講演情報

[G-P-26]ラマン分光法による大東花崗閃緑岩の風化過程解析の試み

*壷井 基裕1、岡 祥司2、桃井 虹輝1 (1. 関西学院大学、2. 堀場テクノサービス)
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キーワード:

風化、ラマンイメージング、ケモメトリクス

ラマン分光法はラマン散乱を用いた分光法であり、分子振動に関する情報を得ることができる。近年ラマン分光法は様々な分野で用いられるようになってきており、地球科学分野でも岩石学・鉱物学を中心に数多くの研究がなされている。特に顕微レーザーラマンスペクトルを利用して微小領域における鉱物の同定や結晶性の評価などを行うことができる。また、微小領域分析を二次元に展開した顕微ラマンイメージングの手法により、マッピングを行うことができる。さらに得られたスペクトルデータについてケモメトリクスの手法で解析することにより、単一のスペクトルからは得ることが難しい様々な情報を得ることができるようになってきた。本研究ではこの手法の岩石の風化過程の研究への応用を試みた。研究対象とした岩石は花崗岩である。花崗岩類は西南日本に広く分布しており、近年これら花崗岩の風化に伴う土砂災害が多数発生している。花崗岩の風化過程ならびにそのメカニズムの研究はこれら土砂災害の側面からも大変重要であり、これまでにも様々な研究法により研究が行われてきた。本研究では、島根県雲南地域に分布する大東花崗閃緑岩をケーススタディとして研究を行った。大東花崗閃緑岩は島根県東部に分布しており、西南日本の花崗岩の分類においては山陰帯に属し(Ishihara, 1971)、角閃石黒雲母花崗閃緑岩から構成される。Rb-Sr鉱物全岩アイソクロン年代は54.4 ± 3.8 Ma (西田ほか, 2005)、ジルコンU-Pb年代は 56.62 ± 0.61 Ma(石原・谷, 2013)である。また、野口ほか(2021)により、産状や岩石記載ならびに全岩化学組成など、詳細な研究がなされている。本研究では大東花崗閃緑岩体から3地点において風化試料を採取した。同一地点において、その産状から風化程度を3段階に分けた。全岩化学組成分析は蛍光X線分析法により行った。主成分元素において、風化の進行に伴い、Al, Fe, Mg, Ca, Pが増加するとともに、Si, Kが減少する傾向がみられた。また、比較的新鮮な花崗岩と、風化した花崗岩に対して堀場製作所製の顕微レーザーラマン分光分析装置LabRAM Soleilにより顕微ラマン分光分析を行った。ケモメトリクス解析についてMCR法により抽出したローディングスペクトルから長石類、石英、チタン石、黒雲母の分布を可視化した。また、風化した花崗岩からは正長石、石英、マグネサイトまたはアナターゼ、チタン系鉱物、長石類、緑泥石類の分布を可視化することができた。

引用文献 Ishihara (1971)地質学雑誌, 77, 441-452; 石原・谷(2013)資源地質, 63, 11-14; 西田ほか(2005)地質学雑誌, 111, 123-140; 野口ほか(2021)地質学雑誌, 127, 461-478

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