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[T13-O-18]三重県産石筍の安定酸素・炭酸凝集同位体組成に記録された83 ka以降の気温・降水共変動史復元

*加藤 大和1、森 大器2、仙田 量子3、狩野 彰宏4 (1. 帝京科学大学 教育人間科学部、2. 中央開発株式会社、3. 九州大学比較社会文化研究院、4. 東京大学大学院理学系研究科)
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キーワード:

石筍、古気温、古降水、炭酸凝集同位体、古気候

発表者らは、鍾乳洞内に発達する石筍から過去の気温変化や降水の変化を読み解く研究をおこなっている。日本の気候はアジアモンスーンの影響を強く受け、夏季には太平洋側から、冬季には日本海側から降水のソースとなる水蒸気がもたらされる。日本では一般に、夏季モンスーンによってもたらされる夏季の降水の酸素同位体が高く、冬季モンスーンによる冬季の降水は低い酸素同位体比を持つ。石筍の酸素同位体比は、降水の同位体組成を反映するばかりでなく、沈澱時の温度と負の相関関係にある。発表者らは、石筍の酸素同位体比に含まれる両者の情報を定量的に分離するため、炭酸凝集同位体温度計の原理を併用し、日本における気温と降水現象の共進化過程の復元してきた(Kato et al., 2021QSR; 2023CG)。
凝集同位体とは、結合エネルギーの強い重い元素(同位体)同士が結合した分子であり、その存在度は各同位体がランダムに結合した場合に予測計算される存在度より僅かに大きくなる。この差分が生成温度と負の相関を持つことから、凝集同位体は温度指標となる。
本研究では三重県産の石筍KA03(5.2–13.2,22.6–83.4 ka: Mori et al., 2018)の60層準以上から炭酸凝集同位体(Δ47値)の測定を行い、陸上古気温と古降水の共変動過程の復元を行なった。本研究ではKato et al. (2021QSR; 2023CG) の広島県・岐阜県産石筍の記録より長期の古気候データを提示し、ハインリッヒイベントH2–7に対応する周期的な寒冷化イベントやヒプシサーマル期をピークとした完新世の温暖化を復元したことに加え、陸域の気温変化に対応した降水現象の変動も復元することができた。
最終氷期(更新世後期)の降水酸素同位体比は現在(完新世)より低い値であり、ハインリッヒ氷期やヒプシサーマルの温暖期のような数百年規模の寒冷化/温暖化現象に対応して、地域の平均的な降水酸素同位体比が変動してきたことも明らかになった。これらの事実は、Kato et al. (2021QSR; 2023GJ) によってすでに報告された他地域のデータとも同調的であり、本邦陸域において広範に見られる、数百年スケール温暖化や寒冷化の気候ステージに対応した夏季/冬季アジアモンスーンの交互的盛衰を反映したものであると結論づけられる。

References
Kato H, Amekawa S, Hori M, Shen C-C, Kuwahara Y, Senda R, Kano A, 2021. Influences of temperature and the meteoric water δ18O value on a stalagmite record in the last deglacial to middle Holocene period from southwestern Japan. Quaternary Science Reviews 253, 106746.Kato H, Mori T, Amekawa S, Wu C-C, Shen C-C, Kano A, 2023. Coevolutions of terrestrial temperature and monsoonal precipitation amounts from the latest Pleistocene to the mid-Holocene in Japan: Carbonate clumped isotope record of a stalagmite. Chemical Geology 622, 121390.Mori T, Kashiwagi K, Amekawa S, Kato K, Okumura T, Takashima C, Wu C-C, Shen C-C, Quade J, Kano A, 2018. Temperature and seawater isotopic controls on two stalagmite records since 83 ka from maritime Japan. Quaternary Science Reviews 192, 47−58.

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