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[T4-O-4]ジオパークでジオシステムを学ぶ:世界農業遺産と関連付けたジオツアーの提案

*川村 教一1 (1. 兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科)
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キーワード:

但馬牛、山陰海岸ユネスコ世界ジオパーク、火山岩、放牧地、棚田

兵庫県但馬地方の新温泉町および香美町南部においては,山稜部に玄武岩や安山岩の溶岩(寺田火山岩層や第四紀更新世の火山岩;Furuyama, 1989)が,山腹部・山麓部には凝灰質の地層(春来泥岩層)が分布して,地すべり地を構成している(藤田ほか,1996).このような地すべり地では,山稜部の火山岩層に浸透した水を利用することで棚田を展開することが可能である(早川,1989,2002).ススキなどが繁茂していた山稜部には牛の放牧地が設けられていた(小出,1906).早川(1982)は,山稜部のススキ優占の広い草原である放牧地は玄武岩に位置していると述べた.しかし,その後の研究(Furuyama, 1989ほか)により,地質は玄武岩と安山岩であることが分かってきた.
 本地域では昭和30年代まで,役牛として使用しない初夏・秋には牛を山稜部で放牧していたので,山腹の斜面に形成された棚田周辺の村落から放牧地まで牝牛を毎日登らせる必要があった(河野,1934).このため標高差のある村落―放牧地間の往復により牛を運動させることができるとともに,火山岩上に発達した草地で飼料を摂らせることが可能であった.新第三系の泥質岩を火山岩が帽岩として覆う地質,山腹部の地すべり地と山稜部の平坦面という地形,帽岩上に発達した草原と地すべり地に形成された農民の集落と棚田は,この地方特有の景観や産業に関するジオシステム(Demek, 1978)の構成要素として理解することができる.
 本地域は,世界農業遺産「人と牛が共生する美方地域の伝統的但馬牛飼育システム」に認定されている.これまで,山陰海岸ジオパークでは,但馬牛の飼養と谷地形,地すべり地と棚田を個別に取り上げてきた.本地域の棚田と放牧地,地すべり地と帽岩,新第三紀の泥岩と鮮新世~更新世火山岩とこれらを流れる水を実地に観察することを通じて,和牛の飼養が発本地域で発達した仕組みを理解するジオツアーの実施が可能であると演者は考える.

文献
Demek, J. (1978) The landscape as a geosystem. Geoforum. Vol. 9, Issue 1, 29-34.
藤田 崇・佐野正人・西村 洋(1996)第3章 斜面災害.兵庫の地質―兵庫県地質図解説書・土木地質編―,兵庫県土木地質図編纂委員会(編),兵庫県まちづくり技術センター,85-145.
Furuyama, K. (1989) Geology of the Teragi group Southwest Japan: with special reference to the Terada volcanics. Journal of geosciences Osaka City University, 32, 123-173.
早川康夫(1982)西日本における準安定草原の成立と肉用牛多頭飼育集落との関係(5).九州農業試験場報告,22巻3号,359-403.
早川康夫(1989)日本の草地草原.芝草研究,第18巻第1号,15-22.
早川康夫(2002)多雨極相林帯における安定草原成立の立地機構 1.棚田と連携する草原・公共草地.Grassland Science,47(6),624-629.
河野正直(1934)但馬における牧牛の地理的研究(概報).地学雑誌,46,154-169.
小出満二(1906)但馬牛産論.「但馬牛産論」刊行委員会(編)・発行,2004年.

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