講演情報

[T13-O-17]南オーストラリア州の土壌中で沈殿するドロマイトの産状

*佐久間 杏樹1、狩野 彰宏1、高島 千鶴2、村田 彬1、山口 飛鳥3、奥村 大河1、長島 佳菜4、久保田 好美5 (1. 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2. 佐賀大学教育学部、3. 東京大学大気海洋研究所、4. 海洋研究開発機構地球表層システム研究センター、5. 国立科学博物館)
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キーワード:

土壌成炭酸塩、ドロマイト、南オーストラリア

土壌成炭酸塩とは、蒸発の盛んな乾燥地域の土壌中で間隙水から沈殿する炭酸塩であり、様々な年代・地域の土壌中で、ノジュールや層状カルクリートといった形態で産出する。多くの場合、土壌成炭酸塩の主要な構成鉱物はカルサイトであるが、ドロマイトも沈殿することが知られている(例:Kearsey et al., 2012)。地質年代の試料では続成の影響を考慮する必要があるので、その沈殿メカニズムを明らかにするためには第四紀に沈殿した土壌成炭酸塩の観察が重要だが、その研究例は限られている (Capo et al., 2000)。第四紀の土壌成炭酸塩に関する先行研究では主に苦鉄質な成分を持つ火山岩や凝灰岩を母岩とする土壌成炭酸塩について記載されており、堆積岩や変成岩等を母岩とする土壌炭酸塩については詳細な報告がされていない。ドロマイトは熱力学的に安定して存在しうる鉱物であるが、自然環境を模した実験室での合成が非常に困難な鉱物であり、合成には微生物活動や高温条件が必要とされており(例:Gregg et al., 2015)、土壌成ドロマイトの産状の観察は沈殿形態やメカニズムの解明の手掛かりとなりうる。本研究では、南オーストラリア州の異なる母岩を持つ3地点の土壌プロファイルを調査し、第四紀の土壌成炭酸塩試料を採取した。採取した試料は偏光顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察し、元素分析や鉱物組成の同定、炭素・酸素同位体比の局所分析を行った。全岩のXRD分析の結果から、カルサイト、ドロマイト、石英、長石類が主な構成鉱物であることが分かった。研磨スラブを用いたµXRF分析、µXRD分析や電子顕微鏡観察から、ドロマイトを含む石灰岩を母岩とする土壌中で沈殿した炭酸塩は母岩粒子に対して被膜上に沈殿した部分に、母岩由来の砕屑性ドロマイト粒子が取り込まれ、再成長している様子が見られた。砂岩を母岩とする土壌中で沈殿した土壌成炭酸塩試料では、カルサイトが多くみられる部分ではドロマイトの沈殿は見られず、砕屑粒子の周囲の粘土鉱物が集積した部分でドロマイトの菱面体結晶が沈殿しており、粘土鉱物の存在がドロマイトの沈殿に影響している可能性があると解釈される。クォーツァイトを母岩とする土壌中で沈殿した土壌成炭酸塩試料では、砕屑物粒子の間にマグネシウムを含んだ粘土鉱物もしくは非晶質ケイ酸塩と共にドロマイトが沈殿していることが分かった。土壌が発達して際に、間隙水中のシリカ濃度が比較的高くなったことで、ドロマイトの沈殿が促進された可能性があると考えられる。今後、鉱物組成や間隙水元素濃度の土壌プロファイル中の深度分布や炭酸塩の沈殿年代を調べることで、詳しく沈殿メカニズムの推定を行うことが出来ると期待される。
Kearsey, T., Twitchett, R. J., & Newell, A. J. (2012). Geological Magazine, 149(2), 291–307.
Capo, R. C., Whipkey, C. E., Blachère, J. R., & Chadwick, O. A. (2000). Geology, 28(3), 271–274.
Gregg, J. M., Bish, D. L., Kaczmarek, S. E., & Machel, H. G. (2015). Sedimentology, 62(6), 1749–1769.

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