講演情報

[G5-O-1]志摩半島沖における堆積体の分布と深部構造の発達

間々田 剛志1、*米倉 優太2、池 俊宏3、古川 稔子2 (1. 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 エネルギー事業本部 企画調整部技術企画課、2. 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 エネルギー事業本部 探査部国内探査課、3. 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 エネルギー事業本部 CCS事業部先進的CCS事業課)
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キーワード:

南海トラフ、アンティフォーマルスタック、デュープレックス、横ずれ断層、逆断層、タービダイト

三重県志摩半島沖の熊野海盆及び遠州トラフは、付加体の発達により堆積物がせき止められ形成されており、その発達メカニズムを構造地質学的に理解することが重要である。構造地質学的には、反射法地震探査で得られたデータを用いて断層を観察し、切られた反射面(同時代面)を同定することで変形機構を制約でき、また反射面における振幅の強弱を面的に追うことで堆積体の発達を捉えることが一つの手法として使われる。本報告では、深部構造の発達と横ずれ断層に着目し、断層解釈および反射面の振幅変化を示すとともに、堆積体の分布について議論する。 熊野海盆及び遠州トラフでは平成16年度に基礎試錐「東海沖~熊野灘」が掘削され、砂層充填型メタンハイドレートの胚胎を確認している(JOGMEC,2005)。両前弧海盆では、地下深部からの流体上昇を示唆する泥火山(Morita et al.,2004)や、BSR(Bottom Simulating Reflector)の浅化(芦ほか,2004)が認められており、付加体深部まで到達する分岐断層(Morita et al., 2004)、或いは横ずれ断層である遠州断層系(芦,2011)が流体の移動経路として機能すると考えられている。 志摩半島の南方沖合に位置する志摩海脚から遠州トラフにかけて実施された基礎物理探査「遠州志摩3D」で取得された三次元反射法地震探査データ、及び基礎試錐「東海沖~熊野灘」等のデータを用いて、深部構造や断層形態に加え、南北性の構造を示す海底谷及び海底チャネル、ローブ状に広がる堆積体からタービダイト砂岩の堆積場を解釈した。志摩海脚の深部ではドーム状の反射面(アンティフォーマルスタック)、第2渥美海丘の北方の隆起域では地下深部にデュープレックスの形態をなす反射面が認められた。砕屑物供給の経路を検討する際、志摩海脚に加えて第2渥美海丘に係る外縁隆起帯の成長と合わせて深部構造の発達に注目すると、陸棚斜面と前弧海盆の境界は、前期鮮新世から中期鮮新世にかけて陸側へ遷移している。このことから調査海域中央から東側の第2渥美海丘周辺では外縁隆起帯の成長に加えて深部構造におけるデュープレックスの成長と連動していることが示唆された。調査海域西側においても同様に堆積中心が陸側に遷移する傾向が認められ、さらに前期中新世末頃には志摩海脚の隆起に伴って、砕屑物供給経路が海脚を迂回している。その隆起域が形成された要因として深部のアンティフォーマルスタックの発達が示唆されるが、更なる検討が求められる。なお、本評価は経済産業省資源エネルギー庁より受託している「国内石油・天然ガス基礎調査事業」の一環で実施したものであり、本成果の公表許可をいただいた経済産業省資源エネルギー庁に謝意を表します。

【引用文献】
JOGMEC, 2005, 平成15年度 国内石油・天然ガス基礎調査 基礎試錐「東海沖~熊野灘」調査報告書.
Morita et al., 2004, Evolution of Kumano Basin and Sources of Clastic Ejecta and Pore Fluid in Kumano Mud volcanoes, Eastern Nankai Trough. Proceedings of the International Symposium on Methane Hydrates and Fluid Flow in Upper Accretionary Prisms (Prism Fluid 2004), 92–99.
芦ほか, 2004, 遠州灘沖第 2 渥美海丘の地質構造と冷湧水. JAMSTEC 深海研究, 24, 1-11.
芦, 2011, 遠州沖活断層群の変形構造と活動様式の解明. 科学研究費補助金研究成果報告書.

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