講演情報
[T13-O-12]白亜紀後期〜中新世の道央〜日高沖〜三陸沖前弧〜前縁堆積盆の変遷と堆積システム変化
*高野 修1 (1. 石油資源開発技術研究所)
キーワード:
道央〜日高沖〜三陸沖堆積盆、前弧堆積盆、前縁堆積盆、堆積システム、白亜紀〜中新世
<目的と手法> 空知-蝦夷帯とその南方延長に相当する北海道道央石狩〜日高海岸〜日高沖〜三陸沖の南北狭長ゾーンは,東北日本弧の前弧として,白亜紀以降,前弧堆積盆が断続的に発達し,中新世には千島弧西進により一部が前縁盆地化した。本講演では,同ゾーンにおける白亜紀後期から中新世にかけての堆積盆の変遷と堆積盆内部の堆積システムの変化を概観し,後背テクトニクスの考察を行う。
<白亜紀後期> 白亜紀後期の空知-蝦夷帯では,浅海〜斜面〜海底扇状地システムを主体とする蝦夷層群の前弧堆積盆が発達した一方,分布トレンドが西にシフトする形で日高沖〜三陸沖には河川〜内湾システムを主体とする南北方向に狭長な前弧堆積盆が発達していた。日高沖〜三陸沖の前弧堆積盆は,外洋的な蝦夷層群と異なり,外縁隆起帯(trench slope break: TSB)が隆起してリッジを形成した閉鎖的前弧堆積盆(Dickinson, 1995; Takano et al., 2013)であり,分布トレンドの差異ともども,両者の連続性に関して大きな問題点が残っている。
<暁新世〜中期始新世> 後期暁新世〜前期始新世には道北〜道央〜三陸沖の間に,分断された小堆積盆群が発生し,消長を繰り返した。これらの堆積盆ではいずれも夾炭河川〜エスチュアリー〜内湾〜浅海システムが発達していた(安藤, 2005; Takano and Tsuji, 2017)。中期始新世には,道央から三陸沖まで堆積盆が断続的に連なり,石狩層群が堆積した。この堆積盆は,道央で夾炭河川〜潮汐内湾システム(Takano and Waseda, 2003)を,日高沖〜三陸沖で内湾システムを主体としており,白亜紀の日高沖〜三陸沖同様,TSB隆起の閉鎖的前弧タイプである。この期の前弧堆積盆には横ずれの影響によるセグメント化や差別的沈降が見られる(夕張・空知亜堆積盆など;Takano and Waseda, 2003; Takano et al., 2013)。
<後期始新世〜漸新世初期> 道央から三陸沖まで,依然TSB隆起の閉鎖的前弧セッティングであったが,相対的海水準上昇により堆積盆央は泥質海成堆積物で占められ,泥質内湾システムが主体となっている(幌内層の堆積)。
<漸新世> 始新世に始まる右横ずれ運動はこの期にピークを迎え,道央〜道北では南長沼層のプルアパート堆積盆が複数形成されるとともに,日高沖〜三陸沖ではTSBの圧縮隆起を引き起こし,3枚の漸新世不整合(Ounc)の形成をもたらした(Itoh et al., 2014; Takano, 2017)。
<後期漸新世~前期中新世> 日高沖〜三陸沖では,隆起削剥を受けたTSBが大々的に沈降して外洋環境となるが,西の島弧側からの砕屑物供給が続くため,大規模なデルタシステムが形成された。
<前期〜中期中新世> 道央〜日高沖では,小規模リフト群と中新世不整合(Munc)の形成後,千島弧前弧スリバー西進に伴う日高ブロックの衝上により前縁盆地が形成される。粗粒砕屑物が供給され,複数のスラストに規制されて階段状に並列したトラフ状堆積盆を粗粒タービダイトが埋積した(川端層・振老層; Kawakami, 2013; 加瀬ほか, 2018)。日高沖では,フォアディープを埋積する多段階の海底扇状地システムが発達した。一方,三陸沖では,TSBの沖合シフトとさらなる沈降により斜面型前弧堆積盆となり,泥質斜面システムが主体となった。
<文献> 安藤寿男, 2005, 石油技協誌, 70, 24-36; Dickinson, W., 1995, In Tectonics of Sedimentary Basins, Blackwell, 221–261; Itoh, Y. et al., 2014, Prog. Earth Planet. Sci., 1, 6; Kawakami, G., 2013, In Mechanism of Sedimentary Basin Formation, InTech, 131-152; Takano, O. and Waseda, A., 2003, Sediment. Geol., 160, 131-158; Takano, O. et al., 2013, In Mechanism of Sedimentary Basin Formation, InTech, 3-25; Takano, O., 2017, In Dynamics of Arc Migration and Amalgamation –Architectural Examples from the NW Pacific Margin, InTech, 1-24; Takano, O. and Tsuji, T., 2017, Island Arc, 26, e12184; 加瀬善洋ほか, 2018, 地質雑, 124, 627-642.
<白亜紀後期> 白亜紀後期の空知-蝦夷帯では,浅海〜斜面〜海底扇状地システムを主体とする蝦夷層群の前弧堆積盆が発達した一方,分布トレンドが西にシフトする形で日高沖〜三陸沖には河川〜内湾システムを主体とする南北方向に狭長な前弧堆積盆が発達していた。日高沖〜三陸沖の前弧堆積盆は,外洋的な蝦夷層群と異なり,外縁隆起帯(trench slope break: TSB)が隆起してリッジを形成した閉鎖的前弧堆積盆(Dickinson, 1995; Takano et al., 2013)であり,分布トレンドの差異ともども,両者の連続性に関して大きな問題点が残っている。
<暁新世〜中期始新世> 後期暁新世〜前期始新世には道北〜道央〜三陸沖の間に,分断された小堆積盆群が発生し,消長を繰り返した。これらの堆積盆ではいずれも夾炭河川〜エスチュアリー〜内湾〜浅海システムが発達していた(安藤, 2005; Takano and Tsuji, 2017)。中期始新世には,道央から三陸沖まで堆積盆が断続的に連なり,石狩層群が堆積した。この堆積盆は,道央で夾炭河川〜潮汐内湾システム(Takano and Waseda, 2003)を,日高沖〜三陸沖で内湾システムを主体としており,白亜紀の日高沖〜三陸沖同様,TSB隆起の閉鎖的前弧タイプである。この期の前弧堆積盆には横ずれの影響によるセグメント化や差別的沈降が見られる(夕張・空知亜堆積盆など;Takano and Waseda, 2003; Takano et al., 2013)。
<後期始新世〜漸新世初期> 道央から三陸沖まで,依然TSB隆起の閉鎖的前弧セッティングであったが,相対的海水準上昇により堆積盆央は泥質海成堆積物で占められ,泥質内湾システムが主体となっている(幌内層の堆積)。
<漸新世> 始新世に始まる右横ずれ運動はこの期にピークを迎え,道央〜道北では南長沼層のプルアパート堆積盆が複数形成されるとともに,日高沖〜三陸沖ではTSBの圧縮隆起を引き起こし,3枚の漸新世不整合(Ounc)の形成をもたらした(Itoh et al., 2014; Takano, 2017)。
<後期漸新世~前期中新世> 日高沖〜三陸沖では,隆起削剥を受けたTSBが大々的に沈降して外洋環境となるが,西の島弧側からの砕屑物供給が続くため,大規模なデルタシステムが形成された。
<前期〜中期中新世> 道央〜日高沖では,小規模リフト群と中新世不整合(Munc)の形成後,千島弧前弧スリバー西進に伴う日高ブロックの衝上により前縁盆地が形成される。粗粒砕屑物が供給され,複数のスラストに規制されて階段状に並列したトラフ状堆積盆を粗粒タービダイトが埋積した(川端層・振老層; Kawakami, 2013; 加瀬ほか, 2018)。日高沖では,フォアディープを埋積する多段階の海底扇状地システムが発達した。一方,三陸沖では,TSBの沖合シフトとさらなる沈降により斜面型前弧堆積盆となり,泥質斜面システムが主体となった。
<文献> 安藤寿男, 2005, 石油技協誌, 70, 24-36; Dickinson, W., 1995, In Tectonics of Sedimentary Basins, Blackwell, 221–261; Itoh, Y. et al., 2014, Prog. Earth Planet. Sci., 1, 6; Kawakami, G., 2013, In Mechanism of Sedimentary Basin Formation, InTech, 131-152; Takano, O. and Waseda, A., 2003, Sediment. Geol., 160, 131-158; Takano, O. et al., 2013, In Mechanism of Sedimentary Basin Formation, InTech, 3-25; Takano, O., 2017, In Dynamics of Arc Migration and Amalgamation –Architectural Examples from the NW Pacific Margin, InTech, 1-24; Takano, O. and Tsuji, T., 2017, Island Arc, 26, e12184; 加瀬善洋ほか, 2018, 地質雑, 124, 627-642.
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