは葉理が明瞭である.これらはサンドポンプによる埋立層と考えられる.
上部盛土アソシエーションは,シルト礫密集層と砕石質細粒砂層から構成される.最終的な土地造成時の盛土と考えられる.
動的コーン貫入試験結果:オールコアボーリング近傍での貫入試験結果から,Nc(動的コーン貫入試験値)と地層との関係は以下のようにまとめられる.最下位のNc>45と硬い部分は下総層群,この上位のNc=25~45で深度方向へ硬さが互層状に変化する部分は沖積層下部,この上位のNc=4~30で深度方向へ徐々に硬くなる部分は沖積層上部,Nc=1~30で深度方向に硬さが互層状に大きく変化する部分は人工地層と推定される.ここで,地震観測点近傍では,厚さ約4mの人工地層の下位に厚さ約0.5mの沖積層下部があり,その下位は下総層群である.一方,地震観測点から噴砂地点へ向かうにつれて,人工地層の厚さに変化はないものの,沖積層は徐々に厚くなり噴砂地点では約11mとなる.
液状化-流動化に関して:液状化-流動化の判定は,風岡ほか(1994)・風岡(2003)に基づき判断した.埋立アソシエーションの下部・中部の大部分では葉理が不明瞭ないし消失しており,この部分が地震時に液状化-流動化したものと考えられる.地震観測点では人工地層の下位の軟弱な沖積層はごく薄いものの,噴砂が見られた付近では厚く,この沖積層部分で地震動が増幅し震度5弱を超え,人工地層が液状化-流動化したものと推定される.
引用文献:
千葉県環境研究センター,2011,千葉県環境研究センター報告,G-8, 3-1~3-25.
風岡 修ほか,1994,日本地質学会第101年総会・討論会 講演要旨,125-126.
風岡 修,2003,液状化・流動化の地層断面.アーバンクボタ40号,5-13.
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