講演情報

[T15-O-19]奈良県北西部での大阪層群最下部層準の巨円礫層の供給地

*佐藤 隆春1、平谷 計二、廣川 信一、井上 光司、杢保 美智子、森 裕子、中谷 奉行、岡本 光雄、斎藤 伊平、白髭 照代、竹中 光子、佃 慶子 (1. 大阪市立自然史博物館)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

奈良北西部、大阪層群、巨礫層、ホルンフェルス、湖東流紋岩

奈良県香芝市関屋地域に巨礫サイズの円礫を含む礫層が分布する(以降,田尻礫層).田尻礫はおもに溶結凝灰岩と,チャート,砂岩,泥岩などの礫で構成される.本地域の基盤岩は領家帯であるが,花こう岩質岩の礫は含まれない.田尻礫層の層位関係は,中新世の二上層群を削剥して覆い,大阪層群送迎礫層[1]に覆われる.送迎礫層は大阪層群最下部の上部に対比されており,田尻礫層は同層準より下位にある.田尻礫層は下位の二上層群を幅20m以上,約800m連続する流路を充填している.田尻礫層は砂層などを挟まない,礫支持堆積物であり,層相からも流路堆積物や中洲堆積物と推定される.田尻礫層は大礫(<-6 phi,>64 mm)を主体とし,巨礫(<-8 phi,>256 mm)も含まれる(Fig. a).礫の岩石種は,石英結晶片の多い流紋岩質溶結凝灰岩など(湖東流紋岩、Fig. bのR,32.2%)が最も多く,次いでチャート,(C, 32.0%),砂岩,(S, 18.5%),泥岩,(M, 13.2%)である.泥岩の中には菫青石(骸晶)と思われる変成鉱物を含むホルンフェルスが認められる.ホルンフェルスは田上山花こう岩の南西部に分布し[2],流紋岩質溶結凝灰岩(湖東流紋岩)は琵琶湖東南部に分布している[3].両者とも関屋地域から北北東に50km以上の距離があるが,田尻礫層の岩石種の組み合わせはこの間に礫を供給した流路が存在していた可能性を示す.礫のサイズが大きく,礫の岩石種が限定されているので,二次的な堆積物の可能性は低いと思われる.田上山南西部の宇治田原付近に類似の礫種構成の大福礫層[4]が報告されており,対比されるのか検討課題である.
引用文献:[1] 横山卓雄・中川要之助(1974)関屋地域の大阪層群の層序と古水流方向からみた”奈良湖”の水の流出口について.地質雑,80(6),277-286.[2] 脇田浩二・竹内圭史・水野清秀・小松原 琢・中野聰志・竹村恵二・田口雄作(2013)地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)京都島南部.産総研地質調査総合センター,124p.[3] 西川一雄・西堀 剛・小早川隆・但馬達雄・上嶋正人・三村弘二・片山正人(1983)湖東流紋岩およびその活動について.岩鉱,77,51-64,[4] 飯田義正(1980)信楽高原西部の古地理学的研究:大福礫層により復元される鮮新世の河谷について.地質雑,86,741-753.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン