講演情報
[T18-P-1]石川県珠洲市若山町に見られる線状の地表変状と地すべりの関係
*須内 寿男1、西川 徹1、北村 暢章1、上野 将司1 (1. 株式会社第一コンサルタンツ)
キーワード:
令和6年能登半島地震、撓曲、地震断層、地すべり、活褶曲
令和6年能登半島地震に伴って,珠洲市若山町において上下変位を伴う線状の地表変状が複数確認された(吉田,2024など).2024年4月7日に実施した現地慨査の結果,これらの地表変状のうち若山町中地区に出現した1条は,地震による地すべり活動が,その形成に関与している可能性があると考えられる.この地表変状は,同地区において,塚脇(2024)が地すべりに伴うものとしている地表変状とは別のものである.
複数の地表変状は,南北を比高50~200m程度の丘陵地にはさまれた狭小な谷低平野を東方に流下する若山川沿いに分布する.地表変状の多くは,耕作地の落差2m程度までの垂直変位を伴う(以下,撓曲と呼ぶ).撓曲に認められる次の現象により,これらの撓曲は概ね南北方向の圧縮により形成されたと推定される.すなわち,①地表変状をまたぐ電線の垂れ下がりが大きいこと,②地表変状が河川を横断する場合,護岸のブロック積擁壁が傾斜約10°の破断面に沿って,河川方向に短縮されている箇所があること.これらの撓曲の平面的な移動方向(以下,フェルゲンツと呼ぶ)は撓曲毎に異なり,南あるいは北を示す.
南北の丘陵地には,谷低平野との境界付近を末端とする多数の地すべり地形が認定されている(清水ら,2001).これらのうち,北側の丘陵に位置し,若山川の北岸に末端部を有する地すべりブロックは,①末端部の押し出しを示唆する縦水路の浮き上がり,②若山川に架橋された床版橋の山側の沈下,③平野側への押し出しを示唆する平野側橋台と護岸擁壁のすき間,④地すべり頭部での複数の開口亀裂の存在等から,地震により再活動した可能性が高い.
若山川南岸で,若山川に併走する東西方向の地表変状は,耕作地および農道の撓曲を伴い,フェルゲンツは南,すなわち地すべりの概ねの移動方向である.その延長は150m以上,最大高さ1.2mであり,撓曲を横断する農道付近では0.6~1m程度の右横ずれを示す.この右横ずれは,地すべりの移動方向が南南東方向とみられることと整合的である.高さが最大となるのは平野側に押し出しを受けた可能性のある橋梁付近であり,その上下流では徐々に高さを減じている.
以上より,この地表変状は,地震による地すべりブロックの再活動により形成された,地すべり末端部の変位である可能性がある.
<引用文献>
清水文健ら( 2001) 防災科技研研究資料第210号
塚脇真二( 2024)https://janet-dr.com/050_saigaiji/2024/240325/noto3_2_2_tsukawaki.pdf
吉田一希(2024) https://www.gsi.go.jp/common/000254854.pdf
複数の地表変状は,南北を比高50~200m程度の丘陵地にはさまれた狭小な谷低平野を東方に流下する若山川沿いに分布する.地表変状の多くは,耕作地の落差2m程度までの垂直変位を伴う(以下,撓曲と呼ぶ).撓曲に認められる次の現象により,これらの撓曲は概ね南北方向の圧縮により形成されたと推定される.すなわち,①地表変状をまたぐ電線の垂れ下がりが大きいこと,②地表変状が河川を横断する場合,護岸のブロック積擁壁が傾斜約10°の破断面に沿って,河川方向に短縮されている箇所があること.これらの撓曲の平面的な移動方向(以下,フェルゲンツと呼ぶ)は撓曲毎に異なり,南あるいは北を示す.
南北の丘陵地には,谷低平野との境界付近を末端とする多数の地すべり地形が認定されている(清水ら,2001).これらのうち,北側の丘陵に位置し,若山川の北岸に末端部を有する地すべりブロックは,①末端部の押し出しを示唆する縦水路の浮き上がり,②若山川に架橋された床版橋の山側の沈下,③平野側への押し出しを示唆する平野側橋台と護岸擁壁のすき間,④地すべり頭部での複数の開口亀裂の存在等から,地震により再活動した可能性が高い.
若山川南岸で,若山川に併走する東西方向の地表変状は,耕作地および農道の撓曲を伴い,フェルゲンツは南,すなわち地すべりの概ねの移動方向である.その延長は150m以上,最大高さ1.2mであり,撓曲を横断する農道付近では0.6~1m程度の右横ずれを示す.この右横ずれは,地すべりの移動方向が南南東方向とみられることと整合的である.高さが最大となるのは平野側に押し出しを受けた可能性のある橋梁付近であり,その上下流では徐々に高さを減じている.
以上より,この地表変状は,地震による地すべりブロックの再活動により形成された,地すべり末端部の変位である可能性がある.
<引用文献>
清水文健ら( 2001) 防災科技研研究資料第210号
塚脇真二( 2024)https://janet-dr.com/050_saigaiji/2024/240325/noto3_2_2_tsukawaki.pdf
吉田一希(2024) https://www.gsi.go.jp/common/000254854.pdf
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