講演情報
[G-P-24]能登半島北西部赤神地域に分布する後期漸新世から前期中新世に活動したとされる玄武岩の地球科学的特徴
*高橋 俊郎1、柴野 暉崇2、橋本 優生3 (1. 新潟大学理学部地質科学プログラム、2. パシフィックコンサルタンツ、3. 新潟大学自然科学研究科)
キーワード:
後期漸新世、能登半島、玄武岩
北陸地域には漸新世から中新世にかけて形成された火山岩類が広く分布し,これらは日本海拡大に伴って形成されたと考えられている.能登半島には,漸新世から中新世に活動した火山岩類が広く分布しているが,各層の岩相が類似し,地質構造が複雑なため,活動時期が不明な火山岩類が少なく無い.能登半島北西部の赤神地域に分布する玄武岩溶岩および火砕岩類も,その活動時期は明らかにされておらず,岩相の類似性や累重関係から後期漸新世から前期中新世の間で活動したと推定されてきた.本報告では,この赤神地域に分布する玄武岩についての記載岩石学的特徴および岩石学的・地球科学的特徴を報告するとともに,それら特徴について周辺地域に分布する玄武岩類との比較を行った結果を報告する. -記載岩石学的特徴- 赤神地域の玄武岩は,カンラン石,単斜輝石,斜長石を主な斑晶としてもち,インターグラニュラー~インターサータル組織を呈す.最大で18vol%のカンラン石斑晶を含み,単斜輝石と斜長石はそれぞれ5vol%以下である.多くのカンラン石は粘土鉱物に変質しているが,未変質のカンラン石が認められることもある.カンラン石斑晶のFo値は最大で89を示し,単斜輝石のMg#は最大で87を示す. -全岩化学組成- SiO2は49-52wt%で,高いMgO(6-11wt%) ,低いTiO2(0.6-1.0wt%), K2O(0.3-1.0 wt%) を持つことで特徴付けられる.高いMgO含有量および低2れたと考えられる.N-MORB規格図では,赤神地域の玄武岩は典型的な島弧玄武岩のパターンを示し,東北日本弧の24-18Ma背弧側玄武岩類と火山フロント側玄武岩類(Shuto et al., 2015)との中間的なパターンを示す..-Sr-Nd同位体比- 87Sr/86Sr=0.70401-0.7042 ,143Nd/144Nd=0.5128-0.5129の組成範囲で,東北日本弧の24-18Ma玄武岩類の組成範囲の枯渇側と同様な組成範囲を示す. 赤神地域の玄武岩と,能登半島北部の他地域に産する後期漸新世から中期中新世に活動したと考えられている玄武岩類,例えば輪島地域に分布する後期漸新世の玄武岩(上松ほか,1995;Sato et al., 2015)や能登町周辺に分布する中新世の玄武岩類(柴野ほか, 2022)とを比較した.その結果,赤神地域の玄武岩は,輪島地域に分布する後期漸新世の玄武岩と非常に良く似た記載岩石学的特徴,岩石学的・地球科学的特徴を有していることが明らかとなった.柴田ほか(1981)は,輪島地域の安山岩から27.9-23.9MaのK-Ar年代値を報告し,上松ほか(1995)はそれら安山岩類に玄武岩が挟在されることから輪島地域の玄武岩もまた後期漸新世の活動で形成されたとしている.赤神地域の玄武岩と輪島地域の玄武岩の岩石学的特徴が類似していることは,赤神地域の玄武岩が後期漸新世に活動した,もしくは,後期漸新世から前期中新世にかけて同じような火成活動が間欠的に生じた,などの可能性を示唆していると考えられる. 引用文献上松ほか, 1995, 地質学論集, 44, 101-124柴野ほか, 2022, 日本鉱物学会2022年会柴田ほか, 1981, 岩鉱, 76, 248-252Shuto et al., 2015, Journal of Petrology, 56, 2257-2294
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