講演情報

[T8-P-3]一般市民の防災リテラシー向上に向けた地方公設試験研究機関の取り組み(その2)

*小田原 啓1、本多 亮1、長岡 優1 (1. 神奈川県温泉地学研究所)
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キーワード:

防災リテラシー、活断層、地震防災、三浦半島

文部科学省では、令和5年度より3か年計画で「三浦半島活断層群(主部/武山断層帯)における重点的な調査観測」(研究代表者:東京大学地震研究所 石山達也准教授、参画機関:東京大学地震研究所、防災科学技術研究所、神奈川県温泉地学研究所)が実施しており、温泉地学研究所はサブテーマ4「地域連携勉強会」を主として担当している。地域連携勉強会を通じて調査観測の成果を示すとともに、地震防災に対する課題やニーズを吸い上げることを目指すため、地方自治体やライフライン事業者との連携が不可欠である。そこで、まず本事業に対する理解を得るため、三浦半島活断層調査会定例会、神奈川県くらし安全防災局、神奈川県の県・市町村災害対策等検討会において事業説明を実施した。事業説明に併せて、自治体担当者を対象として地域連携勉強会についてのアンケートを実施した。また、ライフライン事業者に対してはメールにて同様のアンケートを送付した。アンケートは地域連携勉強会を実施するにあたって、担当者のニーズを把握することを目的とし、地震防災に関する一般的な質問と地域連携勉強会の実施方法についての質問を設けた。アンケートの結果を見ると、いくつか重要な課題があることがわかった。地震調査研究推進本部や内閣府などが発表する情報は地震防災対策を考える際の基礎的な情報として認識されている一方、内容が難解で理解に時間がかかる、情報量が多く必要な情報の選択が難しいといった意見が見られた。また、事業者によっては特定の地域(線区など)で解像度の高い情報を必要とすることがわかる。強震動予測や断層位置など、解析手法や調査地域における様々な制約から分解能に限界がある場合には、丁寧に説明する必要がある。今後の勉強会の方向性については、形式としては講演会や意見交換会、報告書といった形での情報共有の希望が多かった。ただし、内容としては単なる事業の成果報告ではなく、関東地域の地震や断層などより基礎的な部分を知りたいとの要望もあった。こういった結果を踏まえると、既存の事業成果は必ずしも理解しやすい、あるいは使いやすいものとなっていない可能性があることから、本事業での成果の情報共有を行う際には、受け取る側が理解しやすいような工夫をすることが重要である。次に、本事業において構造探査がどのように行われるかを実際に見てもらい、具体的なイメージを持って理解を深めてもらうため、自治体担当者やライフライン事業者を対象として横須賀市武山において人工地震探査の現地見学会を実施した。参加者は地元自治体やライフライン事業者の5機関6名であった。現地見学会では、最初に石山准教授に本調査観測が三浦半島断層群 (主部/武山断層帯)の長期評価と強震動予測の高度化に資することや、反射法地震探査の概念と活断層のイメージングの方法、調査の概要(期間、測線、振源等)について説明していただき、起振車が実際に地面を叩いて振動を起こす様子や、受振点の設置状況を見学してもらった。参加者からは断層帯の長期評価が時空間的にどの程度高度化されるのかという質問があったほか、今回の調査結果が地震被害想定にどのように関係するのか興味を持ったという感想や、来年度以降も現地見学会を継続してほしいという要望が寄せられ、本調査観測に対する興味や理解が深まった手応えが得られた。令和6年度は7月末に自治体防災担当者及びライフライン事業者に向けた本事業の進捗状況を説明する講演会の開催を予定しており、さらに自治体やライフライン事業者だけではなく学校現場の地震防災教育に関するニーズを捉えるために教職員向けのアンケート調査を実施している。本講演ではその結果についても概報したい。

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