講演情報

[T12-P-3]地球観測衛星を用いた漂流軽石の監視技術

*石毛 康介1、竹内 晋吾1、上澤 真平1、土志田 潔1、 諏訪 由起子2 (1. 一般財団法人 電力中央研究所、2. 株式会社セレス)
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キーワード:

軽石、衛星、福徳岡ノ場、火山

2021年の福徳岡ノ場噴火により大量の漂流軽石が発生し、広範囲に漂着した。漂流軽石は船舶の航行や港湾の重要インフラに重大な影響を与える可能性があり、その監視が重要である。地球観測衛星は地球表面を広範囲かつ高頻度で観測できるため、漂流軽石の監視に適している。このようなことから、漂流軽石の発生を伴った2012年のハブレ噴火や2019年のトンガ海底火山噴火、2021年の福徳岡ノ場噴火において、地球観測衛星を用いた漂流軽石の観測が行われ、その有効性が示された(例えば、Jutzeler et al.,2014)。以前は、このような地球観測衛星のデータを利用できるユーザーが限られ、かつ扱うには高度に専門的な知識が必要であった。しかし、2000年代以降、公共衛星の整備とデータのオープン&フリー化が進み、さらに近年ではクラウドコンピューティングサービスを活用したGIS(地理情報システム)プラットフォーム(例:Sentinel-hub)が整備され、衛星画像解析のハードルが下がった。しかし、地球観測衛星を用いた漂流軽石の観測及び監視が広く一般的になるためには、その手順を整理し示すことが重要である。
本研究では、地球観測衛星を用いた漂流軽石の監視技術を検討し、その手法をまとめたのでここに報告する。
まず、Sentinel-3やLandsatシリーズなどの光学衛星のデータは、高解像度の疑似カラー画像を簡便に生成でき、かつ海上の漂流軽石の識別が容易である。一方、Sentinel-1やALOS-2衛星等に搭載されるSAR(合成開口レーダー)はデータ処理や漂流軽石の識別がやや難しいが、天候に左右されない観測が可能である。これらの地球観測衛星について整理したうえで、近年発生したトンガ海底噴火(2019年)、福徳岡ノ場噴火(2021年)、フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ(2022年)、硫黄島(2023年)に伴い発生した漂流軽石を対象に、スペクトル特性や疑似カラー画像における特徴を示し、その判別方法を整理した。また、福徳岡ノ場由来の漂流軽石については漂流軽石の分布と動きを詳細に解析し、結果として、衛星観測データを用いることで高い精度で漂流軽石の位置と拡散を把握できることを確認した(図1)。
技術的課題としては、解析作業の効率化や自動化が挙げられるが、これについては別報(石毛・諏訪、2024地質学会)で紹介する。これらの取り組みにより、衛星を用いた漂流軽石の監視がより一般的になることを目指す。
【参考文献】
石毛・諏訪,2024.機械学習と衛星データを用いた福徳岡ノ場2021年噴火の漂流軽石の検出および追跡手法の高度化.地質学会山形大会
Jutzeler, M., et al., 2014. On the fate of pumice rafts formed during the 2012 Havre submarine eruption. Nat. Commun. 5, 3660.

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