講演情報

[G1-O-4]ハイパースペクトルイメージングによるスメクタイトの含有量判定技術の開発:実現可能性の評価

*吉河 秀郎1、長谷 陵平2、淡路 動太2、中川 清森3、清水 桜3、大竹 翼4、奈須野 恵介4 (1. 清水建設(株) 技術研究所、2. 清水建設(株) 土木技術本部、3. (株)地圏総合コンサルタント、4. 北海道大学大学院工学研究院)
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キーワード:

スメクタイト含有量、ハイパースペクトルイメージング、AI、山岳トンネル

山岳トンネル建設現場では,掘削対象の地山に膨潤性粘土鉱物であるスメクタイトが多量に含まれる場合,工事中に大きなトンネル内空変位が発生することが多い.その変位を抑制するために,切羽近傍で支保部材を用いてトンネル断面を早期にリング状に閉合する早期断面閉合がしばしば採用される.またトンネル供用後,トンネル周辺地山の劣化により盤ぶくれ等の変形が生じ,対策工の施工が余儀なくされることがある.このようなリスク予測や対策工のため,トンネル施工中に先進ボーリングを行い,室内試験を実施し,スメクタイト含有量が20%より多いか少ないかで境界をもうけ,評価・対策検討が行われることが多い1).しかし,スメクタイト含有量を算出するためのXRDを用いた試験は結果が出るまでに比較的長期間を要するので,それにより対策工の検討に遅延が生じる場合もある.そこで著者らは,より早期にその含有量を測定できる技術の構築を目的として,ハイパースペクトルカメラにより撮影したデータ(Hyperspectral Imaging: 以下,HSI)を用いた技術開発に着手した2).以下にその概要を述べる.
 本研究で扱う試料は,山岳トンネル建設工事の某現場において先進ボーリングにより採取された砂岩・凝灰岩である.当該現場の地山には,続成作用によって形成されたと考えられるスメクタイトが広範囲に含有することが施工中の試料採取・分析により分かっている.コア試料から色の異なる部分(灰色・黒色)で30試料を採取し,それぞれ粉末状にし,HSIによるスペクトルデータを取得した.また,本研究では,スペクトルデータからスメクタイト含有量を算出するために,複数のAI学習アルゴリズムで試行し最も高精度と判断できるAIモデルを用いた.上記30試料の近傍における別試料(別試料:上記30試料と同一のボーリング結果であるが,サンプリング位置が異なる.しかし,コア全体の岩相構成から分類基準になると判断した試料である.)のXRD定量分析によるスメクタイト含有量をおもな判断基準として,含有量が20%以上か以下かで試料を分別して,AIモデルの学習データ(18サンプル)と,AIモデルに判定させるデータ(12サンプル)を準備した.
 AI判定の結果,今回のような同じ現場で採取されたほぼ同一の岩相の粉末試料の場合,20%を境界としたスメクタイト含有量について,学習したAIモデル(SVM)は90%以上の正解判定を出すことできた.今後は,異なる岩相,異なる成因(続成作用・変質作用),異なる状態の試料(大小様々な岩片,コア試料)に対してスメクタイト含有量の分類が本手法により可能か評価を行い,汎用性の高い技術開発を進めていく予定である.

参考文献
1)独立行政法人鉄道建設・運輸支援機構(2008):新幹線の山岳トンネルにおけるインバートの設計・施工の進め方について(暫定案).
2)長谷ほか(2024,投稿中):ハイパースペクトルカメラを使用したスメクタイト含有量判定可能性の評価,土木学会第79回年次学術講演会 講演要旨集.

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