講演情報
[T4-O-3]山陰海岸ユネスコ世界ジオパークにおける看板の見直し~看板ワーキングの設置とその目的~
*松原 典孝1,4、金山 恭子2,3、安藤 和也2,3、藤原 勇樹4 (1. 兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科、2. 山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館、3. 鳥取県、4. 山陰海岸ジオパーク推進協議会)
キーワード:
ユネスコ、ジオパーク、看板、山陰海岸
2009年に日本ジオパーク、2010年に世界ジオパークになった山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク(以下山陰海岸UGGp)には58のジオサイトがあり、それらの多くに解説看板が立てられている。一般の人々に地球の大切さや諸現象、地域の地球科学的特性とその地域の人や自然の特徴の関係性などを理解してもらいうことが大きな目標になっているジオパークでは、各ジオサイトに設置した看板の内容が十分その機能を果たしているかは重要な検討事項である。また、看板の位置や形状、メンテナンス状態の把握もまた重要である。3府県6市町からなる山陰海岸UGGpでは、基本的に各サイトの看板設置は設置者が負担することになっており、そのデザイン作成も大まかな共通理解はあったが、設置者によることが多分にあり、明確なコンセプトを山陰海岸UGGpで作っているとは言えない状態であった。また、ジオパークになる以前の看板も多くあり、それらとの整合も不十分であった。さらに、ジオパーク認定前後に建てられた初期の看板では、地層名など専門用語が説明なく使われたり、地球科学的諸現象を文字と実物の写真だけで説明し、イラスト等での補助もなく、一般に人に理解しやすい看板になているかと言われれば決してそうではなかった。2010年の初めての世界ジオパーク認定現地審査では、いくつかのサイト看板について、マップがサイト周辺地域のみで広域マップがないこと、そのために、一筆書きのエリアを有するジオパークとしての統一感に欠けることを指摘された。一方で、これらのサイト看板とは異なり、山陰海岸ジオパーク推進協議会を主体に地域住民と作成している散策モデルコースやマリンコース、ドライブコースなどのモデルコース看板は、多くの意見を取り入れ統一的に作成しているため共通的なデザインやイラストを用いた分かりやすい解説などが実現できている。このことは、統一的に看板デザインを行ったほうがより分かりやすいものができることを示している。山陰海岸UGGpでは、保護保全部会を中心に4年かけてすべてのサイトをモニタリングするジオサイトモニタリングを繰り返し行っている。その中でも、各サイトの看板デザインがばらばらで統一したデザインはできないかという声が上がり、2023年、一般の人に分かりやすい内容を実現し、さらに統一的なデザインで山陰海岸UGGpのサイトとしての統一感を作るために、山陰海岸ジオパーク推進協議会に看板ワーキングを設置した。看板ワーキングのメンバーはジオパーク専門員や博物館学芸員、環境省職員(国立公園管理官)、兵庫県立大学教員、保護保全部会長、ガイド部会長、ジオパーク事務局員からなる。これまでに共通で示すべき内容や看板のユニバーサルデザインを意識した形状や色遣い、文字の大きさやフォントなどについて議論した。その際、山陰海岸UGGpの中核をなす山陰海岸国立公園の知識と経験を応用し、国立公園の看板デザインなどを参考にした。さらに、山陰海岸UGGpが姉妹提携をしているレスボス島UGGpを訪問し、看板デザインやその内容、設置場所などを調査した。看板ワーキングの議論では、ユネスコロゴを大きく表示させることは、観光客にここがユネスコに認定されたサイトであるとわかるだけでなく、住民がユネスコに認定されたエリアに住んでいる自覚を生む良いきっかけになるとの意見なども出された。2022年のユネスコによる再認定審査で、地質物品の取引をやめさせるよう指摘されたが、これまでサイト看板ではユネスコの理念が十分盛り込ませられておらず、ユネスコ理念が発信できていなかったことを反省し、ユネスコの理念や地質物品の持続的でない取引に反対していることなども積極的に表示するようにした。2024年6月現在、このコンセプトをもとに8か所の看板を更新・新設した。今後、これらの看板の効果を調査し、より良い看板デザインを実現していきたい。
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