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[T1-O-14]日高変成帯幌満カンラン岩体の構造発達史★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★

*松山 和樹1、道林 克禎1 (1. 名古屋大学)
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キーワード:

結晶方位定向配列、幌満カンラン岩体、カンラン石、日高変成帯

本研究では、幌満カンラン岩体の構造発達史の解明を目的として、カンラン岩の微細構造解析を行った。幌満カンラン岩体は多様な変形微細組織と結晶ファブリックで特徴づけられる、世界でも有数の大規模カンラン岩体である。同岩体から産するカンラン岩は、これまでに岩石学的検討が多数行われ(Takazawa et al., 1999; Ozawa, 2004など)、スピネル安定相での再加熱を伴う温度-圧力履歴が見積もられている(Ozawa, 2004)。本研究では、幌満カンラン岩体から50個以上の定方位カンラン岩試料を採取し、SEM-EBSD法を用いてカンラン石の結晶方位を測定した。測定した結晶方位データは統計学的に解析し、結晶方位定向配列として定量化した。また、カンラン石の[100]軸がマントル流動の方向(剪断方向)に選択的に集中しやすい性質と、剪断方向とひずみ楕円の長軸との斜交性を利用し、カンラン岩が経験した剪断センスを復元した。偏光顕微鏡観察の結果、採取したカンラン岩試料はマイロナイト組織やポーフィロクラスト状組織、等粒状組織など多様な微細組織を示した。これらの微細組織は鉱物組み合わせと相関があり、ハルツバージャイトやスピネルに富むレルゾライトはマイロナイト組織~ポーフィロクラスト状組織を、斜長石に富むレルゾライトは等粒状組織を示す傾向があった。カンラン石の結晶方位定向配列はE、A、D、AG の4つのタイプが確認され、南から北(岩体下部から上部)にかけてこの順での分布を示した(Matsuyama and Michibayashi, 2023)。またEタイプはマイロナイト組織やポーフィロクラスト状組織、AGタイプは等粒状組織を示す試料から確認される傾向があった。復元した剪断センスは結晶方位定向配列の違いと相関があり、Eタイプは南北、Aタイプは西、AGタイプは南向きのセンスを示した。Eタイプの結晶方位定向配列は、実験研究では含水条件下で再現された(Katayama et al., 2004など)。また、近傍で実施された電気比抵抗探査は、スラブ由来の流体が日高主衝上断層に沿って存在していることを明らかにした(Ichihara et al., 2016)これらのことは、幌満カンラン岩体におけるEタイプの結晶方位定向配列が、リソスフェア内での水の流入と衝上断層の運動によって発達したことを示す。また本研究では、復元した剪断センスと日高変成帯の構造発達史(豊島ほか, 1997)から、幌満カンラン岩体の構造発達史を考察した。

引用文献:
Ichihara et al. (2016) Geochemistry, Geophysics, Geosystems.
Katayama et al. (2004) Geology.
Matsuyama and Michibayashi (2023) Journal of Geodynamics.
Ozawa (2004) Journal of Petrology.
Takazawa et al. (1999) Journal of Petrology.
豊島剛志 ほか (1997) 地質学論集.

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