講演情報
[G2-O-2]御前崎沖掘削コア中のタービダイトが示す地震と完新世におけるその堆積間隔
*池原 研1、金松 敏也2、HSIUNG Kan-Hsi2、石澤 尭史3、里口 保文4、長橋 良隆5 (1. 産業技術総合研究所、2. 海洋研究開発機構、3. 東北大学、4. 滋賀県立琵琶湖博物館、5. 福島大学)
キーワード:
地震、タービダイト、閉鎖型小海盆、南海トラフ、完新世
深海底のタービダイトは様々なイベントをトリガーとして形成されるが、斜面域の閉鎖型小海盆では巨大地震がそのトリガーである場合がある。ある小海盆において、どのような地震が小海盆の陸側斜面の堆積物を再移動させてタービダイトを堆積しうるかは、表層堆積物中のタービダイトがどの歴史地震に対応するかを精査し、それぞれの歴史地震の断層パラメータなどを用いて斜面域の揺れを計算することで検討することができる(例えば、Ikehara et al., 2023)が、このような検討はまだ十分に行われているとは言い難い。このため、斜面堆積物における再懸濁・再移動のプロセス、例えば、地震動の大きさと斜面や斜面堆積物の特性、再懸濁・再移動する堆積物の量、さらに結果として形成されるタービダイトの特徴との関係の理解は十分でない。また、このような検討の不足は、タービダイトの解析からその堆積の時間間隔がわかったとしても、あるタイプ(例えば、海溝型巨大地震)の地震の発生間隔にそのまま持っていけないという問題を残す。ここでは、御前崎沖の小海盆を例に、表層堆積物の解析からこの海盆において地層記録(タービダイト)として残される地震がどのようなものであるかを検討し、さらに掘削コアの解析から完新世における堆積間隔について示す。御前崎沖の掘削地点近傍で採取された不擾乱表層堆積物コアは、1944年昭和東南海地震ではこの地点に明瞭なタービダイトが形成されていないが、100年以上前には比較的厚いタービダイト泥を持つタービダイトが形成されていることを示した。1944年昭和東南海地震の破壊領域は確定されていないが、御前崎沖まで破壊が及んでいないモデルもある。このことから、現在と同じ環境ではこの地点のタービダイトは御前崎沖以東まで断層破壊が及んだ地震によって形成されたと考えられる。
一方、掘削コアの完新世のタービダイトは、基底が明瞭で厚さ数cmのタービダイト砂の上に10〜20cm程度のタービダイト泥が重なることで特徴づけられる。タービダイト泥の上部には生物擾乱が認められるが、タービダイト砂まで達するものはない。一部のタービダイト砂は複数の上方細粒化するラミナセットから構成されるマルチパルスの様相を呈する。完新世におけるタービダイトの堆積間隔は、タービダイトの数に対して年代制約の数が少ないので、詳細に検討することは困難であるが、100-150年とその約2倍の250-300年にピークを持ち、平均堆積間隔は250年弱程度である。また、タービダイト泥と直下の半遠洋性泥のバルク有機物の年代差は600年程度と小さく、安定炭素同位体の値に差はなく、タービダイト泥が海底の表層堆積物起源であることを示唆する。以上の結果は、完新世において御前崎沖以東まで破壊が及んだ南海トラフ沿いの巨大地震の間隔が200年よりも少し長い程度であることを示し、南海トラフ沿いの巨大地震の間隔が100〜150年であるならば、破壊領域はすべての地震で御前崎沖以東に及んだわけではないことを示唆する。
文献:Ikehara, K. et al., 2023. PEPS, 10, 8. doi:10.1186/s40645-023-00540-8.
一方、掘削コアの完新世のタービダイトは、基底が明瞭で厚さ数cmのタービダイト砂の上に10〜20cm程度のタービダイト泥が重なることで特徴づけられる。タービダイト泥の上部には生物擾乱が認められるが、タービダイト砂まで達するものはない。一部のタービダイト砂は複数の上方細粒化するラミナセットから構成されるマルチパルスの様相を呈する。完新世におけるタービダイトの堆積間隔は、タービダイトの数に対して年代制約の数が少ないので、詳細に検討することは困難であるが、100-150年とその約2倍の250-300年にピークを持ち、平均堆積間隔は250年弱程度である。また、タービダイト泥と直下の半遠洋性泥のバルク有機物の年代差は600年程度と小さく、安定炭素同位体の値に差はなく、タービダイト泥が海底の表層堆積物起源であることを示唆する。以上の結果は、完新世において御前崎沖以東まで破壊が及んだ南海トラフ沿いの巨大地震の間隔が200年よりも少し長い程度であることを示し、南海トラフ沿いの巨大地震の間隔が100〜150年であるならば、破壊領域はすべての地震で御前崎沖以東に及んだわけではないことを示唆する。
文献:Ikehara, K. et al., 2023. PEPS, 10, 8. doi:10.1186/s40645-023-00540-8.
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