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[T3-P-4]萬世大路栗子トンネル西坑口周辺の流紋岩の岩石記載

*大友 幸子1、田宮 良一 (1. 山形大学)
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キーワード:

萬世大路、栗子トンネル、流紋岩

1.はじめに
 萬世大路(ばんせいたいろ)は、山形県米沢市と福島県福島市の間の国道13号線旧道である。初代栗子トンネル(米沢坑口付近で標高874m、延長876m)が竣工し、萬世大路は1981年(明治14年)に開通した。  
 栗子トンネルより西側の萬世大路沿いには中期中新世大沢層(砂岩泥岩互層,軽石質凝灰角礫岩、火山礫凝灰岩,凝灰質砂岩)が分布し,流紋岩溶岩(水冷破砕溶岩)を伴う(山形応用地質研究会,2016,田宮,2023等).初代栗子トンネル西坑口には流紋岩のハイアロクラスタイトが(図1),そのとなりの二代目栗子トンネル坑口には凝灰岩が露出している.また初代栗子トンネルのすぐ20mほど下の大曲には,トンネルの廃石・ズリ置き場が崖錐状に残っており(田宮,2023),いろいろな岩相の流紋岩が採取できる.2022年7月16日山形応用地質研究会現地見学会の下見の際に初代栗子トンネルと大曲で採取した流紋岩の観察結果について述べる.
2,初代栗子トンネル周辺の流紋岩ハイアロクラスタイト
 初代栗子トンネルの壁や周辺の流紋岩は,表面が白く風化しているが,内部は緑がかった火砕岩のような見かけを呈している.灰色〜淡緑色のガラス質脈や白濁した蛋白石(脈状,塊状)が見られる.切断面で観察すると数cmの流紋岩(R)の岩片とさらに細かい流紋岩片を含む基質(茶色)からなるハイアロクラスタイトで(図2),基質が茶色に見えるのはネットワーク状に水酸化鉄?が染みこんでいるように見える.切断試料の左上には流紋岩の岩片や基質を切るように灰緑色の脈が入っている.偏光顕微鏡で観察すると,灰緑色脈は流紋岩の斑晶に由来する石英破片,ガラスの破片とガラスの基質(暗色部)からなることがわかった.比較的大きなガラス片を含む層と極細粒のガラス質の基質層が肉眼で見える層状構造を作っている.ハイアロクラスタイトの割れ目に,より細かい石英やガラスの破砕物質が集まってできたように見える
2.大曲の流紋岩
 大曲の位置は,初代栗子トンネルのすぐ20mほど下である.道端には,縞状流紋岩,ガラス質流紋岩,塊状流紋岩(縞部や斑晶が多かったり少なかったり)と,いろいろな岩相の流紋岩転石が見られる(図3). ガラス質流紋岩は初代栗子トンネル前で採取した上記の流紋岩ハイアロクラスタイト中の流紋岩岩片と同様の組織をもち,斑晶は石英,斜長石,黒雲母,直方輝石からなる.石英,斜長石,黒雲母の斑晶の融食部は茶色のガラスで充填されている.石基のガラスにはところどころに球状の割れ目が見られる.また急冷を示す針状のアパタイトも見られる. 縞状流紋岩を現地で採取した時には流理構造を持つ流紋岩であると考えていた.偏光顕微鏡で観察した写真が図4である.どの色の縞もハイアロクラスタイトで,基質に水酸化鉄?が沈殿(結晶?)している部分が濃い色になっている.縞状に平行に連続しており,堆積構造を反映しているかどうかは不明である.
文献
田宮良一(2023)歴史の道,萬世大路を巡る地質.山形応用地質,No.43,41-46.
山形応用地質研究会(2016)10万分の一山形県地質図(10万分の1)説明書.山形大学出版会.61p

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