講演情報
[G-P-22]蔵王火山周辺の湖水・湧水からのマグマ起源希ガス同位体小異常の観測
*佐藤 佳子1,3、熊谷 英憲2,3、岩田 尚能4、後藤 章夫5、伴 雅雄4 (1. 桜の聖母短期大学、2. 学習院女子大学、3. 海洋研究開発機構、4. 山形大学理学部、5. 東北大学東北アジア研究センター)
キーワード:
蔵王火山,湖水,温泉,湧水,希ガス、湖水、温泉、湧水、希ガス
蔵王火山は、東北日本火山フロントに位置し,約100万年前から活動を始め,現在まで活動を維持している。約3.5万年前より始まった蔵王火山の最新期活動では,珪長質のマグマだまりへの苦鉄質マグマの混合によって生成された玄武岩質安山岩~安山岩混合マグマが活動していることが最近の岩石学的研究によって示されている(e.g. Takebe and Ban, 2021)。このようなマグマ供給系では,深部からの苦鉄質マグマの注入がマグマだまりの活動の活発化をもたらすため,マントルに由来する成分の寄与を正確に推定することが重要である。東北地方太平洋沖地震以降,活発になっている火山活動の監視の観点からは,より短期的なマグマだまりの活動度の変動を観測できるデータが望まれている。
2014年10月から火口湖であるお釜に変色(Fig.1)が見られるなどの活動の活発化がみられたことから(山形大・理,産総研, 2014),蔵王周辺の湖水(蔵王御釜)・湧水・温泉水について,試料水を採取し希ガスの同位体比と元素存在度を測定した。試料は,ヘリウム,ネオンの同位体比について,かみのやま温泉ガスの標準試料や希ガス同位体スタンダードHESJなどとの比較検討を行った。かみのやま温泉ガスの標準試料については,1983年に山形大学の年代・希ガスのグループで採取し,希ガス同位体を分離精製したものであり(e.g. 高岡,1985),海洋研究開発機構で保持する大気標準試料とあわせ,数少ない東北地方太平洋沖地震前のデータとしても重要である。
松中ほか(2019)によると、火山活動との関連が疑われる2014年10月の火口湖白濁現象に起因する火口湖と地熱帯におけるヨウ素同位体比の変化は,火山活動と関連している可能性がある。これは2014年8月と10月に起こった火山活動の活発化に伴って,低い同位体比をもつヨウ素が地下から地熱帯と火口湖へ多く供給されたためと考えられている。
希ガス同位体測定は,海洋研究開発機構に設置されている GV Instruments 製 GVI-5400He を用いて行った。試料の大気混入率を下げるため,水に含まれる希ガスを逃さないよう注意深くチャンバー内に導入し,測定に用いた。また,今回,海底資源探査などの環境水分析測定のための,前処理分析システム(Kumagai et al., 2017; Sato et al., 2019; 佐藤・熊谷,特許2020;Sato & Kumagai,EU国際特許2024)を使用して,測定前の希ガス精製前処理を行った。この希ガス前処理システムについては,硫黄や塩素などを含む温泉水や環境水から希ガス同位体分離の際に超高真空~極高真空中において,質量分析装置内の妨害元素となる,硫黄やハロゲンガスなどを除去する効果があり,通常分析で妨害元素となる水蒸気をトラップするコールドトラップ,ハロゲンガスなどを除去するTi-Zrゲッターとともに使用している。He同位体比については,1983年のかみのやま温泉ガスを分析データのリファレンス(e.g. 高岡, 1985; Hanyu and Kaneoka, 1997; Kumagai, 1999; Tamura et al, 2005)とした。
He-Ne同位体比を用いて,湖水,温泉水などへのマグマからの寄与の検討を行った。He-Ne同位体比は大気とほぼ同じかと思われたが,わずかなマントル起源のガスの混入が示唆される有意な異常が認められた。本発表では蔵王周辺で採取された試料水のHe-Ne同位体に対するマグマ起源成分の寄与と,最新期火山の活動状況との関連を検討する。
引用文献:Takebe et al., (2021) Bull Volcanol 83, 12. 山形大・理,産総研(2014),第130回火山噴火予知連絡会1-2.高岡(1985),火山,185-195.松中ほか(2019),日本陸水学会第84回金沢大会. Sato et al. (2019), DINGUE 6th 2019. Kumagai et al. (2017), DINGUE 5th 2017.佐藤・熊谷(2020), ガス分析用前処理装置及びガス分析用前処理方法,特許第6765117号. Sato & Kumagai (2024),PREPROCESSING APPARATUS AND METHOD FOR GAS ANALYSIS, EP特許番号:EP3176578.Hanyu and Kaneoka (1997), Nature, 273-276.Kumagai (1999), 東京大学学位論文.Tamura et al., (2005), IFREE REPORT 2003, 1-5.
2014年10月から火口湖であるお釜に変色(Fig.1)が見られるなどの活動の活発化がみられたことから(山形大・理,産総研, 2014),蔵王周辺の湖水(蔵王御釜)・湧水・温泉水について,試料水を採取し希ガスの同位体比と元素存在度を測定した。試料は,ヘリウム,ネオンの同位体比について,かみのやま温泉ガスの標準試料や希ガス同位体スタンダードHESJなどとの比較検討を行った。かみのやま温泉ガスの標準試料については,1983年に山形大学の年代・希ガスのグループで採取し,希ガス同位体を分離精製したものであり(e.g. 高岡,1985),海洋研究開発機構で保持する大気標準試料とあわせ,数少ない東北地方太平洋沖地震前のデータとしても重要である。
松中ほか(2019)によると、火山活動との関連が疑われる2014年10月の火口湖白濁現象に起因する火口湖と地熱帯におけるヨウ素同位体比の変化は,火山活動と関連している可能性がある。これは2014年8月と10月に起こった火山活動の活発化に伴って,低い同位体比をもつヨウ素が地下から地熱帯と火口湖へ多く供給されたためと考えられている。
希ガス同位体測定は,海洋研究開発機構に設置されている GV Instruments 製 GVI-5400He を用いて行った。試料の大気混入率を下げるため,水に含まれる希ガスを逃さないよう注意深くチャンバー内に導入し,測定に用いた。また,今回,海底資源探査などの環境水分析測定のための,前処理分析システム(Kumagai et al., 2017; Sato et al., 2019; 佐藤・熊谷,特許2020;Sato & Kumagai,EU国際特許2024)を使用して,測定前の希ガス精製前処理を行った。この希ガス前処理システムについては,硫黄や塩素などを含む温泉水や環境水から希ガス同位体分離の際に超高真空~極高真空中において,質量分析装置内の妨害元素となる,硫黄やハロゲンガスなどを除去する効果があり,通常分析で妨害元素となる水蒸気をトラップするコールドトラップ,ハロゲンガスなどを除去するTi-Zrゲッターとともに使用している。He同位体比については,1983年のかみのやま温泉ガスを分析データのリファレンス(e.g. 高岡, 1985; Hanyu and Kaneoka, 1997; Kumagai, 1999; Tamura et al, 2005)とした。
He-Ne同位体比を用いて,湖水,温泉水などへのマグマからの寄与の検討を行った。He-Ne同位体比は大気とほぼ同じかと思われたが,わずかなマントル起源のガスの混入が示唆される有意な異常が認められた。本発表では蔵王周辺で採取された試料水のHe-Ne同位体に対するマグマ起源成分の寄与と,最新期火山の活動状況との関連を検討する。
引用文献:Takebe et al., (2021) Bull Volcanol 83, 12. 山形大・理,産総研(2014),第130回火山噴火予知連絡会1-2.高岡(1985),火山,185-195.松中ほか(2019),日本陸水学会第84回金沢大会. Sato et al. (2019), DINGUE 6th 2019. Kumagai et al. (2017), DINGUE 5th 2017.佐藤・熊谷(2020), ガス分析用前処理装置及びガス分析用前処理方法,特許第6765117号. Sato & Kumagai (2024),PREPROCESSING APPARATUS AND METHOD FOR GAS ANALYSIS, EP特許番号:EP3176578.Hanyu and Kaneoka (1997), Nature, 273-276.Kumagai (1999), 東京大学学位論文.Tamura et al., (2005), IFREE REPORT 2003, 1-5.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン