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[T11-O-12]Re-Os放射年代,U-Pb放射年代およびPb同位体組成に基づく兵庫県明延多金属鉱床のCu-Zn脈とSn-W脈の形成プロセス★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*小笠原 光基1、大田 隼一郎1,2、町田 嗣樹2,1、石田 美月3、矢野 萌生2,1、見邨 和英2,1、中村 謙太郎1,2、安川 和孝1、藤永 公一郎2,1、加藤 泰浩1,2 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2. 千葉工業大学 次世代海洋資源研究センター、3. スイス連邦工科大学チューリッヒ校)
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キーワード:

熱水性鉱床、Re-Os年代測定、局所U-Pb年代測定、Pb同位体測定、花崗岩系列

兵庫県の明延鉱床は,明治から昭和にかけて稼働し,日本の産業発展を支えた国内有数の熱水性Cu-Sn多金属鉱床である.明延鉱床を構成する鉱脈は産出鉱物から2タイプに大別され,両脈は切り合い関係から前期のCu-Zn脈と後期のSn-W脈とされている[1].しかしながら,明延鉱床の鉱脈に対する直接的な年代決定は行われておらず,鉱化作用を解明するために必要な年代情報が不足している.更に,金属濃集メカニズムを解明する上で重要である金属元素の起源に関する情報も報告されておらず,Cu-Zn脈とSn-W脈がどのような火成活動によって形成されたのかは未だ不明である.
一般的なCuおよびSn鉱床に関する先行研究によると,酸化的な磁鉄鉱系マグマの活動に伴いCuに富む鉱床が,還元的なチタン鉄鉱系花崗岩の活動に伴いSnに富む鉱床がそれぞれ形成されると考えられている[2].そのため,熱水性Cu-Sn多金属鉱床の形成は性質が異なるこれらのマグマ活動が重複することが重要だと考えられているが[3],その実態は未解明である.つまり,明延鉱床の鉱化作用を解明することは,マグマ活動と濃集する金属種の因果関係を考察する上で重要な知見となるだけでなく,熱水性Cu-Sn多金属鉱床の成因を考える上でも非常に有用といえる.
本研究では明延鉱床の鉱化年代を解明するため, Cu-Zn脈の鉱石試料に対してレニウム(Re)-オスミウム(Os)年代測定を,Sn-W脈中の錫石に対してはウラン(U)-鉛(Pb)局所年代測定をそれぞれ実施した.さらに,鉱脈中の金属の起源を追跡するために,鉱床周辺に分布する花崗岩の全岩粉末試料と,Cu-Zn脈から分離した黄銅鉱試料,Sn-W脈から分離した黄銅鉱及び錫石試料に対してPb同位体測定を実施した.本発表では,以上の分析により得られたCu-Zn脈とSn-W脈の年代情報と,鉱石試料および関係火成岩の起源情報から,明延鉱床のCu-Zn脈とSn-W脈がどのように形成されたのかを議論する.

[1] K. Itoh, K. Takashina, and T. Sugiyama, ‘On the Exploration of Chiemon Vein Swarm, Akenobe Polymetallic Vein Deposits, Southwestern Japan.’, Mining Geology, vol. 35, no. 190, pp. 119–132, 1985, doi: 10.11456/shigenchishitsu1951.35.119.
[2] P. Černý, P. L. Blevin, M. Cuney, and D. London, ‘Granite-related ore deposits’, 2005.
[3] R. H. Sillitoe and B. Lehmann, ‘Copper-rich tin deposits’, Miner Deposita, vol. 57, no. 1, pp. 1–11, Jan. 2022, doi: 10.1007/s00126-021-01078-9.

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