講演情報
[G-P-30]島根県東部中新統古浦層に見られるインジェクタイトの特徴と成因
*波多野 瑞姫1、酒井 哲弥1、松尾 由鈴1 (1. 島根大学)
キーワード:
インジェクタイト、ペペライト、島根県中新統古浦層
島根県東部に分布する中新統古浦層・成相寺層からは,泥岩を基質とする基質支持の礫岩からなるインジェクタイトが見つかっている(酒井・松尾, 2023).ここでは岩床を構成するインジェクタイト,とくにそこに含まれる礫状の粒子の特徴を紹介し,その成因について考察する.
ここで対象とするインジェクタイトは,古浦層の最上部に見つかったものである.古浦層(20-18Ma)の上部は,河川や氾濫原堆積物などの陸成層・汽水湖の堆積物から構成される.日本海拡大に伴う本格的なリフティングの初期の堆積物である.その上位に重なる成相寺層(18-15Ma)の下部は,黒色頁岩や水中火山の噴出物・貫入岩を主体とした地層で,リフティングの最盛期に形成された地層である.この層準での砕屑性貫入構造は,古浦層に貫入し,成相寺層下部形成時に噴出したと思われる安山岩の分布域の周辺で見つかった.
今回,記載対象としたのは厚さ約2mの砕屑性岩床である.泥質な堆積物が境界部の上位にのめり込む産状を示すことから岩床と判断した.この地点の泥質な砕屑性貫入構造の内部は均質ではなく,局所的に見かけ上砂質になる部分や,礫が集中する部分がある.見かけ上砂質になる部分のサイズや形はさまざまである.基質には,堆積構造は見られない.岩床に含まれる細長い泥岩のクラストの配列等から,その内部には衝上断層様の構造がみられた.すなわち,それが停止した時には土石流と同様の挙動をしていたことが読み取れた.
礫は細礫から大礫までさまざまなサイズが含まれ,その長軸は同じ方向を向いている.この堆積物の中には,一部に特異な構造が見られた.とくに岩床の下部で,露頭表面では礫に見える部分(長径3 - 5cm)を取り出し,切断すると,一部を除き,それらは礫ではないことがわかった(以下,礫様の粒子と呼ぶ).礫様の粒子は多様な特徴をもつが,これまでの観察で確認されたものの特徴を述べる.まず特異な例として,表面付近の灰白色で流理様の構造,一部に塑性変形を示す部分(以下,殻部と呼ぶ)とその内部の堆積物部(コア部と呼ぶ)からなる粒子がある.殻部の灰白色の部分(厚さ0 - 3mm 程度)は砕屑物粒子を取り込んだ流紋岩と解釈される.コア部には細礫サイズの礫を含む含礫泥,砂粒子のみがあり,粒子間はセメントで充填された例が見つかった.殻部とコア部との境界はうねっており,礫様の粒子ができた時には殻部もコア部もどちらも流体的な特徴を持っていたことがわかった.このほか,コア部を凝灰岩クラストなどが占めるものなども見られた.露頭面でみかけ砂質に見える部分を取り出してその断面を観察すると,その内部には凝灰岩のクラストの他,上記のコア部を構成する円形から楕円形をした含礫泥岩部が円形の粒子様のものをつくり,粒子間を流紋岩(堆積物粒子を多く含む流紋岩も見られる)が埋める様子が見られた.すなわち,フルイダルペペライトの特徴が見られた.このことから,ここで観察されたインジェクタイトは,マグマが貫入した際に周囲の堆積物が液状化・流動化(thermal fluidization)がトリガーであると解釈される.上記で記載した礫様の粒子の成因は現段階では不明であり,より多くの粒子の観察に基づいてその成因を議論する予定である.
参考文献 酒井・松尾(2023)地質学会西日本支部講演要旨 O-17.
ここで対象とするインジェクタイトは,古浦層の最上部に見つかったものである.古浦層(20-18Ma)の上部は,河川や氾濫原堆積物などの陸成層・汽水湖の堆積物から構成される.日本海拡大に伴う本格的なリフティングの初期の堆積物である.その上位に重なる成相寺層(18-15Ma)の下部は,黒色頁岩や水中火山の噴出物・貫入岩を主体とした地層で,リフティングの最盛期に形成された地層である.この層準での砕屑性貫入構造は,古浦層に貫入し,成相寺層下部形成時に噴出したと思われる安山岩の分布域の周辺で見つかった.
今回,記載対象としたのは厚さ約2mの砕屑性岩床である.泥質な堆積物が境界部の上位にのめり込む産状を示すことから岩床と判断した.この地点の泥質な砕屑性貫入構造の内部は均質ではなく,局所的に見かけ上砂質になる部分や,礫が集中する部分がある.見かけ上砂質になる部分のサイズや形はさまざまである.基質には,堆積構造は見られない.岩床に含まれる細長い泥岩のクラストの配列等から,その内部には衝上断層様の構造がみられた.すなわち,それが停止した時には土石流と同様の挙動をしていたことが読み取れた.
礫は細礫から大礫までさまざまなサイズが含まれ,その長軸は同じ方向を向いている.この堆積物の中には,一部に特異な構造が見られた.とくに岩床の下部で,露頭表面では礫に見える部分(長径3 - 5cm)を取り出し,切断すると,一部を除き,それらは礫ではないことがわかった(以下,礫様の粒子と呼ぶ).礫様の粒子は多様な特徴をもつが,これまでの観察で確認されたものの特徴を述べる.まず特異な例として,表面付近の灰白色で流理様の構造,一部に塑性変形を示す部分(以下,殻部と呼ぶ)とその内部の堆積物部(コア部と呼ぶ)からなる粒子がある.殻部の灰白色の部分(厚さ0 - 3mm 程度)は砕屑物粒子を取り込んだ流紋岩と解釈される.コア部には細礫サイズの礫を含む含礫泥,砂粒子のみがあり,粒子間はセメントで充填された例が見つかった.殻部とコア部との境界はうねっており,礫様の粒子ができた時には殻部もコア部もどちらも流体的な特徴を持っていたことがわかった.このほか,コア部を凝灰岩クラストなどが占めるものなども見られた.露頭面でみかけ砂質に見える部分を取り出してその断面を観察すると,その内部には凝灰岩のクラストの他,上記のコア部を構成する円形から楕円形をした含礫泥岩部が円形の粒子様のものをつくり,粒子間を流紋岩(堆積物粒子を多く含む流紋岩も見られる)が埋める様子が見られた.すなわち,フルイダルペペライトの特徴が見られた.このことから,ここで観察されたインジェクタイトは,マグマが貫入した際に周囲の堆積物が液状化・流動化(thermal fluidization)がトリガーであると解釈される.上記で記載した礫様の粒子の成因は現段階では不明であり,より多くの粒子の観察に基づいてその成因を議論する予定である.
参考文献 酒井・松尾(2023)地質学会西日本支部講演要旨 O-17.
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