講演情報
[G2-O-7]四国沖南海トラフ海底下に発達する充填鉱物帯の分布★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*野村 夏希1、弓井 浩暉1,2、藤内 智士1 (1. 高知大学、2. 広建コンサルタンツ株式会社)
キーワード:
南海トラフ、重晶石、方解石、菱マンガン鉱、X線CTスキャン
【はじめに】
プレート収束帯の変形に影響する要因の一つに沈み込む海洋地殻の岩相があり,岩相が側方に変化することは場所による変形の違いを生む要因となる(例えば,Underwood and Pickering, 2018).高知県室戸岬沖のInternational Ocean Discovery Program (IODP)にて掘削された付加体先端部に当たるC0023サイトでは,海底下775-1121 mにてバライト(BaSO4)やロードクロサイト(MnCO3)を含む高温流体起源の充填鉱物帯が報告された(Tsang et al., 2020).このような充填鉱物帯もプレート収束帯の変形に関与する可能性があるが,分布について詳しい研究はない.本研究では四国沖の南海トラフを対象に,複数の国際海洋科学掘削で採取されたコア試料を用いて充填鉱物帯の分布を調査した.
【対象と手法】
研究対象は室戸沖のIODP C0023サイト,ODP808, 1173,1174サイト,足摺沖のODP 1177サイトの各コア試料である.これらのサイトは南海トラフの海側および南海付加体の先端部に位置し,基盤岩である玄武岩の上に中期中新世以降の半遠洋性堆積物や海溝充填堆積物が重なる(例えば,Moore et al., 2001).これらのコア試料について,X線コンピュータートモグラフィー(XCT)データを用いて充填鉱物帯の空間分布を調べ,X線回析(XRD)や蛍光X線分析(XRF)による鉱物同定と元素分析を行った.
【結果と考察】
例として,室戸沖1173サイトの結果を示す.深度ごとの平均CT値は深部に向かって徐々に上昇する.その中で半遠洋性堆積物中の3区間において,厚さ数cmほどの高い平均CT値を示す部分が,深さ数mから数十mに1つの間隔で分布することが確認された.高い平均CT値は,3000を超える高CT値領域の濃集に起因しており,特に下位の2区間では,CT値が10000以上を示すバライトやロードクロサイトが充填していた.上記と同じ特徴を示す充填鉱物帯の分布は,室戸沖の他のサイトでも確認された.また,足摺沖の1177サイトにおけるバライトとロードクロサイトの充填は,半遠洋性堆積物のうち,泥を主体とする区間で見られた一方で,より下位にあたるタービダイトを挟む区間では見られなかった.これらのことから充填鉱物帯は,半遠洋性堆積物の最上部が堆積した3.9-3.3 Ma以降に形成したこと,そして,形成には岩相の影響があったことが示唆される.
【参考文献】
Moore, G. F. et al., 2001, New insights into deformation and fluid flow processes in the Nankai Trough accretionary prism: Results of Ocean Drilling Program Leg 190. Geochem. Geophys. Geosyst., 2, 2001GC000166.
Tsang, M. Y. et al., 2020, Hot fluids, burial metamorphism and thermal histories in the underthrust sediments at IODP 370 site C0023, Nankai Accretionary Complex. Mar. Pet. Geol., 112, 104080.
Underwood, M. B. and Pickering, K. T., 2018, Facies architecture, detrital provenance, and tectonic modulation of sedimentation in the Shikoku Basin: Inputs to the Nankai Trough subduction zone. The Geological Society of America Special Paper, 534, 1–34.
プレート収束帯の変形に影響する要因の一つに沈み込む海洋地殻の岩相があり,岩相が側方に変化することは場所による変形の違いを生む要因となる(例えば,Underwood and Pickering, 2018).高知県室戸岬沖のInternational Ocean Discovery Program (IODP)にて掘削された付加体先端部に当たるC0023サイトでは,海底下775-1121 mにてバライト(BaSO4)やロードクロサイト(MnCO3)を含む高温流体起源の充填鉱物帯が報告された(Tsang et al., 2020).このような充填鉱物帯もプレート収束帯の変形に関与する可能性があるが,分布について詳しい研究はない.本研究では四国沖の南海トラフを対象に,複数の国際海洋科学掘削で採取されたコア試料を用いて充填鉱物帯の分布を調査した.
【対象と手法】
研究対象は室戸沖のIODP C0023サイト,ODP808, 1173,1174サイト,足摺沖のODP 1177サイトの各コア試料である.これらのサイトは南海トラフの海側および南海付加体の先端部に位置し,基盤岩である玄武岩の上に中期中新世以降の半遠洋性堆積物や海溝充填堆積物が重なる(例えば,Moore et al., 2001).これらのコア試料について,X線コンピュータートモグラフィー(XCT)データを用いて充填鉱物帯の空間分布を調べ,X線回析(XRD)や蛍光X線分析(XRF)による鉱物同定と元素分析を行った.
【結果と考察】
例として,室戸沖1173サイトの結果を示す.深度ごとの平均CT値は深部に向かって徐々に上昇する.その中で半遠洋性堆積物中の3区間において,厚さ数cmほどの高い平均CT値を示す部分が,深さ数mから数十mに1つの間隔で分布することが確認された.高い平均CT値は,3000を超える高CT値領域の濃集に起因しており,特に下位の2区間では,CT値が10000以上を示すバライトやロードクロサイトが充填していた.上記と同じ特徴を示す充填鉱物帯の分布は,室戸沖の他のサイトでも確認された.また,足摺沖の1177サイトにおけるバライトとロードクロサイトの充填は,半遠洋性堆積物のうち,泥を主体とする区間で見られた一方で,より下位にあたるタービダイトを挟む区間では見られなかった.これらのことから充填鉱物帯は,半遠洋性堆積物の最上部が堆積した3.9-3.3 Ma以降に形成したこと,そして,形成には岩相の影響があったことが示唆される.
【参考文献】
Moore, G. F. et al., 2001, New insights into deformation and fluid flow processes in the Nankai Trough accretionary prism: Results of Ocean Drilling Program Leg 190. Geochem. Geophys. Geosyst., 2, 2001GC000166.
Tsang, M. Y. et al., 2020, Hot fluids, burial metamorphism and thermal histories in the underthrust sediments at IODP 370 site C0023, Nankai Accretionary Complex. Mar. Pet. Geol., 112, 104080.
Underwood, M. B. and Pickering, K. T., 2018, Facies architecture, detrital provenance, and tectonic modulation of sedimentation in the Shikoku Basin: Inputs to the Nankai Trough subduction zone. The Geological Society of America Special Paper, 534, 1–34.
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