講演情報

[T11-O-2]北大西洋深海堆積物の全岩化学組成に基づくレアアース泥の分布および起源成分の考察

*高田 直翔1、安川 和孝1、寺内 大貴1、小笠原 光基1、Tampah Marshel1、森 駿介1、吉田 頌1、矢野 萌生2,1、町田 嗣樹2,1、芦田 果奈2、桑原 佑典1,2、大田 隼一郎1,2、藤永 公一郎2,1、中村 謙太郎1,2、加藤 泰浩1,2 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2. 千葉工業大学次世代海洋資源研究センター)
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キーワード:

北大西洋、遠洋性粘土、レアアース泥、全岩化学組成、海底鉱物資源

レアアースは,強力な磁石や蛍光体などの原料として,様々なハイテク産業に必要不可欠な元素群である.このレアアースに富んだ深海堆積物である「レアアース泥」が南北太平洋の広域に分布しており,新たな海底鉱物資源として注目されている [1,2].また,中央および東インド洋においてもレアアース泥の存在が確認されている[3,4].これまで太平洋とインド洋においては,レアアース泥の空間分布や起源について詳細な研究がなされてきた [1–5].しかし一方で,大西洋においては数地点の堆積物表層付近でレアアース泥の存在が報告されているのみであり [6],海底掘削コアを用いて深度方向のレアアース濃度分布を系統的に明らかにした例はない.
本研究では,過去の深海掘削計画によって北大西洋で採取された深海堆積物のコア試料の中で,岩相記載に遠洋性粘土が含まれるサイトを主に分析対象とした.主要元素をXRF,微量元素をICP-MSで分析し,全岩化学組成データセットを構築した.その結果,北東大西洋に位置するSite 950では,海底面下330 mにおいて総レアアース濃度868 ppmに達するレアアース泥が確認された.また全岩化学組成を基に,北大西洋堆積物の起源成分を考察した.北大西洋の遠洋性粘土は太平洋よりもAlに富む試料が多く、サハラ砂漠由来のダストの影響が示唆された.一部の試料では,生物源シリカや生物源炭酸カルシウム,火山起源成分の影響も確認された.CoやCeなどの元素組成の特徴から,北大西洋堆積物のレアアースに富む層では,生物源リン酸カルシウムに加えて海水起源成分の影響も比較的大きいことが示唆された.また,本研究では,海水からのレアアース沈積を簡単なフラックスモデルによって検討した.その結果,本研究で得られた堆積物のレアアース濃度を説明するために必要となる堆積速度の条件が,各航海レポートから見積もった実際の堆積速度と整合的であることが示された.

[1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience, 4, 535–539. [2] Tanaka et al. (2023) Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 24, 32022GC010681. [3] Yasukawa et al. (2014) Journal of Asian Earth Sciences, 93, 25–36. [4] Zhang et al. (2017) Journal of Rare Earths, 35, 1047–1058. [5] Liao et al. (2022) Chemical Geology, 595, 120792, [6] Menendez et al. (2017) Ore Geology Reviews, 87, 100–113.

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