講演情報
[G5-O-2]根尾谷断層最新すべり面近傍に認められる間隙水圧の急変
*大谷 具幸1、吉田 拓海1、岡田 直也1 (1. 岐阜大学)
キーワード:
間隙水圧、最新すべり面、根尾谷断層
根尾谷断層は1891年に内陸型地震としては最大級である推定M8.0の濃尾地震(1891年)を引き起こした活断層である。近年、原子力規制庁が根尾谷断層を対象として根尾水鳥と根尾長嶺においてボーリング掘削を行った。このうち根尾水鳥では深度382 mで最新すべり面を貫いており、地下浅部における最新すべり面の特徴やそこで生じる現象の理解が期待される。そこで、この最新すべり面とその近傍を対象として走査型電子顕微鏡(SEM)観察やSEMによるエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析等を行い、その産状を把握した上で、これまでに生じた現状を解明することが本研究の目的である。
根尾水鳥は濃尾地震の際に6 mの鉛直変位を生じた地点であり、主として左横ずれ変位を生じている根尾谷断層の断層ジョグに位置している。ボーリング孔は断層ジョグの内側から外側に向かって掘削された。ボーリングコアはジュラ紀付加体である美濃帯の泥岩基質メランジュからなり、チャートと玄武岩のブロックを含む。最新すべり面は直線状で連続性のよいガウジ帯であり、かつ低いCT値を示す部分として認定した。これは断層ガウジ帯の最下端に位置しており、主として玄武岩を原岩とする。
SEMによる反射電子(BSE)像観察とSEM-EDXによる元素マッピングにより最新すべり面及びその近傍の岩石薄片を詳細に観察・分析し、鉱物の分布と形状を確認した。その結果、最新すべり面とその近傍ではCaの濃集が生じていることが特徴的であることが明らかとなった。
最新すべり面の内部ではCaの濃集部は局所的に分布し、円磨されている。最新すべり面に隣接する断層ガウジでは、Caを含む2種類の鉱物脈が最新すべり面と平行に認められ、一方は幅が一定の直線状であり、もう一方は幅が一定でない帯状である。鉱物脈は主として粒径数μmの多数の方解石により構成され、フラグメント化した石英等やガウジの基質を含んでいる。また、鉱物脈の一部では弱い自形性を有する方解石が認められる。最新すべり面から法線方向に40 cm離れた断層ガウジでは、断層ガウジの面構造に直交する直線状の鉱物脈が認められる。この鉱物脈はBSE像が一様ではなく複数の炭酸塩鉱物脈によって構成されており、それぞれが平行に分布している。
これらの産状は最新すべり面では新たな鉱物脈の形成が生じていないこと、隣接する断層ガウジでは溶解度の急激な変化に伴う自形鉱物の形成が生じていること、40 cm離れた断層ガウジではガウジの固結がある程度進んだ時期に鉱物脈が形成したことを示唆している。隣接する断層ガウジにおける溶解度の急変として地震性すべりに伴うthermal pressurizationによる間隙水圧の上昇とその後の低下により鉱物脈とその内部における自形鉱物が形成されたと考えられる。この鉱物脈は最新すべり面の西側に分布しており、根尾谷断層でこれまでに生じた変位が濃尾地震のときと常に同様であると仮定をすると相対的に沈降することとなり、断層変位に伴う深部からの上昇は生じないこととなる。また、現状の谷地形の形成を考えると、最大の浸食量として約1 kmが見積もられるため、ここで考えられる現象は1.4 kmより浅い深度で生じたと推定される。
根尾水鳥は濃尾地震の際に6 mの鉛直変位を生じた地点であり、主として左横ずれ変位を生じている根尾谷断層の断層ジョグに位置している。ボーリング孔は断層ジョグの内側から外側に向かって掘削された。ボーリングコアはジュラ紀付加体である美濃帯の泥岩基質メランジュからなり、チャートと玄武岩のブロックを含む。最新すべり面は直線状で連続性のよいガウジ帯であり、かつ低いCT値を示す部分として認定した。これは断層ガウジ帯の最下端に位置しており、主として玄武岩を原岩とする。
SEMによる反射電子(BSE)像観察とSEM-EDXによる元素マッピングにより最新すべり面及びその近傍の岩石薄片を詳細に観察・分析し、鉱物の分布と形状を確認した。その結果、最新すべり面とその近傍ではCaの濃集が生じていることが特徴的であることが明らかとなった。
最新すべり面の内部ではCaの濃集部は局所的に分布し、円磨されている。最新すべり面に隣接する断層ガウジでは、Caを含む2種類の鉱物脈が最新すべり面と平行に認められ、一方は幅が一定の直線状であり、もう一方は幅が一定でない帯状である。鉱物脈は主として粒径数μmの多数の方解石により構成され、フラグメント化した石英等やガウジの基質を含んでいる。また、鉱物脈の一部では弱い自形性を有する方解石が認められる。最新すべり面から法線方向に40 cm離れた断層ガウジでは、断層ガウジの面構造に直交する直線状の鉱物脈が認められる。この鉱物脈はBSE像が一様ではなく複数の炭酸塩鉱物脈によって構成されており、それぞれが平行に分布している。
これらの産状は最新すべり面では新たな鉱物脈の形成が生じていないこと、隣接する断層ガウジでは溶解度の急激な変化に伴う自形鉱物の形成が生じていること、40 cm離れた断層ガウジではガウジの固結がある程度進んだ時期に鉱物脈が形成したことを示唆している。隣接する断層ガウジにおける溶解度の急変として地震性すべりに伴うthermal pressurizationによる間隙水圧の上昇とその後の低下により鉱物脈とその内部における自形鉱物が形成されたと考えられる。この鉱物脈は最新すべり面の西側に分布しており、根尾谷断層でこれまでに生じた変位が濃尾地震のときと常に同様であると仮定をすると相対的に沈降することとなり、断層変位に伴う深部からの上昇は生じないこととなる。また、現状の谷地形の形成を考えると、最大の浸食量として約1 kmが見積もられるため、ここで考えられる現象は1.4 kmより浅い深度で生じたと推定される。
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